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車いすの部品の名前 ——「あの足のところ」では、伝わらない

「足のところに、すねが当たったみたいです」——申し送りで、こう言われたことはありませんか。 「足のところ」は、フットサポートのことか、レッグサポートのことか、ブレーキのレバーのことか。聞いた人ごとに、思い浮かべる場所が違います。

名前がそろっていないと、申し送りが伝わりません。そしてあざの原因が、見つかりません。 この記事は、車いすの13の部品と6つの機種の名前を、事故とのつながりで整理したものです。日本語・ベトナム語・英語をつけました。

やさしい日本語で読む部品の表をすぐ見る

最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. なぜ、名前がそろっていないと事故が見つからないのか
  2. 13の部品 — 図と、事故で関係するところ
  3. 6つの機種 — 横から見た形で覚える
  4. 申し送りで、こう言う
  5. まとめ

なぜ、名前がそろっていないと事故が見つからないのか

すねにあざがくり返しできる方がいます。原因は、たいてい車いすのどこかが当たっています。 ところが記録には「車いすに当たった?」とだけ書かれている。どこに、どの部品が当たったのかが残らないので、 次の勤務帯の人は、同じ場所を見られません。

名前は、事故を見つけるための道具です。

「フットサポートの角」と書けば、次の人はそこを手でなでます。「足のところ」では、なでる場所が決まりません。

外国人職員や新人にとっては、もう一段むずかしくなります。「横のやつ」「あれ」「そこ」——指さしで通じるのは、その場にいるときだけです。 詰所に部品の名前の図を貼っておくと、チームの共通の言葉になります。この記事の表は、そのまま印刷して使ってください。

13の部品 — 図と、事故で関係するところ

横から見た車いす(自走用の一例。前が左) ⑫ ティルト機構・⑬ リクライニング機構は、ついている機種だけにあります(下の表) ① グリップ(手押しハンドル) ② バックサポート(背もたれ) ⑤ 駆動輪(後輪) ⑥ ハンドリム ⑪ ティッピングレバー ③ アームサポート(ひじ掛け) ④ シート(座面) ⑦ ブレーキ ⑧ レッグサポート ⑨ フットサポート(足台) ⑩ キャスター(前輪)

表の右の列が、この記事のいちばんの中身です。その部品が、どの事故と関係するか。 すねのあざならフットサポートとブレーキ。ひじ・上うでのあざならアームサポート。ずり落ちならシートと角度——見る場所が決まります。

部品(日本語)Tiếng ViệtEnglish事故で関係するところ
① グリップ(手押しハンドル)Tay đẩyPush grip介助者の腰・操作
② バックサポート(背もたれ)Tựa lưngBack support姿勢・ずり落ち・背中の圧
③ アームサポート(ひじ掛け)Tựa tayArm supportひじ・上うでのあざ・移乗
④ シート(座面)Mặt ngồiSeatずり落ち・褥瘡・姿勢
⑤ 駆動輪(後輪)Bánh lớn (bánh sau)Drive wheel手のこすれ・巻き込み
⑥ ハンドリムVành đẩy tayHand rim手の甲・前うでのあざ
⑦ ブレーキ(駐車用)PhanhBrake移乗時の転倒・すねの当たり
⑧ レッグサポート(ふくらはぎ支え)Đỡ cẳng chânLeg supportふくらはぎのあざ・足の落ち込み
⑨ フットサポート(足台・足乗せ)Chỗ để chânFoot supportすね・足の甲のあざ・転倒
⑩ キャスター(前輪)Bánh nhỏ phía trướcCaster段差・つまずき・方向不安定
⑪ ティッピングレバーCần gạt nghiêng xeTipping lever段差越え
⑫ ティルト機構Cơ cấu nghiêng toàn ghếTilt誤嚥・褥瘡・挟み込み
⑬ リクライニング機構Cơ cấu ngả lưngRecline誤嚥・ずり落ち・背中のこすれ

ベトナム語・英語は参考訳です。母語話者による確認は受けていません。声に出して確かめるときは、日本語のほうを使ってください。メーカーによって呼び方が少し違うことがあります(「フットレスト」「アームレスト」など)。

あざの部位から、見る部品が決まります。
すね・足の甲 → フットサポートの角、ブレーキレバー、タイヤの空気圧。
ひじ・上うで → アームサポートの縁とネジの頭、寄りかかり。
おしり・背中 → シートとクッション、角度、背抜き。
くわしい探し方はすねのあざが何度もできる — 車いすのどこが当たっているかに。

6つの機種 — 横から見た形で覚える

細かい種類を覚える必要はありません。まず、この4つの分け方だけ。 ①自分でこげる → 標準型(自走) ②こげないが座っていられる → 介助型 ③座っていられない → ティルト ④特別な理由(血圧・呼吸・股関節) → リクライニング。 あとは、この組み合わせか、寸法を合わせられるようにした版(モジュール型)だと思ってかまいません。

機種見分け方と、向いている方
標準型(自走用)後輪が大きく、ハンドリムがある。背もたれは低め。自分で動かせる方。移動の自立を守る、いちばん良い状態
介助型後輪が小さく、介助者用のブレーキがグリップにある。自分では動かせないが、座位は保てる方。自走できる方をこれに替えると、動く力を奪います
モジュール型座面の高さ・幅・奥行きを工具で調整できる。体格が標準から外れる方、姿勢が崩れる方。ティルトの前に、まずここ。調整は専門職の仕事
リクライニング式背もたれ「だけ」が倒れ、座面は水平のまま。血圧が下がりやすい・呼吸が苦しい・股関節が曲げにくい方。倒すとずり落ちるので、必ず背抜き
ティルト式座面ごと全体が傾き、骨盤の角度は変わらない。体を起こしていられない方、ずり落ちる方、褥瘡のリスクが高い方。倒すと、できることを失います
ティルト+リクライニング両方できる。座位が保てず、飲み込みや呼吸で細かい角度調整が必要な方。使う順番は、ティルトが先、リクライニングが後

このほかに、六輪型(屋内で小回りが必要な方)、電動(手は使えないが判断力は保たれている方)、座位保持装置(変形や拘縮が強く、既製品では支えられない方。オーダーメイド)があります。 ティルトとリクライニングの違いは、ティルトとリクライニングは別のものに、選ぶ順番はティルトは上位互換ではないに書きました。

申し送りで、こう言う

✕ 伝わらない申し送り

「車いすの足のところに、すねが当たったみたいです」
「横のやつが外れてました」
「倒すやつ、ちょっと倒しておきました」

→ 次の人が、どこを見ればいいか分かりません。

〇 伝わる申し送り

「右のフットサポートの外側の角に、すねが当たった可能性。角をなでると、カバーがはがれていました」
「左のアームサポートのロックが外れていました。戻して、引いて確認しました」
「ティルトを、指定の30度に戻しました」

→ 次の人が、同じ場所を見られます。

記録に書くときは、部品の名前+左右+どの部分(角・縁・ネジの頭・レバー)まで。 「たぶんフットサポート」と原因を決めて書くのではなく、「原因は特定できず。右フットサポートの角にカバーをつけた」と、推測と、やった事実を分けて書きます。書き方はあざの記録の書き方に。

跳ね上げ式・着脱式の部品は、手順を声に出すと忘れません。「フットサポート、上げます」「アームサポート、戻します」。 声に出すと、周りも気づきます。外国人職員にも、この言い方をそのまま教えてください。 Hãy nói thành tiếng: "Tôi nâng chỗ để chân lên", "Tôi hạ tựa tay xuống".

まとめ

やさしい 日本語(にほんご)

1 車(くるま)いすの 部品(ぶひん)の 名前(なまえ)を 覚(おぼ)えます

「足(あし)の ところ」では、つたわりません。
◎ 名前が わかると、「どこが 当(あ)たったか」を 言(い)えます。

2 まず、この 5つ

3 申(もう)し送(おく)りでは、名前で 言います

◎ 「右(みぎ)の フットサポートの かどに、すねが 当たった かもしれません
⚠ 「足の ところ」「横(よこ)の やつ」は 使(つか)いません。

4 うごかす ときは、声(こえ)に 出(だ)します

◎ 「フットサポート、上(あ)げます」「アームサポート、もどします
◎ 声に 出すと、わすれません。 Hãy nói thành tiếng: "Tôi nâng chỗ để chân lên", "Tôi hạ tựa tay xuống".

※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。ベトナム語は 参考訳(さんこうやく)です。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。

この表を、詰所に貼ってください

部品の名前がそろうと、申し送りが変わります。あざの部位べつの集計表と、ボディマップは様式のページにあります。登録は要りません。

様式を見る → 困りごとから調べる

根拠にした資料

個人の経験や、特定の施設の事例ではありません。次の資料と、当研究所が編集している実務マニュアルをもとに整理しています。
  • 『介護事故防止 実務マニュアル』巻末付録B「車いすの機能べつ 事故リスク早見表」(部品の名前と対訳、機種べつ早見表)、付録C「車いすの選び方と、替えどき」(車いすの種類と向いている方)本のご案内
  • 日本産業規格 JIS T 9201(手動車いす)の用語。部品の呼び方はこれに合わせ、現場での呼び方をかっこで添えました
  • 車いす各メーカーが公表している取扱説明書(部品の名称・点検項目)
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 部品の呼び方はメーカーによって異なることがあります。車いすの選定・調整は、理学療法士・作業療法士・福祉用具専門相談員・医師の評価によります。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。
ベトナム語・英語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。