わきをつかまない — 手を置く場所
立ち上がりを助けようとして、わきの下に手を入れて引き上げる。
これをやると、点に力がかかり、丸いあざが残ります。 それは赤ゾーンとして扱われ、虐待を疑われる形のあざです。
さらに、肩を痛める・脱臼させる危険もあります。麻痺のある側は、とくにそうです。
支える場所を、面に変える
✕ わきに手を入れて引き上げる
点に力がかかり、丸いあざ(指の跡)が残ります。
これは赤ゾーンとして扱われ、虐待を疑われる形です。
肩を痛める・脱臼させる危険もあります。
〇 面で支える
肩甲骨のあたりと、骨盤(腰骨)を、手のひら全体で。
ここは骨がしっかりしていて、力を受けても痛くありません。
そして自分の体に引き寄せる。腕で引かない。
やりがちなこと/かわりにやること
| ✕ やりがち | 〇 かわりに |
|---|---|
| わきの下に手を入れて引き上げる | 肩甲骨と骨盤を面で支える。または立ち上がりを待つ |
| 手首・前うでをつかんで引く | 前うでの下に手を添える。引かずに、方向だけ示す |
| ズボンのベルト通しをつかんで引き上げる | 皮ふを引っぱり、下着が食い込みます。移乗ベルトを使う |
| 肩を抱えて、腰をひねって回す | 足ごと向きを変える。ひねらない |
| 「せーの」で一気に持ち上げる | 本人におじぎをしてもらってから、前へ重心を移す |
| 本人の腕を職員の首にかけさせる | 職員が首を痛めます。肩に手を置いてもらうまでに |
| ひとりで無理をする | 応援を呼ぶ。呼べることが技術です |
なぜ、わきのあざが「赤ゾーン」なのか
あざは、部位によって意味が変わります。わき・上うでは、自分でぶつけてできる場所ではありません。 だから「誰かにつかまれた跡ではないか」と見られます。
これは職員を疑うための分類ではなく、ひとりで判断しないための分類です。 くわしくは わき・上うでのあざは、なぜ「赤ゾーン」なのか をご覧ください。
介助でついた可能性があるなら、そう書いてください。 「移乗介助中に、わきを支えた際についた可能性がある」と書いてあれば、それは事実の記録です。 書いていないほうが、あとで問題になります。
腰の負担を減らす5つの基本
| やること | ねらい | |
|---|---|---|
| 1 | ベッドの高さを上げる | 中腰でやらない。調整の手間を惜しまない(終わったら下げる) |
| 2 | 近づく | 体を離して腕を伸ばさない。自分の体に引き寄せる |
| 3 | 足を開く・ひざを使う | 腰を曲げるのではなく、ひざを曲げる。足の向きを進む方向へ |
| 4 | ねじらない | 腰をひねる動きが、いちばん腰を壊します。足ごと向きを変える |
| 5 | 持ち上げない | すべらせる・向きを変える。用具を使う |
用具を使えば、つかまずに済みます
| 用具 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| スライディングボード (移乗ボード) | 座ったまま、横に移れる方。アームサポートが上がる/外れる車いすが必要 | 高さをほぼ同じに(わずかに下り坂)/おしりの下にしっかり差し込む/皮ふをこすらない/使い方は実際に習ってから |
| スライディングシート | ベッド上での上方移動・体位変換 | 引きずらずに滑らせる(摩擦=内出血・褥瘡)/使ったら必ず抜く(敷いたままだと滑り落ちます) |
| 移乗用ベルト | ある程度立てるが、支えが必要な方 | 腰骨の上でしっかり締める(ゆるいとずれます)/ベルトを持って引き上げない。支える・方向を示すために使う/皮ふが挟まっていないか |
| リフト(吊り具) | 立てない方・全介助の方。職員の腰を守るいちばん確実な方法 | スリングのサイズと種類が合っているか/ふちが内もも・わきに食い込んでいないか/上げる前に手足の位置を確認/吊っている間、目を離さない/研修を受けてから |
| スタンディングリフト | 少し立てるが、立位が続かない方 | 足の位置とひざ当ての高さ/腕の力が必要な機種もあります |
| 手すり・ベッド用グリップ | 自分でつかまって立てる方 | 固定されているか、引いて確認/サイドレールは体重をかける物ではありません。手すりが要るならグリップを |
用具は「あるのに使われていない」ことがよくあります。理由はたいてい3つ。
①置き場所が遠い ②使い方を習っていない ③時間がかかると思っている。
どれも職員のやる気の問題ではありません。
置き場所を近くする、研修をする、実際は速いことを見せる。これは施設が用意する側の仕事です。
まとめ
- わきに手を入れて引き上げない。指の跡は赤ゾーンのあざ
- 肩甲骨と骨盤を、手のひら全体で支える
- 手首をつかまない。ベルト通しを引っぱらない
- 本人の腕を職員の首にかけさせない
- ひねらない・持ち上げない・近づく
- 用具を使えば、つかまずに済む
- 介助でついた可能性があるなら、そう書く
あわせて読む
根拠にした資料
個人の経験ではなく、公表されている資料をもとに整理しています。
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日 基発0618第1号)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 厚生労働省 労働者災害補償保険(労災保険)制度に関する一般向け案内
- 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 介護作業の腰痛予防に関する資料
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。
施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。
手順・寸法・時間は、すべて目安と一例です。
判断に迷うこと、いつもと違うと感じたことは、看護師・医師にご相談ください。
実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。