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事故が起きたとき

訪問先で事故が起きたとき、誰に、何を、どの順で

訪問先には、呼べる人がいません。施設なら、廊下に出れば誰かがいます。訪問先では、判断する人も、記録する人も、あなた一人です。

だから順番だけ決めておきます。①その方 ②連絡 ③記録。この順は変わりません。

そしてもう1つ。事故報告の様式は、2024年11月29日に差し替わりました。それまで使われていた令和3年3月19日の通知は、同じ日付で廃止されています。手元の様式が古いままになっていないか、この記事で確かめてください。

最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 最初の30秒 ——その方から離れない
  2. 連絡の順番は、条文に書いてあります
  3. 通所介護は第104条の3です(第37条の準用ではありません)
  4. 報告様式は2024年11月に差し替わりました
  5. 訪問介護は統一様式の「対象外」です ——では何を基準に報告するか
  6. 第1報は5日以内が目安。何を書くか
  7. 記録は2年間の保存が要ります
  8. 見ていないときのことを、どう書くか
  9. まとめ

最初の30秒 ——その方から離れない

電話をかけるために、その方から離れたくなります。先にやることがあります。

やること
① 呼ぶ名前を呼んで、返事があるか。目を開けるか
② 動かさない頭を打った可能性があるとき、起こしません。そのままの姿勢で見ます
③ 見る顔色・呼吸・出血・手足の動き・痛がっている場所。いま見たものを、あとで書きます
④ 時刻時計を見てください。あとで思い出そうとしても出てきません
⑤ 判断反応がない・呼吸がおかしい・出血が止まらない・けいれん → 119番が先。事業所への連絡はそのあとで構いません

迷ったら、救急車です。「呼ぶほどではなかった」と後から言われることを心配して呼ばない、が、いちばん危ない選び方です。呼んだ判断を責める事業所は、いい事業所ではありません。 Nếu phân vân thì GỌI 119. Gọi rồi mới báo công ty cũng được.

その場の写真より、時刻のメモのほうが、あとで効きます。

「14:20 居間 うつぶせ 呼びかけに返事あり 右ひじに擦り傷」——このくらいで十分です。スマートフォンのメモでも、手のひらでも構いません。あとで清書できます。記憶は清書できません。

連絡の順番は、条文に書いてあります

訪問介護の事故対応は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)の第37条です。条文はこうなっています。

内容
第1項事故が発生した場合は、市町村当該利用者の家族当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない
第2項事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない
第3項賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない

条文に挙がっている3者を覚えてください。市町村・家族・ケアマネジャー(居宅介護支援事業者)です。現場で最初に電話するのは事業所(サービス提供責任者)ですが、事業所が果たすべき義務としては、この3者への連絡だと決まっています。
——だから、あなたが事業所に伝えるときは、この3者に伝えられる形で伝えるのがいちばん早いのです。

事業所への第一報は、5つだけ言えば伝わります

原因は言わなくていいです。聞かれても「分かりません」で構いません。第一報は、その方の状態を伝えるためのものです。

通所介護は第104条の3です(第37条の準用ではありません)

ここは、まちがえて覚えている人が多いところです。

サービス条文
訪問介護第37条(事故発生時の対応)
通所介護第104条の3。第37条を準用しているのではなく、独立して書かれています

中身は訪問介護とほぼ同じですが、通所介護には第4項があり、指定通所介護以外のサービス(総合事業など)の提供により事故が発生した場合にも、同じ措置を講じることとされています。

研修資料をつくるときに気をつけてください。「事故対応は第37条」と1つで書いてしまうと、通所介護の職員には正しくありません。サービスごとに条番号が違います。

報告様式は2024年11月に差し替わりました

事故報告の様式については、長いあいだ令和3年3月19日の通知が使われてきました。研修資料や事業所のマニュアルに、この日付が残っていることがあります。

令和3年3月19日の通知は、令和6年11月29日付で廃止されました。

いま有効なのは、同じ名前の「介護保険施設等における事故の報告様式等について」令和6年11月29日 老高発1129第1号ほか(介護保険最新情報 Vol.1332)です。新しい通知の本文に「本日付けで廃止する」と書かれています。

何が変わったかというと、電子的に報告できるようにするための作り直しです。

あわせて、2025年11月7日にガイドラインも全面改訂されています。「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」(介護保険最新情報 Vol.1436)です。転倒・転落・誤嚥など事故の種類ごとに整理されています。タイトルは「施設等」ですが、居宅系でも参考にできる部分が多くあります。

訪問介護は統一様式の「対象外」です

ここが、訪問介護でいちばん迷うところです。通知には、対象サービスがこう書かれています。

統一様式の対象訪問介護・通所介護
介護保険施設、認知症対応型共同生活介護、特定施設入居者生活介護、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、養護老人ホーム、軽費老人ホーム直接の対象ではありません。「その他の居宅等の介護サービスにおける事故報告においても可能な限り活用いただきたい」と書かれているだけです

「報告しなくていい」ではありません。市町村への報告の義務そのものは、第37条・第104条の3にあります。
ないのは「全国共通の様式」と「全国共通の報告基準」のほうです。訪問介護の報告基準は、市町村が定めた要領によります。

参考までに、統一様式の側では報告対象がこう書かれています。多くの市町村は、これに近い線を引いています。

区分内容
原則すべて報告死亡に至った事故
医師の診断を受け、投薬・処置等 何らかの治療が必要となった事故
それ以外各自治体の取扱いによる

いま、事業所で確かめておくとよいこと。

第1報は5日以内が目安。何を書くか

統一様式の通知では、報告のしかたがこう決められています。

原因分析は、第1報に間に合わせなくていい。

通知に「作成次第報告すること」と書かれています。5日以内に求められているのは、何が起きたかであって、なぜ起きたかではありません。ここを取り違えると、原因を急いで決めてしまい、あとで違ったときに直せなくなります。

様式に何を書くことになっているか

内容
1事故状況の程度(受診/自施設で応急処置/入院/死亡 など)
2事業所の概要(法人名・事業所名・事業所番号・サービス種別・所在地)
3対象者(氏名・年齢・性別・サービス提供開始日・保険者・要介護度・認知症高齢者の日常生活自立度)
4事故の概要(発生日時・発生場所・事故の種別・発生時の状況の詳細)
5事故発生時の対応(受診方法・受診先・診断名・処置の概要)
6事故発生後の状況(利用者の状況・家族等への報告(続柄と報告年月日)・連絡した関係機関)
7事故の原因分析(本人要因・職員要因・環境要因)
8再発防止策(手順変更・環境変更・評価時期
9その他

6の「家族等への報告」に、続柄と日付を書く欄があります。つまり、いつ・誰に伝えたかは記録される項目です。ご家族への連絡は「したほうがいいこと」ではなく、書く欄がある仕事だと考えてください。

記録は2年間の保存が要ります

サービス保存の根拠と期間
訪問介護第39条第2項第6号「第37条第2項の規定による事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録」/その完結の日から2年間
通所介護第104条の4第2項第6号/同じく2年間

「2年」は最低の線です。自治体によって、より長く求められることがあります。訴えの期間との関係もあるので、事業所として何年残すかは、決めて書いておくほうが安全です。

見ていないときのことを、どう書くか

訪問介護では、着いたらもう倒れていたという場面があります。このとき、書き方をまちがえると、あとで大きな問題になります。

〇 見たことと、聞いたことを分ける

「14:20 訪問。居間の床にうつぶせで倒れているのを発見。呼びかけに返事あり。右ひじに擦り傷。
ご本人は『トイレに行こうとして転んだ』と話される。倒れた時刻は不明。」

発見の記録です。見たこと・本人が言ったこと・分からないことが、分けて書かれています。

✕ 見ていないことを、見たように書く

「14:20ごろ、トイレに行こうとして転倒。」

これは「転倒」の記録になっています。でも、あなたは転ぶところを見ていません。時刻も推測です。

あとで「いつから倒れていたのか」が問題になったとき、この1行が事実として扱われます。

「転倒」と書けるのは、転ぶところを見たときだけです。

見ていないなら「発見」です。分からないことは「不明」と書いてください。空欄より、はるかに強い記録になります。

ご家族から聞いた話も、そのまま書きます。「ご長女より『昨夜から左足を痛がっていた』とのこと」——伝聞であることが分かる形で書けば、それは価値のある情報です。自分の見立てに書き換えないでください。

まとめ

報告の様式と、3行のヒヤリハット様式を配っています

そのまま印刷して使えます。原因・対策・承認印の欄はありません。いずれも一例です。市町村の要領に合わせて書き換えてお使いください。

様式をダウンロード → 困りごとから調べる

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公開されている資料をもとに整理しています。
  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第37号)第37条・第39条/第104条の3・第104条の4
  • 厚生労働省「介護保険施設等における事故の報告様式等について」令和6年11月29日 老高発1129第1号・老認発1129第1号・老老発1129第1号(介護保険最新情報 Vol.1332) ※令和3年3月19日付の同名通知は、この通知により廃止されました
  • 厚生労働省「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」令和7年11月7日(介護保険最新情報 Vol.1436)
  • 当研究所『介護事故防止 実務マニュアル』第9章「報告」 ——第一報の言い方・記録の書き分けについて
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 事業所によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 事故報告の様式・報告基準・保存期間は、保険者(市町村)の定めによって変わります。この記事の数字は、国の通知に書かれている目安です。 実際の対応は、所属事業所の規程および、医師・看護師の指示、そして市町村の要領に従ってください。制度・通知は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。