あざが減らないとき、どこから考えるか
気をつけているのに、あざが減らない。毎月「原因不明」が並び、集計だけが増えていきます。ご家族への説明も、だんだん苦しくなります。
◎ 部位べつに数えてください。「今月8件」ではなく「すね4・前腕3・腰1」と並べます。⚠ 同じ場所に出ているなら、当たっている物があります。
◎ 人ではなく、物から探します。すねと前腕は、行き先がだいたい決まっています。⚠ そしてあざが増えたのに介助を変えていないなら、体のほうが変わっています。
もくじ
「原因不明」が並ぶ理由
あざは、できた瞬間を見ていないことがほとんどです。だから1件ずつ見ると、どうしても「原因不明」になります。⚠ 1件で原因を出そうとするのが、そもそも無理な作りです。
◎ 数えかたを変えてください。「今月8件」ではなく、体の部位べつに並べます。
すね(両方)4件/前腕(内側)3件/腰1件
◎ すねに4件出ているなら、すねの高さに何かが当たっています。車いすのフットサポート、ベッドの柵、テーブルの脚、ポータブルトイレ。物の高さと、あざの高さを合わせてください。
◎ あざの場所は、当たった物を教えてくれます。
すね・ひざ下=車いす・ベッド・家具の脚まわり/前腕の内側・上腕=つかんだ手/腰・おしり=移乗のときの接触や着地/肩甲骨・背中=背もたれ・ずり落ち。⚠ ただし、これは可能性であって、断定ではありません。
⚠ 前腕の内側や上腕の内側にあざが並ぶときは、慎重に見てください。つかんだ跡のことがあります。
⚠ これは「誰かが虐待した」と決めつける話ではありません。◎ 急に引き止めた・とっさに支えたときにも同じ形が出ます。だからこそ、記録の残し方が大事になります。詳しくは 虐待を疑われないための記録。
5つの方向に分けて確かめる
| 方向 | あざでは、とくにここ |
|---|---|
| ① 用具・設定 | ⚠ あざの高さに合う物をさがす。フットサポート・柵・家具の角 |
| ② その方の変化 | ⚠ 薬(血をさらさらにする薬など)・皮膚の弱さ・むくみ・栄養 |
| ③ 環境 | 動線に出っぱっている物。角の保護。照明 |
| ④ 手順・見守り | どこを持って介助しているか。職員によって違っていないか |
| ⑤ 体制・人数・伝達 | 1人でやっている介助はどれか。発見したときに記録されているか |
① 用具・設定 — 当たっている物をさがす
◎ やり方は簡単です。あざの高さで、部屋をひとまわりしてください。
- 車いすのフットサポートは、乗り降りのときにどけていますか(⚠ すねのあざで、いちばん多く挙がる物です)
- フットサポートの角は、当たると痛い形ではありませんか
- ベッドの柵の高さと、あざの高さは合いませんか
- ポータブルトイレ・オーバーテーブル・いすの脚は、動線に出ていませんか
- 車いすのアームサポートは、移乗のときに上がりますか(上がらない型だと、そこを越えます)
- ⚠ その方の腕は、いつもどこに当たっていますか(アームサポートの前の角・テーブルのふち)
- ⚠ 入浴用のいす・手すりも見てください。ぬれた場所は見落とされます
当てはまったら → ◎ その日のうちに、当たる物にカバーを付けるか、位置を変えてください。会議は要りません。◎ 変えたことも記録に書きます。
② その方の変化 — 薬と皮膚
⚠ 介助を変えていないのに あざが増えたなら、体のほうが変わっています。
- ⚠ 薬が変わっていませんか。血をさらさらにする薬・ステロイドを使っている方は、同じ力でも あざになりやすいとされています
- 皮膚が薄くなっていませんか。高齢になると、軽く触れただけで内出血することがあります
- むくんでいませんか(むくんだ皮膚は、当たりに弱くなります)
- 食べる量・水分・体重が減っていませんか
- ⚠ あざの色は?(新しい・古いが混ざっているか。同じ場所で新旧が重なっていないか)
- 痛がりますか(痛がらないあざは、気づかれずにくり返されます)
- ⚠ 治りにくくなっていませんか(前より長く残るようになった、は変化のサインです)
当てはまったら → 看護師に伝えてください。⚠ 「薬のせいでは」と言う必要はありません。「〇月ごろから、同じ強さで支えても あざになります」——事実で十分です。 老人性紫斑と、そうでないもの
③ 環境
◎ ①と一緒に見てしまってかまいません。境目は、それほど大事ではありません。
- 居室からトイレ・食堂までの動線に、角が出ている物はありませんか
- ドアの枠・柱の角に、保護は付いていますか
- 暗い時間帯に、その方が通る場所はどこですか
- ⚠ その方の居室が変わっていませんか。家具の位置が変わっていませんか
- 共用のいすやテーブルの高さが、その方に合っていますか
当てはまったら → ◎ 今日どかせます。物の位置は、いちばん早く変えられる対策です。
④ 手順・見守り — 持ち方
⚠ 人を責める方向ではありません。見るのは「持ち方が決まっているか」です。決まっていないと、職員ごとに変わります。
- ⚠ その方を、どこを持って支えることになっていますか(決まっていますか)
- 脇の下をつかんでいませんか(⚠ 上腕の内側にあざが出やすい持ち方です)
- ⚠ 職員によって、持つ場所が違っていませんか
- とっさに引き止めるとき、どこをつかむことになっていますか
- 移乗の距離と角度は決まっていますか(遠いと、引っぱる力が強くなります)
- 爪は短いですか(介助する側の爪も)
- ⚠ 更衣・入浴のときの手順は決まっていますか(袖を通すときに前腕が当たります)
当てはまったら → ◎ 「この方はここを持つ」を1行決めて、申し送りと記録に書いてください。ケアの統一は、あざにいちばん効きます。 脇の下をつかまない
⑤ 体制・人数・伝達
⚠ ここを書かないと、対策が「気をつける」で終わります。
- ⚠ その方の移乗は、1人でやることになっていますか。2人ですか
- その決まりは、どこに書いてありますか(口伝えになっていませんか)
- ⚠ 忙しい時間帯だけ1人になっていませんか
- あざを見つけたとき、その場で記録していますか(あとで書くと、大きさと色が曖昧になります)
- ボディマップ(体の図)を使っていますか
- ⚠ 前回のあざは、申し送りで共有されましたか。共有されたあと、何か変わりましたか
- ご家族への説明は、誰がしていますか
当てはまったら → ⚠ これは現場だけでは変えられません。事実を並べて、管理者に上げてください。
確かめたことを、記録に残す
◎ あざは「見つけたときの記録」が、いちばん強い材料になります。部位・大きさ・色・形・痛みの有無・発見した時刻。そして⚠ 「発見した」と「転倒した」を書き分けてください。見ていないのに「ぶつけた」と書くと、記録が推測になります。
変えるのは、1つか2つだけ
「介助時に注意する」
「皮膚の観察を徹底する」
「原因不明」
誰が・いつ・何をするかが、ありません。そして翌月も同じ言葉が並びます。
「フットサポートにカバーを付けた(〇月〇日・〇〇)」
「移乗は右の腰と背中を支える、と決めた(〇月〇日から)」
「すねのあざを部位べつに数え始めた(〇月から)」
物と場所と期日があります。
まとめ
- ⚠ 1件で原因を出そうとすると、必ず「原因不明」になります
- ◎ 部位べつに数える。「今月8件」ではなく「すね4・前腕3・腰1」
- ◎ あざの高さで、部屋をひとまわりする。人ではなく、物から探します
- ⚠ 介助を変えていないのに増えたなら、体のほうが変わっています(薬・皮膚・むくみ)
- ⚠ 前腕・上腕の内側は慎重に。ただし決めつけない。だからこそ記録の残し方が大事です
- ◎ 「この方はここを持つ」を1行決める。ケアの統一が、いちばん効きます
- ⚠ 「発見した」と「ぶつけた」を書き分ける
- ◎ 確かめて当たらなかった方向も、記録に残す
やさしい 日本語(にほんご)
1 なにが おきますか
気(き)を つけて いるのに、あざが へりません。
毎月(まいつき)「原因不明(げんいんふめい)」と 書(か)いて います。
2 やって みて ください
◎ 体(からだ)の 場所(ばしょ)べつに 数(かぞ)えます。
「今月(こんげつ)8件」ではなく
「すね 4/うで 3/こし 1」
◎ 同(おな)じ ところに 出(で)るなら、当(あ)たって いる 物(もの)が あります。
3 あざの 高(たか)さで、部屋(へや)を 見(み)ます
◇ すね …… 車(くるま)いすの 足(あし)を のせる ところ/ベッドの さく/テーブルの あし
◇ うでの 内側(うちがわ) …… つかんだ 手(て)
◇ こし・おしり …… 移乗(いじょう)の とき
◎ 人(ひと)では なく、物(もの)から さがします。
4 体(からだ)が 変(か)わって いる ことも あります
⚠ 介助(かいじょ)を 変(か)えて いないのに、あざが ふえた とき。
——くすりが 変わって いませんか。
——皮膚(ひふ)が うすく なって いませんか。
◎ 看護師(かんごし)に つたえて ください。
「同じ 力(ちから)で ささえても、あざに なります」——これで いいです。
5 だいじな こと
⚠ 「見(み)つけた」と「ぶつけた」を 分(わ)けて 書(か)いて ください。
見て いないのに「ぶつけた」と 書くと、それは 想像(そうぞう)です。
◎ 書くのは 場所・大(おお)きさ・色(いろ)・形(かたち)・痛(いた)みが あるか・見つけた 時間(じかん)です。
※ この ページは 答(こた)えを 出(だ)す ための ものでは ありません。たしかめる 順番(じゅんばん)を つくる ための ものです。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
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この記事の使い方
- ①から順に見てください。①用具と③環境は、今日変えられます
- 当てはまったものを、全部書き出してください。1つに絞るのは、そのあとです
- 変えるのは1つか2つだけ
- 確かめて「当たらなかった」方向も、記録に残してください