きざみ食は、安全とは限らない
「食べにくそうだから、刻みましょうか」
よくある言葉ですが、きざみ食は「安全な食事」ではありません。
細かく刻んだ食べ物は、口の中でまとまらずバラバラに散らばり、 飲み込む準備ができないまま のどに落ちます。
もくじ
なぜ、きざみ食が危ないことがあるのか
食べ物を飲み込むには、口の中でひとかたまり(食塊)にまとめる必要があります。
きざみ食は、かむ手間を減らすための形です。かむ力が弱い方には向いています。 けれど、まとめる力・飲み込む力まで弱い方には、逆に難しくなります。
かむ力は弱いが、飲み込む力も弱い。
この方には、きざみ食よりソフト食・ミキサー食+とろみのほうが安全なことが多くあります。
食形態の決定は、医師・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士が行います。
介護職が「食べにくそうだから刻もう」と判断してはいけません。
気づいたことを報告するのが、介護職の役割です。
詰まりやすい食べ物
| 種類 | 例 | なぜ |
|---|---|---|
| もち | 正月のもち、だんご | 窒息の原因として最も多いもの。行事のときは特に注意 |
| 水のようにサラサラのもの | 水、お茶、みそ汁、ジュース | 速すぎて、のどが追いつきません。実は水がいちばん危ない |
| パサパサのもの | パン、カステラ、ゆで卵、いも、そぼろ | 口の中でまとまらず、バラバラに落ちる |
| かたまりのもの | 大きな肉、ミニトマト、ぶどう、こんにゃく | 丸ごと詰まる。小さく切る |
| はりつくもの | のり、わかめ、レタス、薄い葉物 | のどや上あごに はりつく |
| 酸っぱいもの | 酢の物、かんきつ類 | 刺激でむせやすい |
| 口の中でばらけるもの | きざみ食、ひき肉、かたい野菜 | きざみ食は安全ではありません |
「水がいちばん危ない」は、意外に思われます。 水はのどを速く流れるので、飲み込む動きが間に合いません。だからとろみをつけます (→ とろみの濃さが職員でバラバラなのは、それ自体が事故要因)。
「食べにくそう」と思ったら、どう伝えるか
刻むかどうかを決めるのは介護職ではありません。けれど、気づいたことを具体的に伝えることはできます。
伝えるとよいこと
□ どの食品でむせるか(水分か/固形物か/特定のもの)
□ 口の中に残るか(ほお・舌の下・上あご)
□ 食事にかかる時間(前は何分、いまは何分)
□ 食後の声(ゴロゴロしていないか)
□ 残す量が増えたか
□ 体重の変化
「食べにくそうです」だけでは、判断のしようがありません。どこで、どう困っているかまで書くと、変更につながります。
食べ方のくせべつに、今日できること
| くせ | 今日できること(一例) |
|---|---|
| かき込む | お皿を1つずつ出す。スプーンを小さくする |
| 口にため込む | 声かけ「ごっくんしましょう」 |
| 丸のみ | 食形態の見直しを相談する |
| 途中で眠くなる | そこでやめる(→ 傾眠だけれど口を開ける方への食事介助) |
一口の量とペース
- ティースプーン1杯くらい。大きなスプーンを使わない
- のどぼとけが上下したのを見てから、次の一口
- 口が空になったか、見て確認する
- 急がせない。「早く食べて」と言わない
- 職員が急いでいると、必ずペースが速くなります
- 1人の職員が同時に何人も介助しない
介護職ができること・できないこと
食事の介助(決められた食形態で)/姿勢を整える/決められた濃さでとろみをつける/口腔ケア/むせ・様子の観察と記録・報告/背部叩打法・腹部突き上げ法/119番・心肺蘇生・AED/研修を受け認定された場合のみ:吸引
食形態を変える判断(刻む・ミキサーにかける)/とろみの濃さを自分で変える/飲み込みの検査・評価/研修を受けていない吸引/経管栄養の実施/「食べられそうだから」と食事を戻す判断/薬を粉にする判断
数えると、変更の根拠になります
むせの回数を食形態べつに数えてください。「この食形態にしてから、むせが増えた/減った」が見えます。
1回のむせは事故ではありません。でも、書かないと誰も気づけません。 集計表は 様式のダウンロード から印刷して使えます。
まとめ
- きざみ食はかむ力を助ける形。飲み込む力は助けない
- 口の中でばらけて、まとまらないまま のどに落ちることがある
- 水がいちばん危ない。もちは窒息の原因として最も多い
- 食形態を決めるのは医師・歯科医師・言語聴覚士・管理栄養士
- 介護職は「どこで、どう困っているか」を具体的に報告する
- 一口はティースプーン1杯。のどぼとけが動いてから次
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づく喀痰吸引等研修および認定特定行為業務従事者の制度
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 消費者庁 高齢者の窒息事故に関する注意喚起(もち等による窒息)
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類・とろみの段階に関する一般向け資料
- 日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン 気道異物除去・一次救命処置
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。