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どこまでやっていいか

訪問先で、どこまでやっていいか

先に、いちばん大事なことを書きます。
介護職ができる行為の一覧は、いま1本の通知ではなく、3本の通知でできています。

よく引用されるのは平成17年の通知です。ですが、そこに令和4年12月で多くの行為が足され、さらに令和7年12月で「お薬カレンダーへのセット」「PTPシートからの薬の取り出し」「湿布の貼付」などが足されました。

平成17年の一覧だけを見て「これはできない」と判断すると、いまは正しくありません。この記事は、3本を1枚に並べ直したものです。

最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 通知は3本あります
  2. 平成17年 ——ここが土台です
  3. 「規制の対象とする必要がない」6つ(爪切り・耳垢・浣腸など)
  4. 令和4年12月 ——ここでかなり広がりました
  5. 令和7年12月 ——お薬カレンダー・PTPシート・湿布
  6. それでも医行為になるとき(この但し書きが本体です)
  7. 喀痰吸引・経管栄養は、別のしくみです
  8. 訪問先で迷ったときの順番
  9. まとめ

通知は3本あります

「介護職はどこまでできるのか」を決めているのは、法律の条文ではなく、厚生労働省が出した「解釈についての通知」です。それが、いま3本あります。

いつ何が書いてあるか
平成17年7月26日
医政発第0726005号
土台。体温・血圧・パルスオキシメーター、軽い傷の手当て、薬の使用の介助。そして「規制の対象とする必要がない」6つ(爪切り・口腔ケア・耳垢・ストマ・自己導尿の補助・浣腸)
令和4年12月1日
医政発1201第4号(その2)
介護の現場で実際によくやっている行為が、まとめて整理されました。インスリンの準備と片付け、経管栄養の準備と片付け、陰部洗浄、食事介助、義歯の着脱など
令和7年12月26日
医政発1226第12号(その3)
お薬カレンダーへのセット服薬直前のPTPシートからの取り出し湿布の貼付など

3本まとめた「ガイドライン」も出ています。厚生労働省のサイトに「医行為ではない行為に関するガイドライン」があります。研修で配るなら、通知3本よりこちらのほうが読みやすいはずです。

「前の職場ではだめだと言われた」は、本当にだめとは限りません。

通知が足されているので、数年前の理解のまま止まっていることがあります。逆に、通知にあるからといって、その方に対してやっていいとも限りません(→§6)。

平成17年 ——ここが土台です

「原則として医行為ではないと考えられるもの」として挙げられているのは、次のものです。

できること条件・注意
体温をはかる水銀・電子体温計で腋の下。耳式電子体温計で外耳道
血圧をはかる自動血圧測定器
パルスオキシメーターをつける新生児以外で、入院して治療する必要がない方
軽い傷の手当て軽微な切り傷・擦り傷・やけどなど。専門的な判断や技術が要らない処置。汚物で汚れたガーゼの交換を含む
薬の使用の介助下の3つの条件を全部満たすとき(→次の表)

「薬の使用の介助」の3条件

ここは3つ全部そろって、はじめてできます。1つでも欠けたら、医行為の側です。

この3つを満たすときにできるのは、次の介助です。

できること除かれるもの
皮膚への軟膏の塗布褥瘡(じょくそう)の処置は除きます
皮膚への湿布の貼付→ 令和7年に改めて整理されました(§5
点眼薬の点眼
一包化された内用薬の内服
肛門からの坐薬挿入
鼻腔粘膜への薬剤噴霧

「一包化された」がついていることに注意してください。平成17年の通知では、内服の介助は一包化されたものが前提です。バラの薬をその場で仕分けることは、ここには入っていません。
——ここが、令和7年12月に動いた部分です(§5)。

「規制の対象とする必要がない」6つ

平成17年の通知には、注として6つが並んでいます。訪問先で頼まれることが多いのは、たいていこの6つです。

できること条件(ここが本体です)
爪を切る・やすりをかける爪そのものに異常がなく爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく糖尿病等の疾患にともなう専門的な管理が必要でないとき
口の中をきれいにする重度の歯周病等がない場合の、日常的な刷掃・清拭。歯ブラシ・綿棒・巻き綿子などで、歯・口腔粘膜・舌の汚れを取る
耳垢を取る耳垢塞栓の除去は除きます
ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てる肌に接着したパウチの取り替えは除きます
自己導尿の補助カテーテルの準備、体位の保持など。入れるのは本人
浣腸市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いるもの

「爪切りはできる」ではなく「この条件のときはできる」です。
爪が厚く白く濁っている、周りが赤い、その方が糖尿病である——このどれかがあれば、切りません。気づいたことを記録に残して、看護職員かご家族に伝えてください。切らなかったことも、りっぱな判断です。 Không phải "được cắt móng tay", mà là "được cắt khi đủ điều kiện". Nếu móng dày/đục, quanh móng đỏ, hoặc người đó bị tiểu đường thì KHÔNG cắt. Hãy ghi lại và báo cho y tá hoặc gia đình.

令和4年12月 ——ここでかなり広がりました

令和4年の通知(その2)では、介護の現場で実際によく行われている行為が整理されました。おおまかにいうと「本体の医行為は看護職員がやる。その前後の準備と片付けは介護職ができる」という切り分けです。

場面介護職ができる側(例)
インスリン準備と片付け。実施の声かけ・見守り・記録。血糖値や単位数が医師の指示の範囲内かの確認 ※注射そのものは含みません
持続血糖測定器センサーの貼付、測定値の読み取り
経管栄養準備と片付け ※注入する行為は除きます/経鼻胃管のテープの貼り直し
吸引吸引器の汚水の廃棄、水の補充 ※吸引そのものは別のしくみ(§7
酸素酸素流量の設定、マスクの装着準備 ※酸素が流れる前まで
人工呼吸器位置の変更 ※医師・看護職員の立会いの下で
膀胱留置カテーテル蓄尿バッグの尿を捨てる
日々の介助陰部洗浄/パルスオキシメーターの装着/半自動血圧測定器での血圧測定/軟膏塗布・吸入薬・液剤内服の介助/食事介助(とろみ食を含む)/有床義歯の着脱・洗浄

「食事介助」がここに書かれていることを、覚えておいてください。とろみ食を含めて、介護職ができる行為として整理されています。やっていいことに迷って手が止まるより、やり方に気をつけるほうが、その方の安全に近い場面です。

令和7年12月 ——お薬カレンダー・PTPシート・湿布

いちばん新しい通知(その3)です。訪問介護の場面に直接ひびくものが入りました。

できるようになったこと注意
お薬カレンダーに、一包化された薬をセットする
服薬の直前に、PTPシートから薬を取り出す「服薬直前」です。前もってまとめて出しておくことではありません
皮膚に湿布を貼る鎮痛・消炎の効能をもつものに限ります。麻薬・向精神薬・ステロイド外用剤などは除きます
膀胱留置カテーテルと、未開封・未使用の蓄尿バッグをつなぐ条件が厳しいところです。医師または看護職員の立会いの下で安全に行えることを事前に確認された人が、尿漏れを確認したときや外れたときだけ定期的な交換は医療職が行います

「湿布ならなんでも貼れる」ではありません。薬の種類で線が引かれています。何の湿布かが分からないときは、貼らずに確認してください。箱や説明書を見る、看護職員に聞く、それで待てるものです。

それでも医行為になるとき(この但し書きが本体です)

ここが、この記事でいちばん大事なところです。通知には、一覧のうしろに必ずこの一文がついています。

病状が不安定である等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。

——つまり、行為の名前で決まるのではなく、その方の状態で決まります。同じ「爪を切る」でも、Aさんではできて、Bさんではできない。同じBさんでも、先週はできて、今日はできない。それが正しい読み方です。

訪問介護では、この判断をその場で、一人ですることになります。だから、次の3つを覚えておいてください。

こんなときどうする
いつもと違うやりません。「いつもやっていること」でも、今日の状態が違えば別の話です
分からないやりません。分からないままやることが、いちばん危ないことです
やらなかった必ず記録に残します。「〇〇のため実施せず、△△へ連絡」。やらなかった判断は、書かれてはじめて仕事になります

「やらなかった」を責める事業所は、いい事業所ではありません。やらない判断ができる人のほうが、現場では信用されます。 Nếu thấy "khác mọi khi" hoặc "không rõ" thì KHÔNG làm. Và hãy ghi lại lý do không làm. Không làm cũng là một quyết định đúng.

喀痰吸引・経管栄養は、別のしくみです

痰の吸引と経管栄養は、「医行為ではない行為」の一覧には入っていません。これは別に作られた制度で、研修を受けて、事業所が登録していることが必要です。

項目内容
根拠社会福祉士及び介護福祉士法(附則第4条ほか)。平成24年4月1日から
できる5つ① 口腔内の喀痰吸引(咽頭の手前まで)② 鼻腔内の喀痰吸引(咽頭の手前まで)③ 気管カニューレ内部の喀痰吸引 ④ 胃ろう・腸ろうによる経管栄養 ⑤ 経鼻経管栄養
研修第1号(不特定多数・5行為すべて)/第2号(不特定多数・一部)/第3号(特定の方が対象。その方に必要な行為だけ)
事業所側都道府県への登録が必要。医師の文書による指示、医療関係者との連携、計画書・報告書などの記録の整備

在宅で多いのは第3号研修です。「特定の方」に必要な行為だけを学ぶ形なので、その方が変われば、そのままでは使えません。担当が替わるときは、事業所に確認してください。

訪問先で迷ったときの順番

一人で家にいるときに、長い一覧は開けません。この3つだけ覚えてください。

見ること
① 状態いつもと同じか。皮膚は。熱は。反応は。1つでも違えば、そこで止めます
② 計画その行為が、訪問介護計画に入っているか。入っていないことを、その場の頼まれごとでやりません
③ 記録やったこと・やらなかったこと・連絡したことを書く。次に入る人が、同じ判断をできるように

ご家族に「これもお願い」と言われたときは、断る話ではなく「持ち帰る話」にしてください。
「私の一存では決められないので、事業所に確認して、次に必ずお返事します」——これで十分です。その場で線を引かなくていいのが、訪問介護の楽なところです。
→ くわしくは 掃除はどこまでか にも書きました。

まとめ

その場で確かめる順番を、1枚にしてあります

「いつもと違うか」「計画に入っているか」「記録に残したか」。訪問のまえに開ける形にしています。いずれも一例です。項目は事業所に合わせて書き換えてお使いください。

困りごとから調べる → 様式をダウンロード

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公開されている資料をもとに整理しています。
  • 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」平成17年7月26日 医政発第0726005号
  • 同(その2)令和4年12月1日 医政発1201第4号
  • 同(その3)令和7年12月26日 医政発1226第12号
  • 厚生労働省「医行為ではない行為に関するガイドライン」
  • 厚生労働省「喀痰吸引等制度について」(社会福祉士及び介護福祉士法 平成24年4月1日施行)
  • 当研究所『介護事故防止 実務マニュアル』第3章「誤薬」 ——薬の場面の見る順番について
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 事業所によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 通知の一覧に載っていることが、その方に対してやっていいことを意味しません。病状が不安定であるなど専門的な管理が必要な場合は、医行為とされることがあります。 実際の対応は、所属事業所の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・通知は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。