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記録

一人で入る家で、見ていないときに起きたことをどう書くか

訪問介護の記録で、いちばん難しいのは「見ていない時間」です。

施設なら、前の勤務の人に聞けます。訪問では、前に来たのは2日前の自分か、別のヘルパーです。その間に何があったかは、ご本人とご家族の話と、部屋の様子からしか分かりません。

それでも、記録は書かなくてはいけません。そして、見ていないことを、見たように書いてはいけません。この記事は、その2つのあいだで、何をどう書くかを整理したものです。書き方の型は、施設の記事(転倒と発見の書き分け)と同じです。訪問ならではの場面に置き直しました。

やさしい日本語で読むくわしく読む

最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 記録は、何のために残すのか
  2. 訪問の記録には、2つの層があります
  3. 「見た」「聞いた」「思った」を分けて書く
  4. 着いたときに、いつもと違ったとき
  5. ご家族から聞いた話を、どう書くか
  6. 書いてはいけない書き方、書いていい書き方
  7. 写真は撮っていいか
  8. 訪問版・記録の例文20本
  9. まとめ

記録は、何のために残すのか

訪問介護の事業所には、提供したサービスの内容を記録して、利用者から求められたら見せることが決められています。事故が起きたときは、事故の状況と、そのとき取った処置を記録します。どちらも完結の日から2年間保存します。

ここで大事なのは、記録が「事業所の中で見る紙」ではないということです。ご本人が読むかもしれない。ご家族が読むかもしれない。市町村の調査で出すかもしれない。何かあったとき、訪問先で何があったかを知っている唯一の証拠になります。

訪問の記録は、あなたを責めるための紙ではありません。あなたがいなかった時間と、あなたがいた時間を、分けて残す紙です。

「見ていない」を正直に書いた記録ほど、あとで信用されます。逆に、見ていないことを見たように書いた記録は、1か所ほころびると全部が疑われます。

訪問の記録には、2つの層があります

何を書くか
① サービス提供の記録
毎回
提供日・時間、何をしたか(身体介護・生活援助の別と、その具体的な中身)、ご本人の心身の状況。事業所の様式に沿って書きます。ケアマネジャーが見て、次の計画を考える材料になります
② 事故・異変の記録
起きたとき
いつ・どこで・何が起きた(または、何を発見した)・そのとき何をした・誰に連絡した・時刻。事業所への第一報のあと、落ち着いて書きます。市町村への報告の元になります

①は毎回。②は起きたとき。訪問の難しさは、②のほとんどが「発見」から始まることです。ベッドの横で倒れている方を見つけたとき、あなたは転倒を見ていません。見たのは、倒れている状態です。

「見た」「聞いた」「思った」を分けて書く

型は1つだけです。自分が直接見たこと、誰かから聞いたこと、自分がそう思ったこと——この3つを、混ぜずに書きます。

区分書き方
見たそのまま書く。「訪問時、ベッドの左側の床に、右を下にして横になっていた。声をかけると返事があった」
聞いた誰から聞いたかを付ける。「ご本人『トイレに行こうとして、足がもつれた』と話す」「長男様より『昨夜21時ごろ、物音がして見に行ったら座り込んでいた』と聞く」
思った書くなら、思ったと分かるように。「テーブルの角が近く、ぶつけた可能性もあると思われる」。書かなくてもよい。書くなら、見たことと同じ行に混ぜない

いちばん多い間違いは、「聞いた」を「見た」の文で書くことです。「21時に転倒」と書くと、あなたが21時にそこにいたことになります。いなかったなら、「長男様より、21時ごろ転倒したと聞く」です。

この書き分けは、あなたを守るためでもあります。あとで「ヘルパーは転倒の場面にいたのか」と問われたとき、記録に「聞く」と書いてあれば、いなかったことがはっきりします。

着いたときに、いつもと違ったとき

倒れているような大きなことでなくても、訪問先では「いつもと違う」に気づく場面が毎日あります。これも記録です。

これらは①サービス提供の記録の「心身の状況」欄に書けます。事故の紙ではありません。ただし、新しいあざ・傷は、事業所に口で伝えてから書いてください。原因が分からないあざは、施設でも訪問でも、書き方は同じです(原因が分からないあざあざの記録の書き方)。

「前回訪問時(9月2日)にはなかった」と書けるのは、訪問の記録の強みです。施設の記録は連続していますが、訪問の記録は点です。点と点のに何かがあったことを、その一文が示します。

ご家族から聞いた話を、どう書くか

訪問では、ご家族が「最初の目撃者」であることが多いです。その話は大事な情報ですが、そのまま事実として書かないのが約束です。

ご家族の言葉記録の書き方
「夜中にトイレで転んだみたい」「長男様より『夜中にトイレで転んだようだ』と聞く。転倒の場面は長男様も見ていないとのこと」
「たいしたことないから、報告しないで」聞いた言葉として書く。「長男様より『報告は不要』との申し出。事業所の決まりで報告する旨を説明」——⚠ 報告するかどうかは、ご家族ではなく事業所と市町村の決まりで決まります
「前のヘルパーさんがやったんじゃないの」言われたことを、感情を入れずに書く。「長男様より『前回の訪問時にできたのではないか』との発言あり。前回訪問者に確認する旨を伝える」。反論も、同意も、記録には書きません
(何も言わない・いない)「同居家族は不在。本人に聞くと『覚えていない』」。いなかったこと、聞けなかったことも情報です

ご家族の言葉を書くときは、「 」で囲んで、聞いたままに近い言葉で。要約すると、あなたの解釈が混ざります。

Điều mình thấy, điều mình nghe, điều mình nghĩ — viết tách riêng. Lời của gia đình thì ghi "nghe từ ○○".

書いてはいけない書き方、書いていい書き方

✕ こう書かない◎ こう書く
「21:00 転倒」(見ていない)「9:05 訪問時、床に横になっているのを発見。長男様より『21時ごろ』と聞く」
「特変なし」「顔色いつも通り。朝食は全量。歩行は手すりで自立。新しいあざなし」——何を見て「なし」と言えたかを書く「特変なし」と書いてはいけない
「家族の介護が不十分」「オムツは訪問時まで交換されていなかった様子(前回訪問時と同じ物)。長男様は仕事で不在とのこと」——評価ではなく、見たことを
「たぶん認知症が進んだ」「同じ質問を3回された(前回は1回)。事業所に報告」——診断は書かない
「問題なく終了」「予定の身体介護(清拭・更衣)を実施。途中、左腕に触れると『痛い』と1回。見た目の変化なし。事業所に報告」
(空欄)「分からない」と書く。「あざの原因は不明」「転倒したかどうか、本人は覚えていないと話す」——「不明」は立派な記録です

写真は撮っていいか

あざや部屋の状態を写真に残したいと思うことがあります。ここは事業所の決まりによります。ご本人・ご家族の同意の取り方、撮った写真をどこに保存するか、個人の端末で撮ってよいかは、事業所ごとに違います。

訪問版・記録の例文20本

そのまま写して、時刻と名前と場所を入れ替えて使ってください。「見た」「聞いた」を分けているところを見てください。

着いたとき

体を見たとき

ご家族から聞いたとき

自分がしたこと・できなかったこと

「不明」「聞く」「事業所に報告」——この3つの言葉が入っている記録は、いい記録です。

全部を自分で確かめる必要はありません。確かめられなかったことを、確かめられなかったと書く。それが訪問の記録です。

まとめ

やさしい 日本語(にほんご)

1 ⚠ 訪問(ほうもん)では、見(み)て いない 時間(じかん)が あります

見て いない ことを、見た ように 書(か)きません。これが いちばん 大事(だいじ)です。

2 ◎ 3つに わけて 書きます

3 ⚠ たおれて いる 人(ひと)を 見つけたら、「てんとう」では なく「はっけん」

時間は、あなたが 見た 時間を 書きます。たおれた 時間は、わかりません。

4 ◎ いつもと ちがう ことは、きろくです

5 ⚠ ご家族(かぞく)の 話(はなし)は、聞いた ままに

◎ 「 」で かこんで 書きます。
 ⚠ 「ほうこくは しないで」と 言われても、ほうこくは じぎょうしょの きまりで します。言われた ことを、そのまま 書きます。

6 ◎ わからない ことは、「ふめい」と 書きます

「ふめい」「〜と 聞く」「じぎょうしょに ほうこく」——この 3つの ことばが ある きろくは、いい きろくです。

7 ⚠ 写真(しゃしん)は、じぶんで きめて とりません

じぎょうしょに 聞いて から。ことばで 書いても、きろくに なります。

※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)と、現場(げんば)の きまりに ついて 書(か)いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
ふりがなと やさしい 日本語は、この 研究所(けんきゅうじょ)が つけた ものです。まちがいが あれば、教(おし)えて ください。

記録の様式と、あざのボディマップを配っています

そのまま印刷して使えます。いずれも一例です。事業所の規程と市町村の要領に合わせて読み替えてお使いください。

様式をダウンロード → 困りごとから調べる

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公開されている資料をもとに整理しています。
  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第37号) 第19条(サービスの提供の記録)・第37条(事故発生時の対応)・第39条(記録の整備)
  • 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」平成11年9月17日 老企第25号(解釈通知) ——記録に「提供日、提供した具体的なサービスの内容、利用者の心身の状況その他必要な事項」を書くこと
  • 厚生労働省「介護保険施設等における事故の報告様式等について」令和6年11月29日(介護保険最新情報 Vol.1332)
  • 厚生労働省「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」令和7年11月7日(介護保険最新情報 Vol.1436)
  • 当研究所『介護事故防止 実務マニュアル』第9章「報告」——「転倒」と「発見」の書き分け
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護・労務・法律の判断を代替するものではありません。 事業所によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。記録の様式・写真の扱いは事業所の規程によります。 実際の対応は、所属事業所の規程および、サービス提供責任者・管理者の指示、そして市町村の定めに従ってください。制度・通知は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。