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ティルトとリクライニングは別のもの ——順番を間違えると、ずり落ちと誤嚥が両方増える

「倒す」と一言で言っていませんか。 リクライニングは、背もたれ「だけ」が倒れます。ティルトは、座面と背の角度を保ったまま、全体が傾きます。 この2つは、体に起きることが正反対です。

混同していると、ずり落ちと誤嚥が、どちらも増えます。 そして、どちらの場合も、角度を変えたあとに「背抜き・尻抜き」をしないと、背中とおしりに、あざと褥瘡ができます。 この記事は、2つの違いと、両方ついている機種の正しい順番、角度を変えたあとの10秒の手順をまとめたものです。

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最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 何が違うのか — 骨盤の角度が変わるか、変わらないか
  2. 両方ついている機種の、正しい順番
  3. 背抜き・尻抜き — 10秒で、あざと誤嚥の両方を防ぐ
  4. ティルトの方の食事介助 — 12の手順
  5. やってはいけないこと
  6. まとめ

何が違うのか — 骨盤の角度が変わるか、変わらないか

 体に起きること
リクライニング
背もたれ「だけ」が倒れる。座面は水平のまま
背中と背もたれがこすれて「ずれる」。骨盤が後ろに倒れ、仙骨座り・ずり落ちになる。あごが上がる。→ 角度を変えたら、必ず背抜き・尻抜き
ティルト
座面と背の角度を保ったまま、全体が傾く
骨盤の角度が変わらない。だからずり落ちにくい。まずティルトで骨盤を安定させる——それが先

リクライニングは「ずれる」。ティルトは「ずれない」。違いはこれだけです。

ただし、ティルトも倒せば頭は後ろに落ちます。枕で後頭部を支えなければ、倒すこと自体が誤嚥の原因になります。

リクライニングは、ずり落ち対策の道具ではありません。血圧が下がりやすい、呼吸が苦しい、股関節が曲げにくい、経管栄養で角度が必要——こうした理由で使うものです。 ずり落ちる方をリクライニングで倒すと、かえってずり落ちます。 どの機種を、どの順番で考えるかはティルトは上位互換ではないに書きました。

両方ついている機種の、正しい順番

✕ いちばんよくあるまちがい

リクライニングだけを先に倒す。

→ 体が前にずれて仙骨座りになり、あごが上がります。誤嚥もずり落ちも、両方増えます。倒したのに、かえって危なくなります。

〇 正しい順番

ティルトが先、リクライニングが後。戻すときも、ティルトを先に戻してから。

→ 骨盤が動かないので、体がずれません。チームで順番をそろえることが、いちばんの対策です。

角度は「何度」ではなく「何が弱いか」で決めます。倒せば倒すほど安全、ではありません。 倒すと、食べ物が見えなくなり、自分で食べる機会も奪われます。原則は「安全が確保できる範囲で、できるだけ起こす」。 その方の角度は看護師・ST・栄養士と決めて、車いすの背に「30度」とラベルを貼るのがいちばん確実です。担当者の感覚で角度が変わることが、いちばん危険な状態です。

背抜き・尻抜き — 10秒で、あざと誤嚥の両方を防ぐ

角度を変えると、背中と背もたれの間、おしりと座面の間に「ずれ」がたまります。 これを抜くのが背抜き・尻抜きです。

やること
1角度を変えたあと、上体を少し前に起こす(または横に傾ける)
2背中と背もたれの間に手を入れて、上から下へすべらせ、ずれを抜く
3おしりの下にも手を入れて、同じようにずれを抜く
4もとの角度に戻す

これをしないと、2つのことが同時に起きます。皮ふがこすれて、背中・おしりに内出血と褥瘡ができる。そして体が前にずれて、あごが上がる(誤嚥)。 背抜きは、あざの対策であり、同時に誤嚥の対策でもあります。10秒で終わります。

おしり・背中のあざが多い方は、角度と背抜きを見てください。 背中のあざが多い方は、誤嚥も起きている可能性があります。同じ「姿勢が崩れている」という原因が、口では誤嚥として、皮ふではあざとして現れます。 あざの側からは原因のわからないあざが増えるとき、まず見る5つのことに。

ティルトの方の食事介助 — 12の手順

ティルト車いすの方は、ふつうの車いすの方より、食事のリスクが高くなります。理由は3つ。 そもそも飲み込む力が弱いからティルトを使っている。角度を職員が決めていて、本人は直せない。倒すと頭が後ろに落ちる。

やること
1覚醒を確認する。傾眠なら始めない
2まずティルトを起こして、深く座り直してもらう(骨盤を立てる)
3足底を接地させる。フットサポートか床に。宙ぶらりんは体幹が安定しない
4ティルトで、決められた角度まで倒す(座面ごと傾ける)
5枕・クッションで後頭部と首の後ろを支える。あごと胸骨の間に、指3〜4本
6背抜き・尻抜きをする
7体が左右に傾いていないか。麻痺側に倒れていないか
8テーブルの高さ。ひじが乗る程度。高すぎると肩が上がる
9介助者は座る。目線を同じか低い位置に
10食べ物を見せてから運ぶ。倒れていると見えない
11食後、30分〜1時間は起こしたまま。すぐ倒さない
12倒すときも、ティルトを先に戻してから

「30度にしたから安全」ではありません。「30度+あごを軽く引く」で、はじめて安全です。
倒すと、頭は背もたれと同じ角度まで後ろに落ちます。すると あごが上を向き、口からのどまでが一直線になります。 後頭部を枕で支えて、あごと胸の間に指3〜4本分——うなずくときの あごの位置です。体を前かがみにする、という意味ではありません。 Khi ngả ghế, PHẢI dùng gối đỡ sau gáy. Nếu không, đầu ngửa ra sau và càng dễ sặc hơn.

立ったまま上から食べさせると、利用者さんはあなたの顔を見ようとして あごを上げます。 枕をどれだけ工夫しても無駄になります。座るのに3秒。それで誤嚥の確率が変わります。いすを人数分、食堂に置いておいてください。 むせない誤嚥のことはむせない誤嚥(不顕性誤嚥)に。

やってはいけないこと

状態起きること
倒したまま長時間仙骨・尾骨・背中に圧が集中。褥瘡と内出血の原因。→ 2時間ごとに角度を変える/起こす
背抜きをしていない皮ふがこすれ続ける。おしり・背中のあざは、ここからできていることがある
ずり落ちたまま足がフットサポートに乗り上げてすねに当たる。同時にあごが上がる
アームサポートに寄りかかる傾いた側のひじ・上うでにあざができる

まとめ

やさしい 日本語(にほんご)

1 「たおす」は、2つ あります

リクライニング:せなかの ところ だけが たおれます。→ 体(からだ)が ずれます。
ティルト:いす ぜんぶが かたむきます。→ 体は ずれません。

2 じゅんばん

ティルトが 先(さき)。リクライニングは あと。
⚠ リクライニングを 先に たおすと、体が 前(まえ)に ずれて、あごが 上(あ)がります。

3 たおしたら、「背抜(せぬ)き」を します

◎ せなかと いすの あいだに 手(て)を 入(い)れて、上から 下へ すべらせます。おしりも 同(おな)じ。
10秒(びょう)で おわります。あざと 誤嚥(ごえん)を、どちらも ふせぎます。 Sau khi đổi góc ngả, phải "rút lưng, rút mông" — chỉ mất 10 giây.

4 たおす ときは、まくらも

まくらが ないと、あごが 上がります。あごと むねの あいだに、指(ゆび)3〜4本(ほん)。
角度(かくど)は、じぶんで きめません。きまった 角度に します。いすに 書(か)いて あります。

5 ごはんの とき

おこして、深(ふか)く すわり直(なお)してから、きまった 角度に たおします。
◎ あなたは すわって 介助(かいじょ)します。
⚠ ごはんの あと、すぐ たおしません。30分は おこした まま。

※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。ベトナム語は 参考訳(さんこうやく)です。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。

角度を「決めて、全員で守る」ために

その方の角度を車いすの背にラベルで貼る。食後のむせ・ガラガラ声・食事時間・微熱を2週間記録して、ミールラウンドを提案する。記録の紙は様式のページにあります。

様式を見る → 困りごとから調べる

根拠にした資料

個人の経験や、特定の施設の事例ではありません。次の資料と、当研究所が編集している実務マニュアルをもとに整理しています。
  • 『介護事故防止 実務マニュアル』巻末付録A「食事の姿勢/介助レベルべつの誤嚥リスク」(角度の決め方、頸部前屈位、ティルトとリクライニングの違い、背抜き・尻抜き、ティルト車いすでの食事介助の手順)本のご案内
  • 車いす各メーカーが公表している、ティルト・リクライニング機構の取扱説明書(操作の順序、挟み込みの注意)
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 角度・時間・指の本数は、すべて目安です。実際の角度・食形態・用具の選定は、医師・歯科医師・言語聴覚士・理学療法士・作業療法士・管理栄養士・福祉用具専門相談員の評価によります。必ず多職種で決め、記録に残してください。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。