ホームなぜ、そう言うのか > 施設の種類による差
看護師の側から

なぜ特養・老健・グループホームで、看護師との距離が違うのか

まず、これだけ

「前の職場では、看護師がすぐ来てくれた」。同じ介護の現場なのに、なぜこんなに違うのか。

同じ100人でも、看護職員の数が3人ぶんと、約10人ぶん。3倍以上ちがいます。さらに老健は法律の上で「医療を提供する施設」に数えられていて、特養は入っていません。

グループホームの決まりには、「看護職員」という言葉が1つも出てきません。人の問題ではなく、器のちがいです。だから、前の職場の感覚をそのまま持ち込むと、かならずぶつかります。

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最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 医師の置き方が、根本から違います
  2. 老健は「医療提供施設」です
  3. だから老健には「看護及び医学的管理の下における介護」という条文がある
  4. 看護職員の数を並べると
  5. グループホームは、条文に「看護職員」が一度も出てきません
  6. 急変時につながる先も違います
  7. 「前の職場では」の正体
  8. だから、こう言えば通ります
  9. ここから先は、本当に無理です
  10. 記録にどう残すか
  11. まとめ

医師の置き方が、根本から違います

施設医師の員数(条文どおり)
特別養護老人ホーム
(指定介護老人福祉施設)
厚令39 第2条1項1号
入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数
——数値がありません。非常勤の配置医師が定期的に来る形が一般的です
介護老人保健施設
厚令40 第2条1項1号
常勤換算方法で、入所者の数を百で除して得た数以上
——入所者100人なら常勤換算1人以上。数値で決まっています

「必要な数」と「百で除して得た数以上」。この差が、あとの全部につながります。

老健には施設の中に医師がいることが前提の条文が並びます。特養には、その前提がありません。だから特養では、判断が配置医師と協力医療機関のほうへ出ていく設計になります。

老健は「医療提供施設」です

医療法(昭和23年法律第205号)第1条の2第2項に、こう書かれています。

医療は、……病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等……において、医療提供施設の機能に応じ効率的に、かつ、福祉サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない。

介護老人保健施設は、名指しで「医療提供施設」に入っています。そして特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)は、この列挙にありません。

これは格の話ではありません。老健は「在宅へ帰るまでのあいだ、医療の管理下で暮らす場所」として作られていて、特養は「生活の場」として作られている——目的が違うので、条文の作りが違うだけです。どちらが上ということはありません。

だから老健には「看護及び医学的管理の下における介護」という条文がある

介護老人保健施設の基準(平成11年厚生省令第40号)第18条は、条見出しからしてこうです。

(看護及び医学的管理の下における介護)
第十八条 看護及び医学的管理の下における介護は、入所者の自立の支援と日常生活の充実に資するよう、入所者の病状及び心身の状況に応じ、適切な技術をもって行われなければならない。

入浴も、排せつも、おむつ交換も、褥瘡の予防も、この条の第2項以下に並んでいます。つまり老健では、日々の介護そのものが「看護及び医学的管理の下」に置かれているという書き方になっています。

老健で看護職員がよく口を出してくるのは、条文がそう組まれているからです。

特養の基準(厚令39)には、これに当たる条文がありません。介護は介護、健康管理は「医師又は看護職員」(第18条 健康管理)と、役割が分けて書かれています。

看護職員の数を並べると

施設の種類看護職員の配置と、夜間の扱い
特別養護老人ホーム
厚令39 第2条1項3号ロ
常勤換算で、30人以下1/〜50は2/〜130は3。うち1人は常勤(同条6項)。
定員100人なら常勤換算3人
夜間=法令上は不要(告示29号は「介護職員又は看護職員」)
介護老人保健施設
厚令40 第2条1項3号
看護・介護職員を合わせて入所者3人につき1以上。うち看護職員は総数の7分の2程度が標準(介護職員は7分の5程度)。
定員100人なら看護・介護あわせて約34人、うち看護職員は約10人
さらに医師が常勤換算1人以上
認知症対応型共同生活介護
(グループホーム)厚令34 第90条
条文に「看護職員」の語が一度も出てきません(§5)

定員100人で比べると、看護職員は「常勤換算3人」と「約10人」です。3倍以上あります。同じ介護福祉士が特養から老健に移ると、看護職員の関与の濃さが変わって感じられるのは当然です。職員の姿勢の差ではありません。 Cùng 100 người: viện dưỡng lão đặc biệt khoảng 3 y tá, viện phục hồi (roken) khoảng 10 y tá. Khác nhau hơn 3 lần. Đó là do LUẬT, không phải do thái độ của nhân viên.

グループホームは、条文に「看護職員」が一度も出てきません

指定地域密着型サービス基準(平成18年厚生労働省令第34号)第90条は、認知症対応型共同生活介護の従業者を定めた条文です。この条文の中に「看護職員」「看護師」「准看護師」という語は1つもありません。置かれているのは「介護従業者」です。

だからグループホームでは、看護職員がいないことが基準どおりです。加算の要件として看護職員との連携体制を組む形はありますが、人員基準そのものには出てきません。
「なぜ看護師がいないのか」と聞いても、答えは「そういう条文だから」以上のものが出ません。その代わりに聞くべきことは §8 に書きました。

急変時につながる先も違います

施設急変時に働く条文
特別養護老人ホーム第20条の2(緊急時等の対応) あらかじめ定め、年1回以上見直す
第28条(協力医療機関等) 3要件・常時確保
施設の医師が判断すると書いた条文は、ありません
介護老人保健施設「緊急時等の対応」に当たる条文はありません
第16条 施設の医師が「自ら必要な医療を提供することが困難」と認めたとき、入院の措置または他の医師の対診を求める
第30条(協力医療機関等) 同じ3要件

協力医療機関の3要件(特養 第28条第1項/老健 第30条第1項)は、令和9年3月31日まで努力義務です(令和6年1月25日厚生労働省令第16号 附則第6条による読替え)。「もう義務です」と言うと不正確になります。

老健で「まず先生に見てもらいます」となるのは、第16条があるからです。

特養では、施設の中で医師がその判断をする条文がありません。だから「協力医療機関へ連絡」「救急要請」が先に来ます。看護職員の返事が施設によって違って聞こえるのは、この条文の差です。

「前の職場では」の正体

ここまでを1枚にすると、こうなります。

感じること条文の側の理由
「前は看護師がすぐ動いてくれた」老健なら看護職員が3倍以上いて、施設内に医師がいる(厚令40 第2条1項1号)。指示を取るまでの距離が短い
「前は介護のやり方に口を出されなかった」特養には「看護及び医学的管理の下における介護」(厚令40 第18条)に当たる条文がない
「前は夜も看護師がいた」夜勤基準の告示は「介護職員又は看護職員」。夜間に看護職員を置くかは事業者の判断で、施設の種類とは別の話です → なぜ夜勤帯に看護師がいないのか
「グループホームには看護師がいない」人員基準の条文に「看護職員」の語がない(厚令34 第90条)

これが分かると、比べる相手が変わります。「前の職場の看護師さん」と比べるのではなく、「この施設の条文では、どこへつなぐことになっているか」を見る。そちらのほうが、実際に動きます。

だから、こう言えば通ります

場面言い方の型(いずれも一例です)
看護職員が動けないと言うでは、どこへつなぐ手順になっていますか。配置医師ですか、協力医療機関ですか、救急ですか」
=人ではなく手順を聞く。特養なら第20条の2で定めてあるはずのものです
転職して戸惑っている(相手は管理者です)「この施設の緊急時の対応方法を、文書で見せていただけますか。前の施設と種類が違うので、つなぎ先を覚えたいです」
=「前はこうだった」と言うより、はるかに早く話が進みます
グループホームで不安なとき体調が変わったとき、誰に、どの順で連絡しますか。夜間はどうなりますか」
=「看護師がいない」を嘆くのではなく、代わりの経路を確定させる
老健で口を出されたと感じたとき医学的にはどこを見ておけばいいですか。そこを記録に入れます」
=第18条の建て付けに乗る言い方。対立ではなく、分担の確認になります

ここから先は、本当に無理です

中身
法令上の線
(言い方では動きません)
施設の種類そのものは変わりません。特養に「老健と同じだけ看護職員を置いてください」と求める法令上の根拠はありません。グループホームの人員基準に看護職員を加えることもできません。
また、医師にしかできないこと(診断・死亡診断書・薬の処方)は、施設の種類にかかわらず同じです
事業所で変わる線
(話し合いで動きます)
看護職員をどの時間帯に置くか/オンコールの範囲/協力医療機関との取り決めの中身/配置医師の訪問日と連絡方法/「何が起きたら呼ぶか」の基準/加算による看護体制の上乗せ
基準は最低限の数です。それを上回って置くことは、いつでもできます。そこは経営の判断であって、法令の限界ではありません

記録にどう残すか

つなぎ先を確認したとき
(申し送りノート)9:15 管理者〇〇より、緊急時の対応方法について確認。「日中は看護職員へ、不在時は協力医療機関〇〇へ直接連絡。呼吸・意識に変化があれば先に救急要請」との説明を受ける。手順書の写しを受領。

手順どおりに動いたとき
19:40 〇〇さん、夕食後に嘔吐。看護職員不在の時間帯のため、手順に従い協力医療機関〇〇へ電話連絡。「1時間様子を見て、再度嘔吐か意識の変化があれば救急要請」との指示。
20:45 嘔吐なし。声かけに応答あり。経過観察を継続。

「手順に従い」と書けることが、あなたを守ります。そのためには、手順が文書であることが要ります。無ければ、それは事業所側の宿題です(特養なら第20条の2は経過措置なしの義務です)。

まとめ

やさしい 日本語(にほんご)

1 なにが おきますか

あなたは 前(まえ)の 職場(しょくば)と くらべます。
「前は 看護師(かんごし)が すぐ 来(き)て くれた」
「前は こんなに 言(い)われなかった」

2 なぜ ちがいますか

施設(しせつ)の 種類(しゅるい)が ちがうからです。人(ひと)の せいでは ありません。

施設100人の とき
特養(とくよう)看護師 約(やく)3人/医師(いし)は「必要(ひつよう)な 数(かず)」
老健(ろうけん)看護師 約10人/医師 1人 以上(いじょう)
グループホーム法律(ほうりつ)に 「看護師」と いう 言葉(ことば)が ありません

3ばい 以上(いじょう) ちがいます。だから 感(かん)じ方(かた)も ちがいます。

3 あなたは どう 言(い)いますか

「なぜ 来て くれないの」では なく、「どこに つなぎますか」と 聞(き)いて ください。

4 これは できません

施設の 種類を 変(か)えること。
 「特養も 老健と 同(おな)じに して ください」は、法律では 言えません。

◎ でも 基準(きじゅん)は「いちばん 少(すく)ない 数」です。
 施設が もっと 多(おお)く 置(お)く ことは、いつでも できます。
 それは 法律の 話では なく、施設の 決(き)める ことです。

※ この ページは 日本(にほん)の 法律に ついて 書いて います。あなたの 施設の きまりも、かならず 見て ください。

新しい職場で、最初に確かめる順番があります

つなぎ先・呼ぶ基準・記録の様式。いずれも一例です。項目は事業所に合わせて書き換えてお使いください。

困りごとから調べる → 様式をダウンロード

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公開されている資料をもとに整理しています。
  • 医療法(昭和23年法律第205号)第1条の2第2項
  • 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第2条第1項・第6項/第18条/第20条の2/第28条
  • 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第2条第1項/第16条/第18条/第30条
  • 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第90条
  • 厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準(平成12年2月10日 厚生省告示第29号)
  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令(令和6年1月25日厚生労働省令第16号)附則第6条
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。法令の解釈を最終的に行うのは、所管の行政庁と裁判所です。 人員基準は都道府県・市町村の条例で定められる部分があり、お住まいの地域で取り扱いが異なることがあります。 また、報酬の加算・減算の要件として、基準とは別に職員配置が求められる場合があります。ここに書いた員数は、いずれも人員基準上の最低限であり、実際の配置はそれを上回ることがあります。 ここで書いているのは、施設に課されている法令上の枠組みです。特定の施設や誰かの姿勢を書いたものではありません。 実際の対応は、所属事業所の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・通知・法令は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。