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断り方

家族に頼まれて線を越えそうになったとき、どう断るか

「ついでに、これもお願いできない?」——訪問介護で、いちばん断りにくい言葉です。

ご家族の分の洗濯、庭の草取り、電球の交換、ペットの世話、ちょっとした買い足し。頼む側に悪気はありません。目の前に人がいて、手が空いているように見えるからです。そして断ると、その場の空気が悪くなります。

この記事は、なぜ断らなくてはいけないのかを、あなたの言葉ではなく制度の言葉で説明できるようにするものです。そして、断り方の型を置きました。「私がだめと言っている」のではなく「そう決まっている」と言えるようになると、断ることは、ずいぶん楽になります。

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最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 断るのは、あなたではなく「計画」です
  2. 頼まれる4つの型と、それぞれの線
  3. 「提供拒否」と、その場の断りは別の話です
  4. 断り方の型 ——3つの文で
  5. 断ったあとに、必ずすること
  6. それでも越えてしまったとき
  7. 断らなくていいこと
  8. まとめ

断るのは、あなたではなく「計画」です

訪問介護は、サービス提供責任者が作った「訪問介護計画」に沿って行うものです。その計画は、ケアマネジャーの居宅サービス計画に沿って作られ、ご本人に説明して同意をもらい、渡してあります。つまり、あなたが今日その家でやることは、あなたが着く前に、ご本人と事業所の間で決まっています。

だから、頼まれたことが計画にないとき、断るのは「あなたの判断」ではありません。「計画にないので、今日はできません。事業所に伝えます」——この文の主語は、計画と事業所です。あなたが冷たいのでも、意地悪なのでもありません。

その場であなたが「いいですよ」と言えるものは、計画に書いてあることだけです。それ以外は、あなたが決めていいことではなく、事業所とケアマネジャーが決めることです。

これは、あなたの権限を小さくする話ではありません。あなたが一人で背負わなくていい、という話です。

頼まれる4つの型と、それぞれの線

頼まれること線はどこか
① ご家族の分
家族の洗濯・調理・家族の部屋の掃除
介護保険の生活援助は、ご本人のためのもの。ご家族の分は、生活援助に含まれません(→掃除はどこまでか)。「同時に一体的に」やることは認められていません。⚠ ただし同居家族がいるからといって、ご本人の生活援助を一律に断ってはいけないのは、別の話です
② 日常ではないこと
草むしり・窓ガラス磨き・大掃除・電球交換の高所作業・ペットの世話
「日常生活の援助」に当たらないものとして、通知に例が挙がっています。頼まれても、介護保険の訪問介護ではできません
③ 計画にはないが、ご本人のこと
今日だけ買い物を足したい・別の部屋も掃除してほしい
中身は生活援助でも、計画にないので、その場では決められません。事業所に持ち帰り、計画の変更が要るかをサービス提供責任者とケアマネジャーが判断します。急ぐなら、その場で事業所に電話
④ やっていいか分からないこと
薬の取り出し・湿布・爪切り・軟膏
できる条件が決まっている行為です(→どこまでやっていいか)。計画に入っていて、条件を満たすならできます。分からなければ、やらずに事業所に電話

①と②は「制度上できない」、③と④は「今日は決められない」。言い方が少し違います。①②は「介護保険ではできないことになっています」。③④は「計画にないので、事業所に確認します」。この区別がつくと、断りが正確になります。

「提供拒否」と、その場の断りは別の話です

「サービスを断ったら、提供拒否になるのでは」と心配する方がいます。ここは整理しておきます。

基準省令にある「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」は、事業者が、利用の申し込みを断ってはいけないという決まりです。解釈通知は、正当な理由の例として①人員がいない ②通常の事業の実施地域の外 ③その他、適切なサービスを提供することが困難な場合を挙げています。要介護度や所得を理由に断ることを禁じるための決まりです。

あなたがその場で「計画にないことはできません」と言うのは、この「提供拒否」ではありません。計画にあるサービスは、きちんと提供しています。計画にないことをしないのは、拒否ではなく、計画どおりです。

逆に、計画にあることを、あなたの判断でやらないのは問題です。「今日は疲れているから調理は省く」「この家は嫌だから早く帰る」——これは計画に反します。断っていいのは計画にないことだけです。

断り方の型 ——3つの文で

型は3つの文です。①受け取る ②理由を制度の言葉で ③次につなぐ。順番を変えないでください。①がないと冷たく、③がないと突き放したように聞こえます。

言い方
① 受け取る「お困りですよね」「そう思われますよね」「お手伝いしたい気持ちはあるんです」——頼んだことを否定しない
② 制度の言葉で介護保険の訪問介護では、ご家族の分はできないことになっているんです」「私の判断では決められなくて、計画にないことは事業所に確認する決まりなんです」——主語は制度・計画・事業所
③ 次につなぐ事業所に伝えて、ケアマネジャーさんと相談してもらいます」「次のときにお返事します」「保険の外のサービスで対応できるか、事業所に聞いてみます」——断って終わりにしない

場面べつの例

頼まれた言い方の例
「息子の分も一緒に洗っといて」「一緒に洗えたら楽ですよね。ただ、介護保険の訪問介護は〇〇さんご本人の分だけ、と決まっていて、ご家族の分は入れられないんです。事業所に伝えて、別の方法がないか聞いてみます
「庭の草、ちょっとだけ」「気になりますよね。草取りは介護保険の生活援助に入らないことになっているんです。ケアマネジャーさんに、地域のサービスや保険外のサービスがないか、事業所から相談してもらいます」
「今日だけ、隣の部屋も掃除して」「今日だけなら、と思われますよね。計画にない場所は、私の判断で足せない決まりなんです。いま事業所に電話して聞いてみますね」——急ぐものは、その場で電話
「薬、シートから出してくれる?」やっていい条件が決まっていて、私がいま確かめられないので、事業所に電話してから、指示のとおりにします」
「前のヘルパーさんはやってくれた」「そうだったんですね。私は計画に書いてあることしかできない決まりで、前の方がどうされていたかは、事業所に確認します」——前の人を否定も肯定もしない
「誰にも言わないから」「お気持ちはありがたいです。ただ、やったことは全部記録する決まりで、書かないことはできないんです」——記録があることを、味方にする

Từ chối bằng 3 câu: ①"Tôi hiểu là khó cho ông/bà" ②"Theo quy định bảo hiểm / theo kế hoạch, tôi không được làm việc này" ③"Tôi sẽ báo cơ sở và trả lời lần sau". Chủ ngữ là quy định, không phải bạn.

断ったあとに、必ずすること

断るのは半分です。残りの半分は、事業所に持ち帰ることです。持ち帰らないと、次の訪問で同じことを頼まれ、次に来る別のヘルパーが同じ場面に立ちます。

「保険外サービス」という出口があります。介護保険でできないことでも、事業所が保険外のサービスとして提供できる場合があります。ただし、訪問介護とは別に契約し、料金を別に請求し、時間を分けて行うのが決まりです。「ついでに」ではできません。案内するのは事業所で、あなたがその場で「有料ならできます」と言うことではありません。

それでも越えてしまったとき

断れずに、やってしまうことはあります。ご家族の洗濯物を一緒に干した。庭の草を少し取った。責めるための項目ではありません。やってしまったあとに、どうするかです。

やってしまったことより、言わなかったことのほうが重い。これは、物を壊したときとまったく同じです。

計画外のことを続けると、それが「当たり前」になり、次のヘルパーが断れなくなります。あなたが言うことで、次の人が守られます。

断らなくていいこと

断ることばかり書いてきましたが、断らなくていいこともあります。ここを間違えると、必要な支援まで止まります。

まとめ

やさしい 日本語(にほんご)

1 ◎ 訪問介護(ほうもんかいご)は、「計画(けいかく)」に 書(か)いて ある ことを します

◎ 計画は、あなたが 来(く)る 前(まえ)に、じぎょうしょと ご本人(ほんにん)で きめて あります。計画に ない ことは、あなたが きめる ことでは ありません。

2 ⚠ よく たのまれる こと

3 ◎ ことわり方(かた)は、3つの 文(ぶん)

「わたしが だめと 言(い)って いる」のでは なく、「そう きまって いる」と 言います。

4 ◎ ことわった あとに、する こと

5 ⚠ やって しまった とき

かくさない。じぎょうしょに 言う。きろくに 書く。やった ことより、言わなかった ことの ほうが 重(おも)いです。

6 ◎ ことわらなくて いい こと

※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。

困りごとから、見る順番をたどれます

「頼まれて断れない」「やっていいか分からない」から入れます。いずれも一例です。事業所の規程と市町村の要領に合わせて読み替えてお使いください。

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根拠にした資料

個人の経験ではなく、公開されている資料をもとに整理しています。
  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第37号) 第9条(提供拒否の禁止)・第10条(サービス提供困難時の対応)・第24条(訪問介護計画の作成)・第19条(サービスの提供の記録)
  • 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」平成11年9月17日 老企第25号(解釈通知) ——「正当な理由」の例(現員から応じきれない/通常の事業の実施地域外/その他適切な提供が困難)、訪問介護計画に沿った実施の管理
  • 厚生労働省「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」平成12年11月16日 老振第76号 ——生活援助に含まれない行為の3区分
  • 厚生労働省老健局振興課 事務連絡「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス及び介護予防訪問介護サービスの生活援助等の取り扱いについて」平成19年12月20日/平成20年8月25日/平成21年12月25日 ——同居家族がいることのみを判断基準として一律に断らないこと
  • 厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」平成30年9月28日 老高発0928第1号・老振発0928第1号・老推発0928第1号・老老発0928第1号(介護保険最新情報 Vol.678) ——保険外サービスは別契約・別料金・会計区分・時間を分けて。同時一体的な提供は認めない
  • 当研究所『介護事故防止 実務マニュアル』
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護・労務・法律の判断を代替するものではありません。 事業所によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。計画の変更・保険外サービスの可否は、事業所とケアマネジャーの判断によります。 実際の対応は、所属事業所の規程および、サービス提供責任者・管理者の指示、そして市町村の定めに従ってください。制度・通知は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。