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ティルトは上位互換ではない ——替えると失う6つのこと

「倒せるほうが、良い車いす」ではありません。 ずり落ちる方をティルトに替えると、その場は落ち着きます。だから安易に選ばれます。 でも、倒すたびに、その方ができていたことを1つずつ失っていきます。

車いすを替えるときには、順番があります。クッション → 寸法 → 支え → そこで、はじめてティルト。 いきなりティルトに移すのは、いちばん多いまちがいです。この記事は、その順番と、替えると何を失うのか、失わないための工夫をまとめたものです。

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最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 選ぶ順番 — いきなりティルトにしない
  2. ティルトに替えると、失う6つのこと
  3. ✕ こういう替え方/〇 こういう替え方
  4. ティルトを使いながら、失わないための工夫
  5. 状態べつ 早見表 — まず考える車いす
  6. まとめ

選ぶ順番 — いきなりティルトにしない

姿勢が崩れてきたとき、この順番で考えます。飛ばさないでください。

順番見ること
1 まず、座り方とクッションいちばん多い原因はこれです。深く座れていない/クッションがへたっている/裏返しに入っている/体に合っていない。クッションを替えるだけで、ずり落ちが止まることがよくあります。ここを飛ばして車いすを替えると、新しい車いすでも同じことが起きます
2 次に、寸法(モジュール調整)座幅・座の奥行き・座面の高さ・背もたれの高さ・アームサポートの高さ。体重が変わった方、拘縮が進んだ方は、寸法が合わなくなっています。介護職の仕事は、指とこぶしで測って「合っていない」と気づき、報告すること。調整は福祉用具専門相談員・リハビリ職に
3 座位保持のクッション・支えを足す骨盤を支えるクッション、体側のパッド、テーブル(前方の支え)。「倒す」前に「支える」で解決できないかを考える。リハビリ職に相談
4 ここで、はじめてティルト「体幹を起こしていられない」「支えても仙骨座りになる」「座っていられる時間が30分もたない」——この段階になって、はじめてティルトです。倒す角度は、必要な最小限に
5 リクライニングは、理由が違う血圧が下がりやすく途中で横になる必要がある/呼吸が苦しい/股関節が曲がりにくい/経管栄養で角度が必要。ずり落ち対策でリクライニングを選ぶのは、まちがいです。倒すとかえってずり落ちます

「とりあえずティルトに替えておこう」が、いちばん多いまちがいです。

原因がクッションだったなら、ティルトにしても根本は直っていません。そして、その方は自分で動く機会を失います。1と2に15分かければ、その方の1年が変わります。

モジュール型の調整は、工具でネジを止め直す作業です。職員がその場で直すものではありません。ネジがゆるむと、走行中の脱落につながります。 気づいて報告するところまでが、介護職の仕事です。寸法の測り方は車いすの寸法が合っているか、指とこぶしで測るに、クッションのことは座面クッションが合っていないと、何が起きるかに書きました。 Điều chỉnh xe lăn module là việc của chuyên viên. Nhân viên chăm sóc chỉ cần phát hiện và báo cáo.

ティルトに替えると、失う6つのこと

ティルトに替えることは、安全を得るかわりに、何かを手放すことです。 これは「ティルトを使うな」という話ではありません。必要な方には、必要です。 でも、失うものを知らずに替えると、必要のない方まで倒してしまいます。

失うものどうなるか
① 自分でこげなくなるティルト式は重く、後輪も小さいものが多い。移動が完全に人まかせになる
② まわりが見えなくなる倒すと視線が天井を向く。人と目が合わない。話しかけられる回数が減る
③ 自分で食べにくくなるテーブルに近づけない/手が届かない/食べ物が見えない
④ 離床の時間が減る大きく重いので、居室から出す回数が減る。「倒しておけばいい」になりがち
⑤ 同じ姿勢が続く自分で座り直せないので、圧が同じ場所にかかり続ける(褥瘡・内出血)
⑥ 「動かない人」になるまわりの職員も、そう扱うようになる。ここがいちばん怖いところです

✕ こういう替え方/〇 こういう替え方

✕ こういう替え方

「ずり落ちるから、ティルトにしよう」
「そのほうが安全だから」
「倒しておけば落ちないから」
「みんなティルトだから」

→ クッションで直ったかもしれません。そして、その方はもう自分では動けません。

〇 こういう替え方

「クッションを替えて2週間みたが、まだ30分でずり落ちる」
「寸法も合わせたが、体幹が保てない」
「仙骨に赤みが出てきた」

→ だからティルトを検討したい。記録があるから、専門職も動けます。

判断に迷ったときの、ひとつの問い。
「この変更は、その方が今できていることを、何か1つでも奪っていないか。」
奪うのなら、それに見合うだけの理由(褥瘡・誤嚥・転落の危険)があるか。チームで言葉にして、記録に残してください。 それが、あとで「なぜこの車いすなのか」をご家族にも監査にも説明できる根拠になります。

ティルトを使いながら、失わないための工夫

ティルトとリクライニングの使い分けと、倒したあとの背抜き・尻抜きはティルトとリクライニングは別のものに。 ティルトの方の食事介助の12手順も、そこにあります。

状態べつ 早見表 — まず考える車いす

その方の状態まず考える車いす
自分でこげる/座位が保てる標準型(自走)。替えない。こげる力を守る
こげないが、座位は保てる介助型(+合うクッション)
体格が標準から外れる/姿勢が少し崩れるモジュール型で寸法を合わせる
ずり落ちる・仙骨座りになるまずクッションと座り直し → だめならモジュール → だめならティルト
体幹を起こしていられない/頭が保てないティルト式(+ヘッドサポート)
血圧低下・呼吸苦・股関節が曲がらないリクライニング式
座位保持困難+嚥下や呼吸で角度調整が必要ティルト+リクライニング
変形・拘縮が強く、既製品で支えられない座位保持装置(オーダーメイド)。リハビリ職・専門相談員へ
手は使えないが、判断力は保たれている電動(施設のルールと安全確認が必要)

「自分でこがなくなった」→「介助型に替えよう」——ここだけは、順番を逆にしないでください。 こげなくなった理由が、タイヤの空気や座面の高さだったことがあります。介助型に替えたら、その方は二度と自分では動けません。 くわしくは車いすの替えどき 16のサインの12番に。

まとめ

やさしい 日本語(にほんご)

1 ティルトは、「いい 車(くるま)いす」では ありません

⚠ たおすと、その 人(ひと)が できて いた ことが、へります。
 じぶんで うごく。まわりを 見(み)る。じぶんで 食(た)べる。人と 話(はな)す。

2 ずり落(お)ちる ときは、この じゅんばん

①と ②を とばしません。

3 あなたが すること

「あって いない かも」と 気(き)づいて、報告(ほうこく)します。
◎ 車いすを 直(なお)すのは、専門(せんもん)の 人の しごとです。あなたは 直しません。 Điều chỉnh xe lăn là việc của chuyên viên. Bạn chỉ cần phát hiện và báo cáo.

4 ティルトの 人にも

ごはんと レクの ときは、おこします。
◎ 2時間(じかん)に 1回(かい)、角度(かくど)を かえます。
◎ 話す ときは、目(め)の 高(たか)さに まわりこみます。

※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。ベトナム語は 参考訳(さんこうやく)です。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。

「クッションを替えて2週間みた」を、記録に残す

ずり落ちた回数、座り直した回数、座っていられた時間。2週間の数字があると、専門職の対応が変わります。記録の紙は様式のページにあります。

様式を見る → 困りごとから調べる

根拠にした資料

個人の経験や、特定の施設の事例ではありません。次の資料と、当研究所が編集している実務マニュアルをもとに整理しています。
  • 『介護事故防止 実務マニュアル』巻末付録C「車いすの選び方と、替えどき」(選ぶ順番、状態べつ早見表、倒すと何を失うのか、失わないための工夫)本のご案内
  • 車いす・クッション・装具の各メーカーが公表している取扱説明書と、適合の考え方
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 機種の適応は一般的な説明です。実際の選定・調整は、理学療法士・作業療法士・福祉用具専門相談員・医師の評価によります。必ず多職種で決め、記録に残してください。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。