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どこから考えるか

起きたあと、どこから考えるか

まず、これだけ

事故が起きたあと、原因を1つに決めなければならない気がします。報告書に、そういう欄があるからです。

⚠ でも、たいていは いくつも重なっています。用具の設定、その方の変化、環境、手順、体制。1つに決めると、残りが放置されます。「対策したのに、また起きた」の多くは、これです。

◎ この区分は、答えを出しません。かわりに5つの方向に分けて、確かめる質問を並べます。そして最後は、いつも同じ出口です——確かめたことを、記録に残す。

最終更新:2026年10月 / 高齢者支援実務研究所

この区分だけ、性格が違います。ほかの記事は「何を見るか」を書いたもの。ここは「事故が起きたあと、原因の候補をどう分解するか」を書いたものです。

◎ どの記事にも、いちばん下に【やさしい日本語】があります。書き出しの緑のボタンから、すぐ飛べます。

5つの方向に分けて考えます

方向何を確かめるか
① 用具・設定車いす/ベッド/クッション/装具。いちばん先に確かめます。今日変えられるからです
② その方の変化体調・薬・座位保持力・認知・痛み。「いつもと違う」がなかったか
③ 環境床・段差・照明・物の位置・温度・時間帯
④ 手順・見守り誰が・どこまで・何分離れたか。手順が決まっていたか
⑤ 体制・人数・伝達その時間の職員数/申し送り/記録が読まれていたか

当てはまるものが複数あるのが普通です。1つに決めないでください。

そして、この中から1つだけ選んで変えてください。全部やろうとすると、何も変わりません。

⚠ いちばんやってはいけないのは、人に原因を求めることです。
「見ていなかったから」で終わらせると、対策は「見守りを強化する」になります。これは実行できません。そして、次から報告されなくなります。

振り返りの話し合いを、30分で終える進め方

事故の振り返りは、長く話すほど良いわけではありません。長くなる話し合いは、たいてい「誰が悪かったか」か「もっと気をつける」に流れます。下の順番で進めると、30分ほどで「何を1つ変えるか」まで決められます。

  1. 事実をそろえる(5分)。記録を読み上げ、見た人・見つけた人の話を足します。ここでは原因の話をしません。見ていない時間があれば、「見ていない」とそのまま書きます。
  2. 5つの方向に当てはめる(10分)。用具・設定/その方の変化/環境/手順・見守り/体制・伝達。当てはまりそうなものを全部書き出します。1つに絞らないでください。
  3. 確かめ方を決める(5分)。それぞれ、誰が、いつまでに、何を見れば確かめられるかを決めます。用具と環境は、その日のうちに確かめられることが多い方向です。
  4. 変えるのは1つか2つ(5分)。全部を変えると、何が効いたか分からず、続きもしません。明日から実際にやることを、動作の言葉で書きます(「注意する」ではなく「移乗の前にブレーキを2回確かめる」)。
  5. 見直す日を決める(5分)。2週間後など、日付を決めます。同じことが起きていないか、変えたことが続いているかを見ます。

記録に残すのは「当たらなかった方向」も

振り返りの記録には、変えたことだけでなく、確かめて当たらなかった方向も書きます。たとえば「クッションは確かめた。底付きなし」。次に同じことが起きたとき、まだ確かめていない方向から探せます。同じ議論をくり返さないための、いちばん確実な方法です。

数えると、見えるもの

1件ずつの振り返りでは見えないものがあります。転倒なら時間帯・場所・そのとき何をしようとしていたか、あざなら部位を、月ごとに並べてみてください。同じ時間帯や同じ場所に集まっていれば、それは人ではなく、物や手順や体制の問題であることが多いです。数えるための表は様式にあります。

記事(8本)

車いすから落ちたとき ◎ 車いすを替える前に、まずクッションです。押して底に手が当たるなら、敷いていないのと同じ。ここを飛ばして車いすを替えると、新しい車いすでも同じことが起きます。 クッション/足の裏/ブレーキ/ティルトの角度/背抜き 転倒がくり返すとき 1件ずつ報告書を書いても、次がまた起きます。◎ 1件ごとではなく、月単位で並べてください。時間帯・場所・そのとき何をしようとしていたか。この3つを並べるだけで、見えるものが変わります。 3つを並べる/トイレに行こうとした/夕方と夜間/薬の変更 あざが減らないとき ◎ 部位べつに数えてください。同じ場所に出ているなら、当たっている物があります。人ではなく、物から探します。すねと前腕は、たいてい行き先が決まっています。 部位べつに数える/すねと前腕/薬の影響/原因不明の扱い むせが増えたとき ⚠ とろみを足す前に、確かめることがあります。覚醒・姿勢・一口量・ペース・時間帯。この5つのほうが先に効くことがあり、しかも今日変えられます。 起きているか/あごの角度/一口量/時間帯/むせないタイプ 誤薬が続くとき 「確認を徹底する」と書くたびに、また起きます。◎ 人ではなく、工程で分けてください。受け取り・保管・セット・本人確認・与薬・記録。どの工程かが分かると、対策が変わります。 6つの工程/セットの時間帯/同姓と似た名前/中止と再開 移乗で崩れることが増えたとき 力任せに支えているうちに、職員の腰も痛くなります。◎ 距離と角度、その方の変化、人手。この3つがほとんどです。⚠ そして「1人か2人か」を、その場の判断にしないでください。 距離と角度/立てなくなった/1人か2人かを決めておく/腰痛 ヒヤリハットが出てこないとき ⚠ 0件は、安全という意味ではありません。出てきていないだけです。書けない理由は7つあり、いちばん大きいのは「怒られると思っている」こと。◎ 様式を変える前に、返し方を変えてください。 7つの理由/出した人に返す/個人名を出さない/3行でいい 職員が続かないとき 給料や人手のせいだと言われます。◎ でも、現場でしか見えないことがあります。最初の3か月/教え方/シフト/言える空気/評価。この5つに分けて、確かめる質問を並べます。 最初の3か月/教える人が毎回違う/言える空気/辞める前の兆し

◎ どの記事も、最後は同じ出口です。「確かめたことを、記録に残す」。答えが出なくても、確かめた方向を書いておけば、次に同じことが起きたときに、確かめていない方向から探せます。これが、同じ議論をくり返さないための、いちばん確実な方法です。

確かめたことを書き残す様式を配っています

5つの方向のうち、どれを確かめて、どれが当たらなかったか。いずれも一例です。事業所に合わせて書き換えてお使いください。登録は要りません。

様式をダウンロード → 困りごとから調べる

この区分の使い方

  • 事故が起きた「あと」に開いてください。予防のための記事ではありません
  • ①から順に見てください。①用具と③環境は、今日変えられます
  • 当てはまったものを、全部書き出してください。1つに絞るのは、そのあとです
  • 変えるのは1つか2つだけ。全部やろうとすると、何も実行されません
  • 確かめて「当たらなかった」方向も、記録に残してください。次に探す場所が減ります
この区分について 一般的な情報提供を目的としています。ここに挙げた質問は、原因を特定するためのものではありません。確かめる順番を作るためのものです。 実際の原因の判断、医学的な評価、用具の適合は、医師・看護師・リハビリ職・福祉用具専門相談員など、それぞれの専門職が行います。 事業所によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。 実際の対応は、所属事業所の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・通知・法令は改正されることがあります。