むせが増えたとき、どこから考えるか
最近むせることが増えた。刻みにするべきか、とろみを足すべきか、受診をすすめるべきか。決めきれないまま、食事の時間が怖くなります。
⚠ とろみを足す前に、確かめることがあります。覚醒・姿勢・一口量・ペース・時間帯。◎ この5つのほうが先に効くことがあり、しかも今日変えられます。
⚠ そして、いちばん怖いのは「むせないこと」です。むせは、気管に入りかけたものを出そうとしている反応です。むせずに入っていく方のほうが、見つけにくい。
もくじ
形を変える前に、見るところがあります
むせが増えると、まず食事の形(きざみ・とろみ)を変えたくなります。⚠ でも、形を変えるのは、いちばん大きな変更です。食べる楽しみが減り、量が減り、体力が落ちて、かえってむせやすくなる——という流れが起きることがあります。
◎ 先に確かめるのは、この5つです。全部、今日変えられます。
- 起きているか(覚醒)——眠いまま食べていませんか
- あごの角度——上を向いていませんか
- 一口の量——スプーンが大きすぎませんか
- ペース——飲み込む前に、次を入れていませんか
- 時間帯——朝と夕で、違いませんか
⚠ これを確かめずに形だけ変えると、「とろみを足したのに、まだむせる」になります。
⚠ いちばん怖いのは「むせないこと」です。むせは、気管に入りかけたものを出そうとする反応です。⚠ その反応が弱くなると、むせずに入っていきます。
◎ だから、むせの回数だけを見ないでください。食後の声のかすれ、微熱、食事に時間がかかる、食べたがらない——これらのほうが先に出ることがあります。詳しくは むせない誤嚥の見つけ方。
5つの方向に分けて確かめる
| 方向 | むせでは、とくにここ |
|---|---|
| ① 用具・設定 | いすの高さ・足の裏・テーブルの高さ・スプーンの大きさ・食器の位置 |
| ② その方の変化 | ⚠ 覚醒(起きているか)・薬の変更・口の中・体調・体重 |
| ③ 環境 | ⚠ 時間帯・まわりの音・声かけのタイミング・急がせる空気 |
| ④ 手順・見守り | 一口量・ペース・声かけ。介助者によって違っていないか |
| ⑤ 体制・人数・伝達 | その時間の人数。とろみの濃さが統一されているか |
① 用具・設定 — いすと食器
◎ 姿勢は、いすとテーブルで決まります。今日変えられます。
- 足の裏が、床に着いていますか(浮いていると、体が安定しません)
- おしりが前に滑っていませんか(ずり落ちた姿勢では、あごが上がります)
- テーブルの高さは、ひじが軽く乗る高さですか(高すぎると、上を向いて食べます)
- ⚠ スプーンは大きすぎませんか(一口量は、スプーンで決まってしまいます)
- 食器はすくいやすい形ですか(すくいにくいと、あごが上がります)
- ⚠ 車いすのまま食べていませんか(車いすは食事用のいすではありません。可能なら食堂のいすへ)
- ベッド上なら、角度は決まっていますか。背抜きをしていますか
- 眼鏡・入れ歯は着けていますか(入れ歯が合っていないと、丸のみになります)
当てはまったら → ◎ スプーンを小さくするだけで変わることがあります。リハビリ職・管理栄養士・言語聴覚士に相談してください。
② その方の変化 — 覚醒と体調
⚠ 「起きているか」が、いちばん大きい要素になることがあります。
- ⚠ 食事のとき、しっかり目が開いていますか。眠っていませんか
- ⚠ 夜の薬が、朝まで残っていませんか(眠るための薬・痛みの薬が変わっていませんか)
- 薬が増えていませんか(口が乾く薬もあります)
- 口の中は乾いていませんか。汚れていませんか
- 熱はありませんか。微熱がくり返していませんか
- 声がかすれていませんか(食後に、がらがら声になっていませんか)
- 体重が減っていませんか
- 食べる時間が長くなっていませんか(30分を大きく超えるようになった、は変化です)
当てはまったら → 看護師に伝えてください。⚠ むせの回数だけでなく、「食後の声」「食事にかかる時間」「熱」を添えてください。そのほうが判断してもらえます。
③ 環境 — 時間帯と、まわりの音
◎ ここも今日変えられます。
- ⚠ 朝食でむせますか、夕食でむせますか(朝に多いなら、覚醒を疑ってください)
- 食事の前に、起きてからどのくらい経っていますか
- テレビ・話し声で、注意がそれていませんか
- ⚠ 食べている最中に、話しかけていませんか(返事をしようとして、むせます)
- まわりが急いでいませんか(配膳・下膳の動きが、その方を急がせていませんか)
- 座る場所は、いつも同じですか(変わると姿勢も変わります)
- 明るさは十分ですか(食べ物が見えないと、口に入る量が読めません)
当てはまったら → ◎ 席の位置を変える/食事の開始時刻を30分ずらす。これだけで変わることがあります。
④ 手順・見守り — 一口量とペース
⚠ 介助者によって違っていないか。ここを見ます。
- ⚠ 一口量は決まっていますか(「スプーン半分」など、具体的に)
- ⚠ 飲み込んだのを確かめてから、次を入れていますか(のどが動いたのを見ていますか)
- ⚠ 口の中に残っていませんか(左右のほおの内側。残ったまま次を入れると、あふれます)
- 最初の一口は、水分ですか(乾いた口に固形物を入れていませんか)
- 介助者の位置は、その方の目の高さですか(立って介助すると、あごが上がります)
- 食後、すぐ横にしていませんか(30分は起きている、と決まっていますか)
- ⚠ とろみの濃さは、誰が作っても同じですか(計量スプーンを使っていますか)
- 食後の口腔ケアは、毎回できていますか
当てはまったら → ◎ 「一口量はスプーン半分」「のどが動いてから次」を1行決めて、申し送りに書いてください。統一が、いちばん効きます。 とろみの濃さを統一する
⑤ 体制・人数・伝達
⚠ 食事の時間は、いちばん人手が足りなくなる時間帯です。それも書いてください。
- その時間、フロアに何人いましたか。介助が必要な方は何人でしたか
- ⚠ 1人で何人を見ていましたか
- その方の食事形態・とろみの濃さは、どこに書いてありますか(口伝えになっていませんか)
- ⚠ 新しい職員でも、同じ形で出せますか
- 前回のむせは、申し送りで共有されましたか
- ⚠ 共有されたあと、何か変わりましたか
- 言語聴覚士・管理栄養士に相談する道は、決まっていますか
当てはまったら → ⚠ これは現場だけでは変えられません。「その時間の介助対象者数」を数字で書いて、管理者に上げてください。
確かめたことを、記録に残す
◎ むせの記録は「回数」だけにしないでください。何を食べているときか/その日の覚醒/姿勢/一口量/食後の声。⚠ この5つが並ぶと、専門職が判断できる材料になります。「むせあり」だけでは、誰も次に進めません。
変えるのは、1つか2つだけ
「食事介助時に注意する」
「ゆっくり食べていただく」
「経過観察」
誰が・どのくらい・何をするかが、ありません。
「一口量をスプーン半分にした(〇月〇日から)」
「朝食を8時から8時30分に変えた(〇月〇日から)」
「食後30分は座位を保つ、と決めた」
量と時刻と期日があります。
まとめ
- ⚠ 形(きざみ・とろみ)を変える前に、5つを確かめる——覚醒・姿勢・一口量・ペース・時間帯
- ◎ この5つは、今日変えられます
- ⚠ いちばん怖いのは「むせないこと」。食後の声・微熱・食事にかかる時間を見てください
- ⚠ 朝に多いなら、覚醒を疑う。夜の薬が残っていないか
- ◎ スプーンを小さくするだけで変わることがあります
- ⚠ とろみの濃さは、誰が作っても同じですか(計量していますか)
- ◎ 記録は回数だけにしない。食べていた物・覚醒・姿勢・一口量・食後の声
- ◎ 確かめて当たらなかった方向も、記録に残す
やさしい 日本語(にほんご)
1 なにが おきますか
最近(さいきん)、むせる ことが ふえました。
「きざみに する?」「とろみを ふやす?」——決(き)められません。
2 形(かたち)を 変(か)える 前(まえ)に
◎ 5つ、たしかめて ください。ぜんぶ きょう 変えられます。
① 起(お)きて いますか(ねむく ないですか)
② あごが 上(うえ)を 向(む)いて いませんか
③ ひと口(くち)が 大(おお)きすぎませんか
④ のみこむ 前(まえ)に、つぎを 入(い)れて いませんか
⑤ 朝(あさ)ですか、夕方(ゆうがた)ですか
⚠ 朝に 多(おお)い とき——ねむいかも しれません。夜(よる)の くすりが のこって いることも あります。
3 いちばん こわい こと
⚠ 「むせない」ことが、いちばん こわいです。
むせるのは、体(からだ)が 出(だ)そうと して いるから です。
その 力(ちから)が よわく なると、むせないで 入(はい)って いきます。
◎ だから むせの 回数(かいすう)だけを 見(み)ないで ください。
◇ 食(た)べた あとの 声(こえ)が がらがら
◇ すこし 熱(ねつ)が ある
◇ 食べるのに 時間(じかん)が かかる
4 記録(きろく)に 書(か)く こと
⚠ 「むせ あり」だけでは、だれも 次(つぎ)に 進(すす)めません。
◎ 何(なに)を 食べて いた とき/起きて いたか/すわり方/ひと口の 量(りょう)/食べた あとの 声
※ この ページは 答(こた)えを 出(だ)す ための ものでは ありません。たしかめる 順番(じゅんばん)を つくる ための ものです。食事(しょくじ)の 形(かたち)を 決(き)めるのは、お医者(いしゃ)さん・看護師(かんごし)・言語聴覚士(げんごちょうかくし)・管理栄養士(かんりえいようし)です。
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回数だけでなく、覚醒・姿勢・一口量・食後の声を残せる形にしています。いずれも一例です。事業所に合わせて書き換えてお使いください。登録は要りません。
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- ①から順に見てください。①用具と③環境は、今日変えられます
- 形(きざみ・とろみ)を変えるのは、いちばん最後です
- 変えるのは1つか2つだけ
- 確かめて「当たらなかった」方向も、記録に残してください