施設の医師(配置医師)は、何をする人か
◎ 特養には医師を置くことになっています。ただし条文が書いているのは「健康管理と療養上の指導を行うために必要な数」だけです。何人か、常勤かは書いていません。
⚠ だから、施設によって医師の来る頻度がまったく違います。週に何日か来る施設もあれば、月に数回の施設もあります。どちらも条文の中です。
◎ そして急変のときは、施設の医師だけでなく「協力医療機関」というもうひとつの線が、条文で用意されています。
もくじ
ひとことで言うと
◎ 入所者の「健康管理」と「療養上の指導」をする人です。 施設に雇われて(多くは非常勤で)来る医師を、現場では配置医師・嘱託医と呼びます。
⚠ 介護職が直接話す機会は、少ない施設が多いと思います。ふつうは看護師が間に立ちます。 ◎ それでも「この人が何を決める人か」を知っておくと、看護師の言葉の意味が変わります。 看護師は、何をする人か
条文にある配置——「必要な数」
指定介護老人福祉施設の基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項第1号
医師 「入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数」
⚠ これだけです。看護職員のように「30人までは1以上」という数字も、ケアマネのように「常勤」という条件もありません。
◎ だから「うちの先生は週1回」「月2回」がどちらもあり得ます。⚠ それは施設の手抜きではなく、条文がそう書いているからです。 ◎ 何日来るかは、施設が医師と決めています。
条文が決めている仕事——健康管理
省令39号 第18条(健康管理)
「指定介護老人福祉施設の医師又は看護職員は、常に入所者の健康の状況に注意し、必要に応じて健康保持のための適切な措置を採らなければならない」
◎ 主語が「医師又は看護職員」です。健康管理は、医師と看護職員の両方に置かれた仕事です。
⚠ 「療養上の指導」は、介護職の日々の介護に返ってきます。食事の形、水分の量、離床の可否、薬の飲み方——医師の指導が、看護師を通って、介護職の手順になります。 粉にしてはいけない薬/きざみ食は、安全とは限らない
急変のとき——医師と協力医療機関
◎ 急変のときの線は、条文に2本あります。
| 条文 | 決めていること |
|---|---|
| 省令39号 第20条の2 (緊急時等の対応) | ◎ あらかじめ、配置医師及び協力医療機関の協力を得て、連携方法その他の対応方法を定めておく。1年に1回以上見直す |
| 省令39号 第28条 (協力医療機関等) | ◎ 次の3つの体制を満たす協力医療機関を、あらかじめ定めておく——①急変時に医師又は看護職員が相談対応する体制を常時確保/②診療の求めに診療を行う体制を常時確保/③入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制(病院に限る)。複数の医療機関で満たしてもよい |
⚠ 第28条第1項の3要件は、令和9年3月31日までは努力義務です。 令和6年1月25日厚生労働省令第16号の附則第6条により、その日までは「定めておかなければならない」を「定めておくよう努めなければならない」と読み替えるとされています。 ◎ つまり、いまの時点で3要件をすべて満たす協力医療機関がない施設も、条文上あり得ます。
⚠ そして、大事なことがひとつ。「急変のときは施設の医師が判断する」と書いた条文は、ありません。 ◎ 第20条の2が求めているのは「対応方法をあらかじめ定めておくこと」です。誰に、どの順で連絡するかは、その対応方法に書かれています。 ⚠ だから「まず医師に電話」なのか「まず救急車」なのかは、施設の対応方法で決まります。 なぜ「まず医師に連絡」なのか — 急変と看取り/なぜ特養・老健・グループホームで、看護師との距離が違うのか
看護師との線——「医師の指示」
◎ 看護師の仕事のうち「診療の補助」には、医師の指示が要ります(保健師助産師看護師法第37条)。 ⚠ だから看護師が「先生に聞いてから」と言うとき、それは看護師が決められないのではなく、条文が看護師にそう求めているからです。 なぜ看護師は「医師の指示がないとできない」と言うのか
◎ 介護職から見ると、医師は「看護師の判断の、その先にいる人」です。介護職の報告は看護師へ。看護師の判断が医師へ。この順番は、施設によって形が違いますが、線そのものは条文から出ています。
条文が決めていないところ
- 医師が週に何日・何時間来るか(⚠ 「必要な数」だけ)
- 夜間・休日に、医師に電話がつながるか(対応方法で定める)
- 看護師がどこまで自分で判断し、どこから医師に聞くか(指示の範囲)
- 介護職が直接、医師に話してよい場面があるか
- 受診や入院のとき、誰が付き添うか
◎ これらは、施設の「緊急時等の対応方法」と運営規程で決まっています。 運営規程には「緊急時等における対応方法」を書くことになっています(省令39号第23条第6号)。 ◎ 第20条の2の対応方法は、1年に1回以上見直されているはずです。最新のものがどこにあるか、確かめてください。
この人に頼めること/頼めないこと
薬の形の相談(粉にできるか、OD錠に変えられるか)
食事の形・水分の量の判断
離床・入浴の可否の判断
「いつもと違う」の相談(看護師へ→医師へ)
ご家族への病状の説明
その場で介護職が医療行為をすること(指示があっても、介護職ができる行為は別に決まっています)
介護の計画そのものを変えること
⚠ 介護職から医師へ直接、というのが通らない施設もあります。
◎ それは条文ではなく、施設の対応方法の形です。まず看護師に
まとめ
- ◎ 「健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数」。人数も常勤かも書いていない(省令39号第2条第1項第1号)
- ◎ 健康管理は「医師又は看護職員」の仕事(第18条)
- ◎ 急変の対応方法は、配置医師と協力医療機関の協力を得てあらかじめ定め、年1回以上見直す(第20条の2)
- ◎ 協力医療機関の3要件=相談体制・診療体制・入院受入れ(第28条第1項)。⚠ 令和9年3月31日まで努力義務(令和6年厚労省令第16号 附則第6条)
- ⚠ 「急変は施設の医師が判断する」と書いた条文はない。誰に・どの順でかは、施設の対応方法で決まる
- ◎ 看護師が「先生に聞いてから」と言うのは、条文が看護師に求めている形(保助看法第37条)
- ⚠ 医師の来る頻度・夜間の連絡は、施設によって違います
やさしい 日本語(にほんご)
1 ◎ どんな 人(ひと)ですか
入所者(にゅうしょしゃ)の 体(からだ)の ようすを 見(み)て、
「くすりは これで いいか」「ごはんの かたちは これで いいか」を きめる 人です。
⚠ 毎日(まいにち)は 来(き)ません。◎ 週(しゅう)に 1回(かい)の しせつも、月(つき)に 2回の しせつも あります。どちらも きまりの 中(なか)です。
2 ◎ あなたが 話(はな)す 相手(あいて)は、まず 看護師(かんごし)です
◎ あなた → 看護師 → 医師。この じゅんばんの しせつが 多(おお)いです。
⚠ 看護師が「先生(せんせい)に 聞(き)いて から」と 言(い)うのは、きまりで そう なって いるからです。看護師が きめられない のでは ありません。
3 ⚠ 急(きゅう)に わるく なった とき
◎ 「だれに、どの じゅんばんで れんらくするか」は、しせつが 先(さき)に きめて あります。
⚠ 「まず 医師に 電話(でんわ)」の しせつも、「まず 救急車(きゅうきゅうしゃ)」の しせつも あります。
◎ あなたの しせつの きめ方を、さいしょに 聞いて ください。
4 ◎ 医師の ほかに、「協力(きょうりょく)病院(びょういん)」が あります
◎ 急に わるく なった とき、そうだんできる 病院・見て もらえる 病院・入院(にゅういん)できる 病院を、しせつが 先に きめて おきます。
⚠ いまは まだ「きめる ように がんばる」の 期間(きかん)です。ぜんぶ そろって いない しせつも あります。
5 ◎ たのめる こと(看護師を とおして)
- 「この くすり、粉(こな)に して いいですか」
- 「ごはんの かたちを かえた ほうが いいと 思(おも)います」
- 「今日(きょう)、おふろに 入(はい)って いいですか」
◎ きめるのは 医師です。◎ 気(き)づいて つたえるのが、あなたの しごとです。
※ この ページは 一般(いっぱん)の せつめいです。しごとの わけかたは、事業所(じぎょうしょ)に よって ちがいます。かならず あなたの 事業所(じぎょうしょ)で たしかめて ください。
あわせて読む
根拠にした資料
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項第1号(医師の配置)、第18条(健康管理)、第20条の2(緊急時等の対応)、第23条第6号(運営規程・緊急時等における対応方法)、第28条(協力医療機関等)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令(令和6年1月25日厚生労働省令第16号)附則第6条(第28条第1項の経過措置・令和9年3月31日まで)
- 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第37条(医師の指示)