車いすの部品の名前 ——「あの足のところ」では、伝わらない
「足のところに、すねが当たったみたいです」——申し送りで、こう言われたことはありませんか。 「足のところ」は、フットサポートのことか、レッグサポートのことか、ブレーキのレバーのことか。聞いた人ごとに、思い浮かべる場所が違います。
名前がそろっていないと、申し送りが伝わりません。そしてあざの原因が、見つかりません。 この記事は、車いすの13の部品と6つの機種の名前を、事故とのつながりで整理したものです。日本語・ベトナム語・英語をつけました。
なぜ、名前がそろっていないと事故が見つからないのか
すねにあざがくり返しできる方がいます。原因は、たいてい車いすのどこかが当たっています。 ところが記録には「車いすに当たった?」とだけ書かれている。どこに、どの部品が当たったのかが残らないので、 次の勤務帯の人は、同じ場所を見られません。
名前は、事故を見つけるための道具です。
「フットサポートの角」と書けば、次の人はそこを手でなでます。「足のところ」では、なでる場所が決まりません。
外国人職員や新人にとっては、もう一段むずかしくなります。「横のやつ」「あれ」「そこ」——指さしで通じるのは、その場にいるときだけです。 詰所に部品の名前の図を貼っておくと、チームの共通の言葉になります。この記事の表は、そのまま印刷して使ってください。
13の部品 — 図と、事故で関係するところ
表の右の列が、この記事のいちばんの中身です。その部品が、どの事故と関係するか。 すねのあざならフットサポートとブレーキ。ひじ・上うでのあざならアームサポート。ずり落ちならシートと角度——見る場所が決まります。
| 部品(日本語) | Tiếng Việt | English | 事故で関係するところ |
|---|---|---|---|
| ① グリップ(手押しハンドル) | Tay đẩy | Push grip | 介助者の腰・操作 |
| ② バックサポート(背もたれ) | Tựa lưng | Back support | 姿勢・ずり落ち・背中の圧 |
| ③ アームサポート(ひじ掛け) | Tựa tay | Arm support | ひじ・上うでのあざ・移乗 |
| ④ シート(座面) | Mặt ngồi | Seat | ずり落ち・褥瘡・姿勢 |
| ⑤ 駆動輪(後輪) | Bánh lớn (bánh sau) | Drive wheel | 手のこすれ・巻き込み |
| ⑥ ハンドリム | Vành đẩy tay | Hand rim | 手の甲・前うでのあざ |
| ⑦ ブレーキ(駐車用) | Phanh | Brake | 移乗時の転倒・すねの当たり |
| ⑧ レッグサポート(ふくらはぎ支え) | Đỡ cẳng chân | Leg support | ふくらはぎのあざ・足の落ち込み |
| ⑨ フットサポート(足台・足乗せ) | Chỗ để chân | Foot support | すね・足の甲のあざ・転倒 |
| ⑩ キャスター(前輪) | Bánh nhỏ phía trước | Caster | 段差・つまずき・方向不安定 |
| ⑪ ティッピングレバー | Cần gạt nghiêng xe | Tipping lever | 段差越え |
| ⑫ ティルト機構 | Cơ cấu nghiêng toàn ghế | Tilt | 誤嚥・褥瘡・挟み込み |
| ⑬ リクライニング機構 | Cơ cấu ngả lưng | Recline | 誤嚥・ずり落ち・背中のこすれ |
ベトナム語・英語は参考訳です。母語話者による確認は受けていません。声に出して確かめるときは、日本語のほうを使ってください。メーカーによって呼び方が少し違うことがあります(「フットレスト」「アームレスト」など)。
あざの部位から、見る部品が決まります。
すね・足の甲 → フットサポートの角、ブレーキレバー、タイヤの空気圧。
ひじ・上うで → アームサポートの縁とネジの頭、寄りかかり。
おしり・背中 → シートとクッション、角度、背抜き。
くわしい探し方はすねのあざが何度もできる — 車いすのどこが当たっているかに。
6つの機種 — 横から見た形で覚える
細かい種類を覚える必要はありません。まず、この4つの分け方だけ。 ①自分でこげる → 標準型(自走) ②こげないが座っていられる → 介助型 ③座っていられない → ティルト ④特別な理由(血圧・呼吸・股関節) → リクライニング。 あとは、この組み合わせか、寸法を合わせられるようにした版(モジュール型)だと思ってかまいません。
| 機種 | 見分け方と、向いている方 |
|---|---|
| 標準型(自走用) | 後輪が大きく、ハンドリムがある。背もたれは低め。自分で動かせる方。移動の自立を守る、いちばん良い状態 |
| 介助型 | 後輪が小さく、介助者用のブレーキがグリップにある。自分では動かせないが、座位は保てる方。自走できる方をこれに替えると、動く力を奪います |
| モジュール型 | 座面の高さ・幅・奥行きを工具で調整できる。体格が標準から外れる方、姿勢が崩れる方。ティルトの前に、まずここ。調整は専門職の仕事 |
| リクライニング式 | 背もたれ「だけ」が倒れ、座面は水平のまま。血圧が下がりやすい・呼吸が苦しい・股関節が曲げにくい方。倒すとずり落ちるので、必ず背抜き |
| ティルト式 | 座面ごと全体が傾き、骨盤の角度は変わらない。体を起こしていられない方、ずり落ちる方、褥瘡のリスクが高い方。倒すと、できることを失います |
| ティルト+リクライニング | 両方できる。座位が保てず、飲み込みや呼吸で細かい角度調整が必要な方。使う順番は、ティルトが先、リクライニングが後 |
このほかに、六輪型(屋内で小回りが必要な方)、電動(手は使えないが判断力は保たれている方)、座位保持装置(変形や拘縮が強く、既製品では支えられない方。オーダーメイド)があります。 ティルトとリクライニングの違いは、ティルトとリクライニングは別のものに、選ぶ順番はティルトは上位互換ではないに書きました。
申し送りで、こう言う
「車いすの足のところに、すねが当たったみたいです」
「横のやつが外れてました」
「倒すやつ、ちょっと倒しておきました」
→ 次の人が、どこを見ればいいか分かりません。
「右のフットサポートの外側の角に、すねが当たった可能性。角をなでると、カバーがはがれていました」
「左のアームサポートのロックが外れていました。戻して、引いて確認しました」
「ティルトを、指定の30度に戻しました」
→ 次の人が、同じ場所を見られます。
記録に書くときは、部品の名前+左右+どの部分(角・縁・ネジの頭・レバー)まで。 「たぶんフットサポート」と原因を決めて書くのではなく、「原因は特定できず。右フットサポートの角にカバーをつけた」と、推測と、やった事実を分けて書きます。書き方はあざの記録の書き方に。
跳ね上げ式・着脱式の部品は、手順を声に出すと忘れません。「フットサポート、上げます」「アームサポート、戻します」。 声に出すと、周りも気づきます。外国人職員にも、この言い方をそのまま教えてください。 Hãy nói thành tiếng: "Tôi nâng chỗ để chân lên", "Tôi hạ tựa tay xuống".
まとめ
- 名前は、事故を見つけるための道具。「足のところ」では、次の人が同じ場所を見られない
- 13の部品と、事故で関係するところを対で覚える。すね → フットサポート・ブレーキ、ひじ → アームサポート、おしり → シートと角度
- 機種は、まず4つの分け方。こげる/こげないが座れる/座れない/特別な理由
- 申し送りと記録は、部品の名前+左右+どの部分まで
- 跳ね上げ式・着脱式は、手順を声に出す
- この表を詰所に貼って、チームの共通の言葉にする
やさしい 日本語(にほんご)
1 車(くるま)いすの 部品(ぶひん)の 名前(なまえ)を 覚(おぼ)えます
◎ 「足(あし)の ところ」では、つたわりません。
◎ 名前が わかると、「どこが 当(あ)たったか」を 言(い)えます。
2 まず、この 5つ
- フットサポート:足を のせる ところ。すねが 当たるChỗ để chân
- アームサポート:ひじを のせる ところ。ひじ・うでの あざTựa tay
- ブレーキ:止(と)める レバー。いじょうの ときに 見(み)るPhanh
- シート:すわる ところ。ずり落(お)ちMặt ngồi
- バックサポート:せなかを ささえる ところTựa lưng
3 申(もう)し送(おく)りでは、名前で 言います
◎ 「右(みぎ)の フットサポートの かどに、すねが 当たった かもしれません」
⚠ 「足の ところ」「横(よこ)の やつ」は 使(つか)いません。
4 うごかす ときは、声(こえ)に 出(だ)します
◎ 「フットサポート、上(あ)げます」「アームサポート、もどします」
◎ 声に 出すと、わすれません。
Hãy nói thành tiếng: "Tôi nâng chỗ để chân lên", "Tôi hạ tựa tay xuống".
※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。ベトナム語は 参考訳(さんこうやく)です。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。
あわせて読む
根拠にした資料
- 『介護事故防止 実務マニュアル』巻末付録B「車いすの機能べつ 事故リスク早見表」(部品の名前と対訳、機種べつ早見表)、付録C「車いすの選び方と、替えどき」(車いすの種類と向いている方)本のご案内
- 日本産業規格 JIS T 9201(手動車いす)の用語。部品の呼び方はこれに合わせ、現場での呼び方をかっこで添えました
- 車いす各メーカーが公表している取扱説明書(部品の名称・点検項目)
ベトナム語・英語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。