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生活援助はどこまでか

掃除はどこまでか

「これはやっていいのか」と迷うのは、あなたの経験が足りないからではありません。線が3か所に引かれていて、しかもその3つは理由がぜんぶ違うからです。

床の掃除はできて、窓ガラス磨きはできない。買い物はできて、その家の別の人の分はできない。水やりはできない。——ばらばらに見えますが、3つの区分に分けると、そのまま覚えられます。

そして、いちばん誤解されているのがここです。同居のご家族がいるというだけで、生活援助を断ってはいけません。厚生労働省が3回、同じ内容の事務連絡を出しています。

最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 線は3か所に引かれています
  2. ① 生業の援助にあたるもの
  3. ② その方本人の援助ではないもの
  4. ③ 日常生活の援助ではないもの(草むしり・大掃除・お正月の料理)
  5. 同居の家族がいる場合 ——一律に断ってはいけません
  6. 断り方の型(その場で線を引かない)
  7. やってしまったとき、どうするか
  8. まとめ

線は3か所に引かれています

生活援助に含まれない行為は、平成12年の通知(老振第76号)で3つに分けて示されています。理由が違うので、分けたまま覚えるのがいちばん楽です。

区分どういう理由でだめなのか
① 生業の援助仕事を手伝うことになるから
② 本人の援助でないその方ではなく、家族のためになってしまうから
③ 日常生活の援助でないやらなくても暮らしに支障が出ないか、日常の家事の範囲を超えるから

「贅沢だからだめ」ではありません。「この制度で見るものではない」というだけです。

この言い方の違いは、ご家族に説明するときに効きます。断られた側が責められたと感じないためです。

① 生業の援助にあたるもの

商品の販売、農作業など、その方の仕事を手伝うことになる行為です。

訪問先が農家や商店で、「ついでにこれを」と頼まれる場面があります。手が空いているかどうかの話ではありません。制度としてできないほうに入っています。

② その方本人の援助ではないもの

通知では「主として家族の利便に供する行為、または家族が行うことが適当であると判断される行為」と書かれています。挙げられているのは次のものです。

できないことできる側との違い
利用者以外の方の洗濯・調理・買い物・布団干しその方の分は、できます。分けられるかどうかが分かれ目です
主にその方が使う居室以外の掃除居室・その方が使うトイレ・通り道は、できます
来客の応接(お茶・食事の手配など)
自家用車の洗車・清掃

「分けられるかどうか」で考えると、その場で判断できます。
ご家族の分といっしょに洗う洗濯機は、分けられません。だから対象外です。その方の衣類だけを回すなら、その方の援助です。量の問題ではなく、誰のための行為かです。 Hãy nghĩ theo "có tách riêng được không". Giặt chung với đồ của gia đình thì không tách được. Chỉ giặt đồ của người được chăm sóc thì được.

③ 日常生活の援助ではないもの

ここがいちばん多く聞かれるところです。通知では、さらに2つに分けています。

[1]やらなくても、暮らしに支障が出ないと判断されるもの

できないこと
草むしり訪問介護員が行わなくても日常生活を営むのに支障が生じない」と整理されているもの
花木の水やり
犬の散歩などペットの世話

[2]日常的に行われる家事の範囲を超えるもの

できないこと近いけれど、できる側
家具・電気器具などの移動、修繕、模様替え掃除のために少しどかすのは、掃除の一部です
大掃除窓のガラス磨き、床のワックスがけ日常の掃除機がけ・拭き掃除は、できます
室内外の家屋の修理、ペンキ塗り
植木の剪定などの園芸
正月・節句などのために特別な手間をかけて行う調理ふだんの食事づくりは、できます

分かれ目は「毎日やることか、年に何回かのことか」です。

床を拭くのは毎日のこと。窓ガラスを磨くのは年に何回かのこと。ふだんの煮物は毎日のこと。おせちは年に一度のこと。——この見方で、ほとんどの場面は説明できます。

ただし「一律にこう」とは書かれていません。通知に挙がっているのは例です。実際にどう扱うかは、ケアプランと訪問介護計画に何が位置づけられているか、そして保険者(市町村)の考え方によって変わります。判断に迷うものは、その場ではなく事業所とケアマネジャーに戻してください。

同居の家族がいる場合 ——一律に断ってはいけません

ここは、現場でいちばん誤って伝わっているところです。

同居の家族がいることのみをもって、生活援助を一律・機械的に判断してはならない。

厚生労働省(老健局振興課)は、この内容の事務連絡を平成19年12月20日・平成20年8月25日・平成21年12月25日と、3回出しています。3回出したということは、それだけ現場で「同居家族がいるからだめ」と機械的に断られていた、ということです。

算定の要件そのものは、こう書かれています。

要件中身
原則利用者が一人暮らしであるか、または家族等が障害・疾病等のため、利用者や家族等が家事を行うことが困難な場合
ここが大事「これは、障害、疾病のほか、障害、疾病がない場合であっても、同様のやむを得ない事情により、家事が困難な場合をいうものであること」

つまり、家族が健康であっても「やむを得ない事情」があればよい、と書かれています。仕事で日中いない、遠方から通っている、介護でもう限界に近い——これらは「やむを得ない事情」になり得ます。
ヘルパーが現場で判断することではありませんが、「同居家族がいるから無理です」とその場で言い切らないでください。ケアマネジャーに戻す話です。

もうひとつ、覚えておくといい算定のきまりがあります。
訪問介護計画に位置づけられた内容が、単なる安否確認や健康チェックで、それにともなって若干の身体介護や生活援助を行うだけの場合、訪問介護費は算定できないとされています。「顔を見に行くだけ」の訪問を頼まれたときに、この話が出てきます。

断り方の型(その場で線を引かない)

訪問先では、一人です。その場で線を引く必要はありません。持ち帰る形にしてください。

〇 持ち帰る言い方

私の一存では決められないので、事業所に確認して、次のときに必ずお返事します。

いまの計画に入っていないので、ケアマネジャーさんに相談してみますね。

できない理由をその場で説明しきらなくて構いません。返事をする約束をして、必ず返すことのほうが大事です。

✕ その場で決めてしまう言い方

それは制度でできないことになっています

正しくても、ご家族には断られたとしか残りません。しかも、あとで「できる」と分かったときに、事業所が説明しにくくなります。

今回だけなら」も同じくらい危険です。次から断れなくなります。

外国人のヘルパーの方へ。断るのがいちばん難しい場面です。この2つだけ、そのまま言えるようにしておくと楽になります。
①「すみません、私では決められません。事業所に聞きます。
②「次のとき、お返事します。Hai câu này là đủ: ① "Xin lỗi, tôi không tự quyết định được. Tôi sẽ hỏi công ty." ② "Lần sau tôi sẽ trả lời."

やってしまったとき、どうするか

断りきれずにやってしまうことは、あります。そのときに、いちばんやってはいけないのは「書かないこと」です。

くり返し頼まれるということは、その方の暮らしに、いま手が足りていないということです。

断ることが目的ではありません。「制度の外に、困りごとが残っている」と分かることが目的です。それはケアマネジャーに届けるべき情報です。

まとめ

持ち帰る言い方を、1枚にしてあります

訪問先で頼まれたときに、その場で線を引かずに済ませるための短い言い方だけを並べています。いずれも一例です。事業所の言い方に合わせて書き換えてお使いください。

困りごとから調べる → 様式をダウンロード

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公開されている資料をもとに整理しています。
  • 厚生労働省「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」平成12年11月16日 老振第76号 ——生活援助に含まれない行為の3区分
  • 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準…の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第36号) ——生活援助の算定要件
  • 厚生労働省老健局振興課 事務連絡「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス及び介護予防訪問介護サービスの生活援助等の取り扱いについて」平成19年12月20日/平成20年8月25日/平成21年12月25日
  • 当研究所『介護事故防止 実務マニュアル』第10章 ——全文を公開しています
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。 事業所によって、利用者さんによって、そして保険者(市町村)によって、取り扱いは変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 通知に挙げられているのは例です。個別の可否は、ケアプランと訪問介護計画に位置づけられているか、保険者がどう定めているかによります。 実際の判断は、所属事業所の規程と、ケアマネジャー・保険者の定めに従ってください。制度・通知は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。