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初日に伝えるべき4つのこと ——「あとで教える」が、事故になる

外国人職員の初日に、何を伝えるか。多くの施設で、これは決まっていません。 住まいや役所の手続きなど、暮らしの支援は制度で項目が決まっています。けれど現場の安全を、初日に、誰が、何を伝えるかは、制度の項目には出てきません。

第10章は、初日に伝えることを4つに絞っています。身体拘束、写真とSNS、虐待の通報、緊急連絡。 知らないと本人が違反者になる3つと、知らないと命に関わる1つです。

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最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. なぜ「初日」なのか
  2. 4つの中身 — どこまで言うか
  3. 「言った」と「伝わった」は違う
  4. 初日に言わなくていいこと
  5. 「伝えた」を残す
  6. まとめ

なぜ「初日」なのか

職員に研修の機会を確保することは、施設の義務として運営基準に書かれています。身体拘束の適正化のための研修も、事故防止のための研修も、「定期的に行うこと」になっています。 ただし、「初日に何を」は、どこにも書いていません。だから、多くの施設で「そのうち研修で」になります。

「そのうち教える」の「そのうち」は、たいてい最初の事故のあとに来ます。

1週目に起きることは、悪意ではなく「知らなかった」から起きます。そして事故のあと、施設は「教えていなかった」ことになります。

1週目に、実際に起きることです。危ないと思って、ベッドの柵を4本立てる。利用者さんと一緒に写った写真を、母国の家族に送る。 先輩の乱暴な言葉を見て、黙っている。夜、急に具合の悪くなった人を見つけて、誰に電話すればいいか分からないまま、時間が過ぎる。 どれも、本人の能力の問題ではありません。初日に、誰も言わなかったのです。

「登録支援機関がやってくれる」と思っていると、誰もやっていない、が起きます。 特定技能の支援計画に並ぶのは、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、日本語学習の機会、相談・苦情への対応、定期的な面談など——暮らしを支える項目です。 介護の現場で「柵は何本まで」「写真は撮ってよいか」を初日に誰が教えるかは、そこには書いてありません。それは、受け入れる施設の仕事です。

4つの中身 — どこまで言うか

「身体拘束はしないでください」「個人情報に気をつけて」では、伝わりません。 具体例で、「ここまで言う」と決めておくのが、この記事のいちばんの中身です。

初日に伝えることなぜ、初日か
① 身体拘束にあたる行為善意でやってしまいます。知らないと、本人が違反者になります
② 写真・SNS・守秘義務仕事を失う人が、いちばん多いところです。悪気のない1枚で起きます
③ 虐待を見たときの通報「先輩のやり方だから」で黙ります。施設で働く人が虐待を見つけたら、通報は義務です
④ 緊急のとき、誰に電話するか知らないと、命に関わります。夜勤で一人になる前に、必ず

① 身体拘束 — 11の行為を、具体例で

「危ないから柵を4本」「手が動かないようにミトン」「車いすからずり落ちないようにベルト」。 どれも、利用者さんを守ろうとしてやります。だから、「してはいけない」と言われなければ、します。

✕ 伝わらない言い方

「身体拘束はしないでください」
「利用者さんの尊厳を大事に」

→ 何が身体拘束か、分かりません。柵4本が身体拘束だとは、言われなければ気づけません。

〇 伝わる言い方

「ベッドの柵は3本まで。4本で囲むと身体拘束です」
「危ないと思ったら、柵を足さないで、〇〇さんを呼んでください」

何をして、何をしないかが、その場で決まります。

11の行為の一覧は、身体拘束にあたる11の行為にあります。ふりがなつきのやさしい日本語もついているので、初日に渡す紙としてそのまま使えます。

② 写真・SNS・守秘義務 — 「制服の自撮りもダメ」まで

くわしくは写真とSNS — 辞めたあとも守秘義務は続くに。 「迷ったら、撮らない・送らない・話さない」——この一文だけ、初日に覚えてもらえば足ります。

③ 虐待を見たときの通報 — 疑いだけで、していい

「あなたが見たことを言うのは、告げ口ではありません」——ここまで言わないと、伝わりません。 くわしくは虐待を見たとき — 疑いだけで通報していいに。

④ 緊急連絡 — 誰に、何番に

言い方は第一報の言い方 — 5つだけ言えば伝わるに。 連絡先を書き込んで貼る紙は、様式のダウンロードの様式5にあります。空欄のまま貼らないでください。

4つに共通するのは、「本人が判断してよいことではない」と伝えることです。
柵を足すか。写真を撮ってよいか。通報するか。119を呼ぶか。——迷ったら、する前に、この人に聞く。 その「この人」の名前まで決めておくのが、初日の仕事です。

「言った」と「伝わった」は違う

初日は、本人にとって情報がいちばん多い日です。言ったことの多くは、残りません。 だから、言い方と、確かめ方を変えます。

やること中身
やって見せる柵の本数も、電話のかけ方も、まず1回やって見せる。言葉での説明は、そのあと
短い文で、数字を入れる「柵は3本まで」「電話で言うのは5つ」。専門用語は言い換える
確認は「今から何をする?」「分かった?」には、誰でも「はい」と答えます。「柵は何本まで?」「写真はどうする?」「夜、誰に電話する?」と聞く
紙で渡す4つを1枚にして渡す。ふりがなつき。母語の資料を添えるなら、参考訳であることを書いておく
通訳を頼む初日のこの4つは、込み入った話です。監理団体・登録支援機関に、同席を頼んでよい場面です

「わかりました」と返ってきても、伝わったとは限りません。 その仕組みは「わかりました」と言うのに、できていないに書きました。 初日から「前も言ったよね」を言わない——これも、初日の仕事です。

初日に言わなくていいこと

初日に全部を詰め込むと、4つが埋もれます。施設の沿革、理念、加算の話、すべての手順書、全利用者さんの名前。 これらは初日でなくていい。第10章は、時期を分けています。

時期やること
入職前宗教・食習慣・住まい・通院の希望を聞く。連絡先の一覧を母語で用意する
初日身体拘束の11項目/写真・SNS・守秘義務/虐待の通報/緊急連絡。この4つは初日に
1週間教育担当を1人決める。「誰に聞けばいいか」をはっきりさせる
1か月1回目の面談。「先週、いちばん大変だったのはいつ?」から始める
3か月夜勤に入る前に、写真つきの手順書で確認。最初の夜勤は2人で

宗教・食習慣・服装は、初日ではなく入職前に、こちらから聞くことになっています。 聞き方は宗教・食習慣・服装への配慮に。 申し送りの速さや略語のことは、1週目に教育担当が扱う中身です——申し送りが速くて聞き取れないとき

「伝えた」を残す

事故が起きたとき、問われるのは「教えていたか」です。 署名だけの受講票では、「伝わった」は示せません。残すなら、次の形です。

受け入れる側が年に1回点検する20項目のうち、最初の3つは、この初日の中身そのものです。 受け入れ側の20項目チェックに載せました。

外国人職員が増える施設で起きる事故の多くは、本人の能力ではなく、受け入れる体制の不足から起きています。
初日の4つは、職員を守ると同時に、施設を守ります。

まとめ

やさしい 日本語(にほんご)

1 この ページは だれの ため?

この ページは、あなたを 受(う)け入(い)れる 事業所(じぎょうしょ)の 人(ひと)に 書(か)きました。
でも、あなたも つかえます。

2 はじめの 日(ひ)に、この 4つを 教(おそ)わりましたか

3 教わって いなければ、聞(き)いて ください

「これは、教わって いません。教えて ください」と 言って いいです。
まよったら、する 前(まえ)に、聞きます。柵を 足(た)す 前。写真を 撮る 前。
⚠ 「だれに 聞くか」が わからないときは、「わからないとき、だれに 聞けば いいですか」と 聞いて ください。 Nếu chưa được dạy, bạn có thể nói: "Tôi chưa được hướng dẫn việc này. Xin hãy chỉ cho tôi."

※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。ベトナム語は 参考訳(さんこうやく)です。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。

連絡先の図は、書き込んで貼るだけです

「こんなとき・誰に・電話番号」を埋める紙(様式5)と、先に119を呼ぶ基準のチェックを用意しています。初日の④は、この1枚を壁に貼って、指さして説明すれば終わります。登録不要です。

様式を見る → 外国人職員のために — 一覧

根拠にした資料

個人の経験や、特定の施設の事例ではありません。次の一次情報と、当研究所が編集している実務マニュアルをもとに整理しています。
  • 『介護事故防止 実務マニュアル』第10章 日本の介護現場で特に注意すること(⑤ 定着のためのサイクル「この4つは初日に」/教え方の4ステップと面談の記録/個人情報とSNS/身体拘束にあたる11の行為/虐待の5つの種類と通報のしかた)全文公開しています
  • 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第11条第4項〜第6項(身体的拘束等の禁止・記録・適正化のための委員会・指針・定期的な研修)、第24条第3項(従業者への研修の機会の確保)、第35条第1項(事故発生の防止のための指針・報告の体制・委員会と定期的な研修・担当者)。施設の基準を例に挙げました。他のサービスにも、同じ趣旨の規定があります
  • 厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」(1号特定技能外国人支援計画の支援内容、協議会への加入)。支援計画の項目が「暮らしの支援」であることの根拠として参照しました
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。 施設によって、職員によって、正しい運用は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 実際の対応は、所属施設の規程および自治体の定めに従ってください。制度・法令は改正されることがあります(法令の記載は2026年9月時点の確認です)。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。