起きたあと、どこから考えるか
事故が起きたあと、原因を1つに決めなければならない気がします。報告書に、そういう欄があるからです。
⚠ でも、たいていは いくつも重なっています。用具の設定、その方の変化、環境、手順、体制。1つに決めると、残りが放置されます。「対策したのに、また起きた」の多くは、これです。
◎ この区分は、答えを出しません。かわりに5つの方向に分けて、確かめる質問を並べます。そして最後は、いつも同じ出口です——確かめたことを、記録に残す。
この区分だけ、性格が違います。ほかの記事は「何を見るか」を書いたもの。ここは「事故が起きたあと、原因の候補をどう分解するか」を書いたものです。
◎ どの記事にも、いちばん下に【やさしい日本語】があります。書き出しの緑のボタンから、すぐ飛べます。
5つの方向に分けて考えます
| 方向 | 何を確かめるか |
|---|---|
| ① 用具・設定 | 車いす/ベッド/クッション/装具。いちばん先に確かめます。今日変えられるからです |
| ② その方の変化 | 体調・薬・座位保持力・認知・痛み。「いつもと違う」がなかったか |
| ③ 環境 | 床・段差・照明・物の位置・温度・時間帯 |
| ④ 手順・見守り | 誰が・どこまで・何分離れたか。手順が決まっていたか |
| ⑤ 体制・人数・伝達 | その時間の職員数/申し送り/記録が読まれていたか |
当てはまるものが複数あるのが普通です。1つに決めないでください。
そして、この中から1つだけ選んで変えてください。全部やろうとすると、何も変わりません。
⚠ いちばんやってはいけないのは、人に原因を求めることです。
「見ていなかったから」で終わらせると、対策は「見守りを強化する」になります。これは実行できません。そして、次から報告されなくなります。
振り返りの話し合いを、30分で終える進め方
事故の振り返りは、長く話すほど良いわけではありません。長くなる話し合いは、たいてい「誰が悪かったか」か「もっと気をつける」に流れます。下の順番で進めると、30分ほどで「何を1つ変えるか」まで決められます。
- 事実をそろえる(5分)。記録を読み上げ、見た人・見つけた人の話を足します。ここでは原因の話をしません。見ていない時間があれば、「見ていない」とそのまま書きます。
- 5つの方向に当てはめる(10分)。用具・設定/その方の変化/環境/手順・見守り/体制・伝達。当てはまりそうなものを全部書き出します。1つに絞らないでください。
- 確かめ方を決める(5分)。それぞれ、誰が、いつまでに、何を見れば確かめられるかを決めます。用具と環境は、その日のうちに確かめられることが多い方向です。
- 変えるのは1つか2つ(5分)。全部を変えると、何が効いたか分からず、続きもしません。明日から実際にやることを、動作の言葉で書きます(「注意する」ではなく「移乗の前にブレーキを2回確かめる」)。
- 見直す日を決める(5分)。2週間後など、日付を決めます。同じことが起きていないか、変えたことが続いているかを見ます。
記録に残すのは「当たらなかった方向」も
振り返りの記録には、変えたことだけでなく、確かめて当たらなかった方向も書きます。たとえば「クッションは確かめた。底付きなし」。次に同じことが起きたとき、まだ確かめていない方向から探せます。同じ議論をくり返さないための、いちばん確実な方法です。
数えると、見えるもの
1件ずつの振り返りでは見えないものがあります。転倒なら時間帯・場所・そのとき何をしようとしていたか、あざなら部位を、月ごとに並べてみてください。同じ時間帯や同じ場所に集まっていれば、それは人ではなく、物や手順や体制の問題であることが多いです。数えるための表は様式にあります。
記事(8本)
◎ どの記事も、最後は同じ出口です。「確かめたことを、記録に残す」。答えが出なくても、確かめた方向を書いておけば、次に同じことが起きたときに、確かめていない方向から探せます。これが、同じ議論をくり返さないための、いちばん確実な方法です。
あわせて読む
5つの方向のうち、どれを確かめて、どれが当たらなかったか。いずれも一例です。事業所に合わせて書き換えてお使いください。登録は要りません。
様式をダウンロード → 困りごとから調べるこの区分の使い方
- 事故が起きた「あと」に開いてください。予防のための記事ではありません
- ①から順に見てください。①用具と③環境は、今日変えられます
- 当てはまったものを、全部書き出してください。1つに絞るのは、そのあとです
- 変えるのは1つか2つだけ。全部やろうとすると、何も実行されません
- 確かめて「当たらなかった」方向も、記録に残してください。次に探す場所が減ります