ヒヤリハットが出てこないとき、どこから考えるか
今月のヒヤリハットは0件。あるいは2件。⚠ 0件は「安全だった」という意味ではありません。出てきていないだけです。
◎ 書けない理由は、だいたい7つに分かれます。そのうちいちばん大きいのは「書くと怒られると思っている」ことです。⚠ ここが残っているかぎり、様式をどれだけ簡単にしても増えません。
◎ 様式を変える前に、返し方を変えてください。出した人に、何かが返ってくるか。それだけで数は変わります。
もくじ
0件は、いちばん危ない数字です
ヒヤリハットが0件のとき、二つのうちどちらかです。⚠ 本当に何も起きていないか、起きたのに出てきていないか。前者は、まずありません。
⚠ 事故は、いきなり起きません。同じことが何度か「あぶなかった」で終わって、そのうちの1回が事故になります。ヒヤリハットが出てこないということは、その手前が見えないということです。
⚠ そして、出てこない事業所ほど「うちは事故が少ない」と言います。数えていないだけです。 0件の職場は、いちばん危ない
◎ まず、書けない理由を7つに分けてください。ここを分けずに「報告を出そう」と言っても動きません。
| 書けない理由 | その人の中では、こうなっています |
|---|---|
| ① 怒られると思う | ⚠ いちばん大きい理由です。出したら自分の落ち度になる、と思っています |
| ② 迷惑がかかると思う | 「他の人の名前を出すことになる」「夜勤の人が責められる」 |
| ③ 何を書くのか分からない | 事故とヒヤリハットの線が、その人の中にありません |
| ④ 時間がない | 書く場所が、勤務のどこにもありません |
| ⑤ 書いても何も変わらない | 前に出したのに、何も返ってこなかった |
| ⑥ 書き方が難しい | ⚠ とくに、日本語が母語でない職員。項目が多い、漢字が多い |
| ⑦ 自分だけだと思う | 他の人が出していないので、自分だけ出すのが目立ちます |
◎ ①⑤⑦は「返し方」の問題です。③④⑥は「様式と時間」の問題です。順番は、返し方が先です。
※ 7つの理由そのものと、施設が変えることは 職員がヒヤリハットを書かない7つの理由 に書いています。 この記事は、そのうち自分の事業所がどれに当たるかを確かめるためのものです。
5つの方向に分けて確かめる
| 方向 | ヒヤリハットでは、とくにここ |
|---|---|
| ① 用具・様式 | 紙の形・項目の数・置き場所。今日変えられます |
| ② 出す人 | ⚠ 誰が出していないか。職種・経験年数・国籍で偏っていませんか |
| ③ 環境 | いつ書きますか。勤務の中に、書く時間がありますか |
| ④ 手順 | ⚠ 出したあと、どうなりますか。ここがこの記事の中心です |
| ⑤ 体制・空気 | ⚠ 怒られると思っていませんか。思っていたら、他は全部効きません |
① 用具・様式 — 書くものの形
◎ ここは今日変えられます。ただし、これだけでは増えません。
- ⚠ 項目はいくつありますか(10を超えていたら、まず書かれません)
- A4いっぱいの様式になっていませんか(◎ 3行で足ります)
- 紙はどこにありますか(事務室の棚の中なら、取りに行きません)
- ⚠ 「原因」「対策」の欄が、最初からありませんか(そこで手が止まります)
- 氏名を書く欄は、必要ですか(◎ 無記名でも集められます)
- ⚠ 漢字にふりがなはありますか(日本語が母語でない職員が書けますか)
- スマホや共有の端末から出せますか
- 「ヒヤリハット」という言葉が、様式の中で説明されていますか
当てはまったら → ◎ 「いつ・どこで・何があった」の3行だけの紙にしてください。原因も対策も、集める人が後で足します。 3行で書くヒヤリハット
② 出す人 — 誰が書いていないか
⚠ 「全体で少ない」ではなく、「誰が出していないか」を見ます。
- この3か月、誰が何件出しましたか(◎ 数えると、たいてい2〜3人に偏っています)
- ⚠ 新しく入った職員から、出ていますか(入って3か月の人はいちばん気づきますが、いちばん出しにくい人です)
- ⚠ 日本語が母語でない職員から、出ていますか(0件なら、様式が読めていない可能性があります)
- 夜勤帯から出ていますか(夜勤は1人のことが多く、出しにくい時間帯です)
- 非常勤・パートの方から出ていますか
- 看護職からは出ていますか(介護職だけが書くものになっていませんか)
- ⚠ 管理者・リーダーは出していますか(出していないなら、それが答えです)
当てはまったら → ◎ 出していない層に、直接ひとつ聞いてください。「書きにくいところ、どこですか」。責める形にしないでください。
③ 環境 — いつ、どこで書くか
⚠ 「あとで書く」は、書かないという意味です。
- 勤務の中に、書く時間はありますか(申し送りの後など、決まった時間がありますか)
- ⚠ 時間外に書くことになっていませんか(なっているなら、出てこないのが当たり前です)
- その場ですぐ書ける場所に、紙がありますか(フロア・詰所・脱衣所)
- 書いたものを、どこに入れますか(誰の目にも触れる場所に置かれていませんか)
- ⚠ 提出箱は、他の職員から見えない形ですか
- 口で言ったものを、誰かが書き起こす道はありますか(◎ 書くのが苦手な人には、これが効きます)
当てはまったら → ◎ 申し送りの最後に2分、「ひやっとしたこと」を口で言う時間を作ってください。聞いた人が3行で書きます。物も人も増やさずにできます。
④ 手順 — 出したあと、どうなるか
◎ ここが中心です。出したあとに何が返るかで、次の月の件数が決まります。
- ⚠ 出した人に、何か返っていますか(何も返らないなら、次は出ません)
- 返るまでに、どれくらいかかりますか(◎ その週のうちに一言でも返ると、変わります)
- ⚠ 出したものが、そのまま個人名つきで会議に出ていませんか
- 集まったものは、月に一度まとめられていますか
- まとめた結果は、現場に戻っていますか(掲示・申し送り・回覧のどれかで)
- ⚠ 「これを出したから、こう変わった」という例が、この半年に1つでもありますか
- 出したことで、その人が不利になった例はありませんか(1回あれば、全員が知っています)
- 事故報告とヒヤリハットは、別の紙・別の扱いになっていますか
当てはまったら → ◎ いちばん効くのは「出してくれてありがとう、これはこう変えます」を、その週に返すことです。◎ 1件でも変わった例を作ってください。それが全部です。
⑤ 体制・空気 — 怒られると思っていませんか
⚠ ここが残っているかぎり、様式も時間も効きません。
- ⚠ ヒヤリハットを出した人が、その場で注意された場面がありましたか
- 会議で読み上げるとき、個人名が出ていませんか
- ⚠ 「なぜ気づかなかったのか」と聞いていませんか(◎ 聞くなら「どこで気づきましたか」です)
- ヒヤリハットの件数が、評価や査定に使われていませんか(使われるなら、必ず減ります)
- 「件数を増やす」という目標が立っていませんか(数だけの目標は、中身のない紙を増やします)
- ⚠ 管理者は、自分のヒヤリハットを出したことがありますか
- 出した人が新人だったとき、指導と分けて扱っていますか
- ⚠ 「ヒヤリハットは、事故を防ぐために集める。人を評価するためではない」と、言葉にして伝えたことがありますか
当てはまったら → ⚠ これは現場だけでは変えられません。◎ 管理者が、まず自分の1件を出してください。それがいちばん早いです。 なぜ管理者は記録を求めるのか
確かめたことを、記録に残す
◎ 件数だけを追わないでください。記録に残すのは「誰から出ていないか」と「返すのに何日かかったか」の2つです。⚠ この2つが動けば、件数はあとからついてきます。
変えるのは、1つか2つだけ
「ヒヤリハットの提出を徹底する」
「意識づけを行う」
「月10件を目標とする」
出しにくい理由に、何もしていません。数の目標だけを立てると、中身のない紙が増えます。
「様式を3行にした(〇月〇日から)」
「申し送りの最後に2分、口で言う時間を作った(〇月〇日から)」
「出た件は、その週の申し送りで個人名を出さずに返すことにした」
形と期日があります。
まとめ
- ⚠ 0件は、安全という意味ではありません。出てきていないだけです
- ◎ 書けない理由は7つ。いちばん大きいのは「怒られると思っている」こと
- ⚠ そこが残っているかぎり、様式を簡単にしても増えません
- ◎ 様式より先に、返し方を変えてください
- ◎ 3行でいい——いつ・どこで・何があった。原因と対策は、集める人が足します
- ⚠ 「誰が出していないか」を数えてください。新人・夜勤・日本語が母語でない職員に偏ります
- ⚠ 個人名を会議に出さない。件数を評価に使わない
- ◎ 管理者が、自分の1件を出す。いちばん早く効きます
やさしい 日本語(にほんご)
1 なにが おきますか
「ヒヤリハット」が、ぜんぜん 出(で)て きません。
今月(こんげつ)は 0件(けん)です。
2 0件は、いい ことですか
⚠ いいえ。あぶない しるしです。
なにも おきなかったのでは なくて、出(だ)して いないだけ です。
3 なぜ 書(か)けないのですか
◎ りゆうは 7つ あります。
- ① ⚠ おこられる と 思(おも)う(いちばん 多(おお)い)
- ② ほかの 人(ひと)に めいわくが かかる と 思う
- ③ なにを 書くのか わからない
- ④ 時間(じかん)が ない
- ⑤ 書いても なにも かわらない
- ⑥ ⚠ 書きかたが むずかしい(かんじが 多い)
- ⑦ じぶん だけ 出すのは いや
4 ◎ 3行(ぎょう)で いいです
いつ / どこで / なにが あった
◎ これだけ です。
⚠ 「げんいん」「たいさく」は、書(か)かなくて いいです。あつめる 人が あとで 書きます。
5 ⚠ おこられる ためでは ありません
◎ ヒヤリハットは、つぎの 事故(じこ)を ふせぐ ために あつめます。
⚠ あなたを わるく 言(い)う ための ものでは ありません。
◎ 名前(なまえ)を 書かなくても いい 事業所(じぎょうしょ)も あります。
わからない ときは、リーダーに 「名前は 書きますか」と 聞(き)いて ください。
6 日本語(にほんご)が むずかしい とき
◎ 口(くち)で 言(い)っても いいです。
「きょう、〇〇さんが、おふろの 前(まえ)で すべりそうに なりました」
これで じゅうぶん です。聞(き)いた 人が 書きます。
※ この ページは 答(こた)えを 出(だ)す ための ものでは ありません。たしかめる 順番(じゅんばん)を つくる ための ものです。出(だ)しかたの きまりは、事業所(じぎょうしょ)に よって ちがいます。リーダーに 聞(き)いて ください。
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- まず、この3か月に誰が何件出したかを数えてください
- ⑤の空気から確かめます。ここが残っていると、他が効きません
- 返し方を変えてから、様式を変えてください。順番が逆だと動きません
- 確かめて「当たらなかった」ところも、記録に残してください