フットサポート・アームサポートの型べつリスク ——便利な型ほど、事故の種類が増える
同じ「車いす」でも、足台とひじ掛けの作りで、事故の出方が変わります。 固定式は、移乗のたびにすねが当たります。跳ね上げ式・着脱式は便利ですが、戻し忘れ・付け忘れ・ロック不完全・挟み込みという、固定式にはない事故が加わります。
だから、手順を声に出すことが効きます。「フットサポート、上げます」「アームサポート、戻します」。 この記事は、型べつに起きやすい事故と対策、そして毎日1分・月1回15分の点検表をまとめたものです。
フットサポート(足台)— 4つの型
固定式(外れない)
起きやすい事故:移乗のたびに すねが当たる(避けられません)。足の甲が当たる。
- 角と縁にスポンジカバー+テープ
- 移乗時は足を必ず下ろしてから
- 車いすを30度の角度で寄せる
- すねのあざが続くなら、着脱式への変更を検討
跳ね上げ式(上に上がる)
起きやすい事故:戻し忘れ → 足が床を引きずる。跳ね上げた金具にすねが当たる。指を挟む。
- 移乗のたびに跳ね上げる、を手順にする
- 座ったら必ず戻す(引きずり防止)
- 跳ね上げるとき、手の位置を確認(挟み込み)
- 跳ね上げた状態の金具の位置を、手で確かめる
着脱式(外して置ける)
起きやすい事故:付け忘れ → 足が落ちて引きずる。置き場所につまずく。ロック不完全で走行中に脱落。
- 外したら、決めた場所に置く(床に置かない)
- 付けたら、必ず引いてロックを確認
- 「外した/付けた」を声に出す
- 左右がそろっているか、毎回見る
エレベーティング(上げられる)
起きやすい事故:ふくらはぎ・かかとの圧迫。下ろすときの膝の痛み。
- レッグサポートの高さと角度
- かかとが浮いていないか
- ゆっくり下ろす(急に下ろすと痛みます)
すねのあざが多い方は、まずフットサポート。目で見ても分かりません。角と縁を手でなでてください。 そしてタイヤの空気圧。抜けると車体が下がり、当たる高さが変わります。 探し方はすねのあざが何度もできる — 車いすのどこが当たっているかに。
アームサポート(ひじ掛け)— 4つの型
固定式
起きやすい事故:横移乗ができない → 抱え上げになる。抱え上げ=わき・上うでのあざ。ひじ・前うでが当たる。
- スライディングボードが使えません。横移乗が必要な方には向きません
- 機種の変更を検討する。これは環境の問題です
- 縁とネジの頭を、手でなでて確認
跳ね上げ式
起きやすい事故:跳ね上げたまま座らせる → 横に倒れる。指・腕を挟む。戻し忘れ。
- 移乗が終わったら必ず戻す
- 戻すとき、手と腕の位置を見てから
- ロックがかかったか、押して確認
- 傾く方は、跳ね上げたまま放置しない
着脱式
起きやすい事故:付け忘れ → 横から転落。ロック不完全 → 体重をかけて外れる。
- 付けたら必ず上に引いて確認
- 外したら、決めた場所に置く
- アームサポートに体重をかけて立つ方は、特に注意
高さ調整式
起きやすい事故:高すぎ → 肩が上がる。低すぎ → 体が傾く。
- ひじが自然に乗る高さに
- 傾く方は、傾く側を少し高くすると安定することがあります(専門職と相談)
抱え上げの移乗で、わき・上うでにあざができる仕組みはわき・上うでのあざとわきをつかまない移乗に。 固定式しかないときの補い方は理想の車いすがないとき、何で補うかに書きました。
声に出す — 便利な型の事故は、これで減る
「跳ね上げ式・着脱式」は、便利ですが、事故の種類が増えます。
固定式にはない事故——戻し忘れ・付け忘れ・ロック不完全・挟み込み——が加わります。だから、手順を声に出すことが効きます。
フットサポートを上げて、移乗して、そのまま押していく。
→ 足が床を引きずっていても、本人も周りも気づきません。戻し忘れは、黙っているから起きます。
「フットサポート、上げます」
「アームサポート、戻します。ロック、確認」
「フットサポート、戻しました」
→ 声に出すと、忘れません。そして周りも気づきます。
外国人職員にも、新人にも、この言い方をそのまま教えてください。部品の名前は車いすの部品の名前に。 Hãy nói thành tiếng: "Tôi nâng chỗ để chân lên", "Tôi hạ tựa tay xuống".
毎日1分・月1回15分の点検表
毎日の分は、その方に座っていただく前に、1分で終わります。月1回の分は、全台まとめて15分。
毎日(座っていただく前に)
| 見ること | |
|---|---|
| 1 | ブレーキが効くか。押して確認。効かない=タイヤの空気が抜けていることが多い |
| 2 | フットサポートが左右そろって付いているか/ロックされているか |
| 3 | アームサポートが戻してあるか/ロックされているか(引いて確認) |
| 4 | クッションが正しい向きで入っているか(裏返しになっていないか) |
| 5 | 座面・背もたれに異物がないか(リモコン・タオル・食べこぼし) |
| 6 | ティルト・リクライニングが、その方の指定角度になっているか |
| 7 | 座ったあと:足底が接地しているか |
| 8 | 座ったあと:深く座れているか(仙骨座りになっていないか) |
| 9 | 座ったあと:体が左右に傾いていないか |
月1回(全台まとめて)
| 見ること | |
|---|---|
| 1 | タイヤの空気圧。抜けると車体が下がり、ブレーキが効かず、すねが当たります |
| 2 | すべての角・縁・ネジの頭を、手でなでる。目で見るだけでは分かりません |
| 3 | カバー・パッドの破れ・はがれ |
| 4 | ネジのゆるみ(アームサポート・フットサポート・背もたれ) |
| 5 | ティルト・リクライニングの動きが固くないか・異音がないか |
| 6 | クッションのへたり(へたると褥瘡と ずり落ちが増えます) |
| 7 | キャスターにゴミ・髪の毛が巻きついていないか |
| 8 | ブレーキの効き(全台) |
| 9 | モジュール型:設定が記録どおりか |
| 10 | その方の体格に合っているか(体重が変わっていないか) |
この点検は、あざの対策として、いちばん費用対効果が高い作業です。 月の集計で「すねのあざが多い」と出たら、まずこれを全台やってください。15分で、翌月の数字が変わります。 使っていない台も一緒に見ると、倉庫に眠っている車いすの突き合わせもできます。
まとめ
- 固定式は、すねが当たる・横移乗ができない。便利な型は、戻し忘れ・付け忘れ・ロック不完全・挟み込みが加わる
- フットサポートの角と縁は手でなでる。カバーをつける。足を下ろしてから移乗
- 着脱式は付けたら引いて確認。外したら決めた場所に
- 跳ね上げ式は戻すとき手と腕の位置を見る。戻したらロックを確認
- 手順を声に出す。「フットサポート、上げます」「アームサポート、戻します」
- 毎日1分・月1回15分の点検。タイヤの空気圧と、角を手でなでることから
やさしい 日本語(にほんご)
1 足台(あしだい)と ひじかけには、型(かた)が あります
◎ うごかない 型:すねが 当(あ)たります。→ かどに カバー。足(あし)を 下(お)ろしてから 立(た)つ。
◎ 上(あ)がる 型・はずれる 型:べんりです。でも、もどし忘(わす)れ・つけ忘れ・ロックが かかって いない・指(ゆび)を はさむが おきます。
2 声(こえ)に 出(だ)します
◎ 「フットサポート、上げます」
◎ 「アームサポート、もどします。ロック、かくにん」
◎ 声に 出すと、わすれません。まわりの 人(ひと)も 気(き)づきます。
Hãy nói thành tiếng: "Tôi nâng chỗ để chân lên", "Tôi hạ tựa tay xuống".
3 すわる 前(まえ)に、1分(ぷん)で 見(み)る
- ブレーキが きくか。おして たしかめる
- フットサポートが 右(みぎ)も 左(ひだり)も ついて いるか
- アームサポートが もどって いるか。ひっぱって たしかめる
- クッションの 向(む)きは 正(ただ)しいか
- すわった あと、足が ゆかに つくか。かたむいて いないか
4 月(つき)に 1回(かい)、手(て)で なでます
◎ かど・ふち・ねじの 頭(あたま)を、手で なでます。目で 見ても わかりません。
◎ タイヤの 空気(くうき)も 見ます。空気が へると、ブレーキが きかなく なります。
※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。ベトナム語は 参考訳(さんこうやく)です。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。
あわせて読む
部位べつに数えると、どの部品を見るかが決まります。ボディマップと月の集計表は様式のページにあります。登録は要りません。
様式を見る → あざのリスクを調べる根拠にした資料
- 『介護事故防止 実務マニュアル』巻末付録B「車いすの機能べつ 事故リスク早見表」(フットサポート・アームサポートの種類べつ、車いすの点検チェックリスト)本のご案内
- 車いす各メーカーが公表している取扱説明書(フットサポート・アームサポートの着脱・ロックの確認、日常点検の項目)
- 日本産業規格 JIS T 9201(手動車いす)の用語
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。