申し送りが速くて聞き取れないとき
申し送りが速くて、聞き取れない。でも、聞き返せない——ここでこぼれた情報が、事故になります。
これは聞く側の日本語力だけの問題ではありません。話す側が変えられることが、同じだけあります。 両側からまとめました。
もくじ
なぜ日本の現場は、ここまで報告を求めるのか
「報連相」「申し送り」——日本の介護現場は、報告をとても重く扱います。文化の話ではなく、理由が4つあります。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 人が交代するから | 1日に3回、担当が変わります。言わないと、次の人には何も残りません |
| 記録が法的文書だから | 事故があったとき、記録が唯一の証拠になります |
| 小さな変化が命に関わるから | 「今日は食が細い」が、肺炎の始まりということがあります |
| あなたを守るため | 報告してあれば、あなたひとりの責任にはなりません。報告しないと、あなたが背負います |
「悪い報告」ほど早く。これが日本の職場の鉄則です。 良い報告は遅れても困りませんが、悪い報告は遅れるほど大きくなります。言いにくいことこそ、いちばん先に。
報告の型 — この順番で言うだけ
報告には型があります。①誰が ②いつ ③どこで ④何が ⑤自分がやったこと ⑥お願いしたいこと。 この6つを、この順番で言うだけです。順番が決まっていると、言うほうも聞くほうも楽になります。
「田中さんが、14時に、居室で、床に座っていました。2人で座らせて、看護師さんを呼びました。次にどうしたらいいか教えてください。」
Ông Tanaka, lúc 14 giờ, trong phòng, đang ngồi dưới sàn. Tôi đã đỡ dậy và gọi y tá. Xin cho tôi biết tiếp theo nên làm gì.
事故のときの電話の第一報は、さらに短い型があります(第一報の言い方 — 5つだけ言えば伝わる)。 ふだんの申し送りはこの6つ、緊急の第一報はあちらの5つ、と使い分けてください。
外国人職員へ — 今日からできる5つ
- 申し送りは開始時刻ちょうどに始まります。5〜10分前に来ておく
- 聞き取れなかったところは、その場で「もう一度お願いします」。あとで聞くほうが迷惑になります
- 大事なことは「紙に書いてください」と頼む。頼んでよいことです
- 復唱する。「〇〇を、10時までに、2人で、でいいですか」——間違いがその場で見つかります
- 遅れるとき・休むときは必ず電話。メッセージだけで済ませない施設が多いです。「連絡がない」がいちばん問題になります
そのまま使える言い方(「もう一度、ゆっくりお願いします」「紙に書いてください」)は、 日本の介護現場の用語(対訳表)のフレーズ集にあります。
日本人職員へ — 話す側が変えられる5つ
- 話す速度を落とす。それだけで伝わり方が変わります。いちばん安い対策です
- 略語と方言を使わない。「バイタル」は通じても、「ラウンド」「ケアマネ」「デイ」は通じないことがあります
- 指示は具体的に、数字で。「たくさん飲ませて」→「200ml」。「あとで」→「10時までに」
- 重要事項はホワイトボードか紙に書く。口頭だけにしない
- 最後に「今から何をするか、教えて」と確認する。「分かった?」では確認になりません(→「わかりました」問題)
「ちゃんと」は、指示になっていません
| よく使われる言い方 | 言い換えの一例 |
|---|---|
| 「適当に」 | 「〇〇の順番で」 |
| 「様子を見て」 | 「30分後にもう一度見て、〇〇なら呼んで」 |
| 「気をつけて」 | 「フットレストを外してから」 |
| 「ちゃんと」「しっかり」 | (具体的な動作を言う) |
「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」は、何も指示していないのと同じです。 伝わらなかったとき、足りなかったのは相手の日本語力ではなく、指示の中身かもしれません。
まとめ
- 報告を求めるのは文化ではなく、あなたを守る仕組みでもあります
- 報告は「誰が・いつ・どこで・何が・やったこと・お願い」の順で言うだけ
- 聞く側は「もう一度」「紙に書いてください」+復唱。言ってよい言葉です
- 話す側は速度を落とす・略語をやめる・数字で言う・紙に書く
- 「悪い報告」ほど早く。言いにくいことこそ、先に
やさしい 日本語(にほんご)
1 なにが おきますか
申(もう)し送(おく)りが はやくて 聞(き)き取(と)れません。
でも 聞(き)き返(かえ)せません。
⚠ ここで こぼれた 話(はなし)が、事故(じこ)に なります。
2 これは あなただけの 問題(もんだい)では ありません
◎ 話(はな)す 側(がわ)が 変(か)えられる ことも、同(おな)じだけ あります。
日本語(にほんご)の 力(ちから)だけの 話では ありません。
3 なぜ 日本(にほん)の 現場(げんば)は 報告(ほうこく)を 重(おも)く 見(み)ますか
◇ 1日(にち)に 3回、人(ひと)が かわるから
◇ 記録(きろく)が 証拠(しょうこ)に なるから
◇ 小(ちい)さな 変化(へんか)が 命(いのち)に かかわるから
◎ そして あなたを 守(まも)る ためです。
報告して あれば、あなた ひとりの 責任(せきにん)に なりません。
4 きょうから できる こと
- ◎ 5〜10分(ふん)前(まえ)に 来(き)ます。申し送りは 時間(じかん)ちょうどに はじまります。
- ◎ その場(ば)で 「もう一度(いちど)おねがいします」。
——あとで 聞(き)く ほうが、めいわくに なります。 - ◎ 「紙(かみ)に 書(か)いて ください」と たのみます。たのんで いい ことです。
5 わるい 知(し)らせほど、はやく
⚠ これが 日本の 職場(しょくば)の いちばん 大事(だいじ)な きまりです。
よい 話は おくれても こまりません。
わるい 話は、おくれるほど 大(おお)きく なります。
※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。
あわせて読む
根拠にした資料
- 『介護事故防止 実務マニュアル』第10章 日本の介護現場で特に注意すること(③報連相・申し送り・時間)全文公開しています
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。