「わかりました」と言うのに、できていない
「わかりました」と言ったのに、できていなかった。
これは、うそをついたのではありません。その場で「分かりません」と言えなかったのです。
分からないのに頷いてしまう——これは事故の最大の入口です。 そして、本人の問題にすると、絶対に解決しません。
何が起きているのか
頼んだ仕事が、頼んだとおりになっていない。聞くと「わかりましたと言ったのに」となる。 ここで「うそをつかれた」と受け取ると、間違えます。
「わかりました」は、「理解した」ではなく、「聞きました」の意味で使われていることがあります。
悪意はありません。その場で「分かりません」と言えなかった。それだけです。
忙しそうだった。何度も聞くと迷惑だと思った。分からないと言うと評価が下がると思った。 どこが分からないのか、自分でも分からなかった——理由はいくつもあります。 そしてどれも、叱っても消えない理由です。
なぜ「わかりました」と言ってしまうのか — 6つの理由
| 理由 | 中で起きていること |
|---|---|
| 聞き返すのが失礼だと思っている | 目上の人に聞き返すことを避ける文化圏があります |
| 評価が下がると思っている | 「質問が多い=能力が低い」と考える職場を経験している場合があります |
| 相手が忙しそう | 実際に忙しい。声をかけるタイミングが見つからない |
| 半分は分かっている | 7割分かると「分かった」と感じます。残り3割に事故が潜みます |
| どこが分からないか分からない | 知らない言葉がひとつあると、文全体が分からなくなります |
| 前に聞いたことがある | 「前も聞いたよね」と言われた経験があると、二度と聞きません |
6つに共通するのは、「本人の能力」ではないことです。 どれも「言える空気があるか」の問題です。だから、変えられるのは受け入れる側です。
外国人職員へ — 3つだけ
- 「分かりません」は、いつ言ってもいい言葉です。作業を止めてよいです
- どこが分からないかを言う。「全部」でもいいです。「〇〇という言葉が分かりません」なら、もっといいです
- 復唱する。「〇〇を、10時までに、2人でやる、でいいですか」——これが最強の方法です。間違いがその場で見つかります Hãy nhắc lại: "〇〇, trước 10 giờ, hai người làm — có đúng không ạ?"
そのまま使える言い方は、日本の介護現場の用語(対訳表)のフレーズ集にあります。 「分かりません。教えてください」「紙に書いてください」「やって見せてください」——全部、言ってよい言葉です。
日本人職員へ — 確認のしかたを変える
覚えることは3つです。
- 「分かった?」と聞かない。誰でも「はい」と答えます。かわりに「今から何をする?」と聞く
- 「前も言ったよね」を言わない。この一言で、その人は二度と質問しなくなります
- やってみせる。言葉で3回説明するより、1回やって見せるほうが速いです。そして、やってもらって、見る
「分かった?」
「大丈夫?」
「できる?」
「質問ある?」
→ 全部「はい」と答えられます。何も確認できていません。
「今から何をするか、教えて」
「順番を言ってみて」
「何時までにやる?」
「ひとりでやる? 誰か呼ぶ?」
→ 答えられなければ、伝わっていないと分かります。
「分かりません」と言える職員は、危険な職員ではありません。いちばん安全な職員です。
分からないまま黙って進む人が、事故を起こします。その一言が出る空気を作るのは、日本語が母語である側の仕事です。
日本人どうしでも起きています
この問題は、外国人職員に限った話ではありません。 新人が先輩に「分かりません」と言えないのは、日本人どうしでも同じです。 言語の問題として片づけると、本質を見失います。
同じ構図は、ヒヤリハットが出てこない理由にもあります。 書かないのは日本語力の問題ではなく、「怒られると思っている」から——受け入れる側が変えられる部分が、いちばん大きいのです。
まとめ
- 「わかりました」のあとにできていなくても、うそをつかれたのではありません
- 言えない理由は6つ。どれも「言える空気があるか」の問題です
- 外国人職員は、「分かりません」+復唱。いつ言ってもよい言葉です
- 日本人職員は、「分かった?」ではなく「今から何をする?」
- 「前も言ったよね」を、チームの禁句にする
やさしい 日本語(にほんご)
1 なにが おきますか
「わかりましたか?」と 聞(き)かれて、「わかりました」と 答(こた)えました。
でも、あとで できて いませんでした。
先輩(せんぱい)が こまった 顔(かお)を します。
2 これは うそでは ありません
◎ あなたが わるいのでは ありません。
「わかりません」と 言(い)いにくい 空気(くうき)が ある だけです。
⚠ 日本人(にほんじん)どうしでも 同(おな)じ ことが おきて います。
3 いちばん つよい 方法(ほうほう)= 復唱(ふくしょう)
◎ 聞(き)いた ことを、そのまま 言(い)い返(かえ)します。
「〇〇を、10時までに、2人(ふたり)で やる。これで いいですか?」
◎ これだけで、まちがいが その場(ば)で 見(み)つかります。
「わかりました」より、ずっと あんぜんです。
4 「わかりません」は いつ 言(い)っても いいです
- ◎ 作業(さぎょう)を 止(と)めて いいです。
- ◎ どこが わからないかを 言(い)います。
「〇〇と いう ことばが わかりません」
——「全部(ぜんぶ)わかりません」でも いいです。 - ◎ 大事(だいじ)な ことは「紙(かみ)に 書(か)いて ください」と たのんで いいです。
5 日本人(にほんじん)の 職員(しょくいん)へ
⚠ 「わかった?」と 聞(き)かないで ください。「はい」しか 返(かえ)ってきません。
◎ 「いまから 何(なに)を しますか?」と 聞いて ください。
⚠ 「前(まえ)も 言(い)ったよね」は、チームの 禁句(きんく)に して ください。
※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。
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根拠にした資料
- 『介護事故防止 実務マニュアル』第10章 日本の介護現場で特に注意すること(④「わかりました」問題/教え方の4ステップ)全文公開しています
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。