あざを部位別に数えると、原因が見えてくる
記録は残している。けれど、毎月「原因不明」が並ぶだけ。
次に何をすればいいのか、決まらない。
1件ずつでは、分かりません。 けれど1か月分を部位べつに並べ替えると、かたよりが出ます。
そして、これは誰かを探す作業ではありません。 数えるのは部位であって、担当者ではない——ここが、続けられるかどうかの分かれ目です。
もくじ
1件では分かりません。集めると見えます
あざを1件ずつ見ていると、いつまでも「原因不明」が並びます。 けれど、1か月分を部位べつに並べ替えると、かたよりが出ます。
原因は、1件ずつ調べても見つかりません。数えると、見えてきます。
「今月は、すねが8件」。この一行が、次の1か月にやることを決めてくれます。
そして、これは誰かを探す作業ではありません。 数えるのは部位であって、担当者ではありません。ここを最初にはっきりさせておいてください。
集計の場で、担当者名を出さないでください。
一度でも「誰の勤務のときか」を突き合わせると、次の月から報告が減ります。
報告が減ることは、あざが増えることより危険です。見えなくなるだけだからです。
数える単位を、先に決める
「右腕」「足」といった大きなくくりでは、対策につながりません。 危険度のちがう部位を、混ぜないことが大事です。以下は8つに分ける一例です。
この形の集計表を、無料で配布しています。登録もメールアドレスも要りません。
項目を書き換えて、施設の様式としてお使いいただけます。
集計表をダウンロード →
数えるときの、細かいきまり
ここを決めておかないと、月ごとに数え方が変わって、比べられなくなります。
| 迷うところ | 決めておくこと(一例) |
|---|---|
| 同じあざを翌日も見た | 1件として数える。発見日で数え、再確認は件数に足さない |
| 同じ日に2か所に見つけた | 部位ごとに1件ずつ。体でまとめない |
| 左右どちらにも同じあざ | 2件として数え、「左右対称」と備考に書く(これ自体が手がかりです) |
| 紫斑と思われるもの | 数える。ただし①の欄へ。分けておくと、読み方を変えられます |
| 打撲(ぶつけたと分かっている) | あざの集計とは別の欄に。原因が分かっているものは、混ぜない |
| 1か月の区切り | 暦月でそろえる。月によって日数が違うことは、備考に書く |
部位べつの、読み方
数えたあとが本番です。どこが多いかで、次の1か月にやることが変わります。
| 多かった部位 | 読み方と、次の1か月でやること(一例) |
|---|---|
| ① 前うで・手の甲 | 防ぎきれない種類が含まれます。保湿の徹底、アームカバー、ご家族への説明に力を入れる。 ここを「事故」として職員を追及しない → 老人性紫斑の記事 |
| ② すね・ひざ | 設備の問題として扱えます。フットサポート・ベッド柵・家具の角を全台点検してカバーを付ける。 数字が変わりやすい項目です → 車いすのどこが当たっているか |
| ③ ひじ・かた | 移乗の方法を見直す。スライディングシートの導入、2人介助の基準づくり、勉強会 |
| ④ こし・かかと | ずり落ちと引きずり。ギャッジアップの角度、背抜き、スライディングシート。褥瘡の始まりも疑う |
| ⑤〜⑧ 赤ゾーン | 件数に関係なく、1件ずつ個別に検討。時間帯・状況・その方の状態を確認する → なぜ「赤ゾーン」なのか |
数字は、物を買うための理由になります。
「なんとなく多い気がする」では会議は動きませんが、
「今月すねが8件、先月は3件」と言えれば、カバーを買う話も、点検の時間を取る話もできます。
集計は、そのための道具です。
部位のほかに、2つだけ足す
項目を増やしすぎると、続きません。足すなら、この2つだけにしてください。
| 足す項目 | そこから見えること |
|---|---|
| 見つけた時間帯 | 朝いちばんに新しいあざが多いなら、夜間を疑えます。
足元灯、ベッドの高さ、ベッド周りの物、睡眠薬の内服時間。 特定の時間帯に集中しているなら、その時間の人員配置と業務量を見る材料になります |
| 見つけた場面 | 入浴・更衣・移乗・オムツ交換・食事・レク・送迎。 入浴は「発見の場」であって「発生の場」とは限りません。ここは読みちがえやすいところです |
「入浴で見つかることが多い」は、入浴が危ないという意味ではありません。 全身を見る機会が入浴だから、そこで見つかります。 発見の場と、発生の場を、分けて考えてください。
「勤務者」の欄は作らないでください。 時間帯までにとどめます。時間帯なら人の配置の話にできますが、 勤務者名にした瞬間、個人を探す作業になります。
カンファレンスは、30分で終わります
集計表を作っても、話す場がなければ何も変わりません。月に1回、30分で足ります。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 5分 | 集計表を見る。誰がやったかは話さない。部位と件数だけを見る |
| 10分 | いちばん多い部位を1つ選ぶ。「どこで起きていそうか」を全員で出す。 外国人職員にも必ず聞く。ふだん見ている場面がちがうので、気づきがあります Bạn nghĩ chuyện này xảy ra ở đâu? Xin hãy cho ý kiến. |
| 10分 | 対策を1つだけ決める。たくさん決めると実行されません。 「誰が」「いつまでに」「どこを」まで決める |
| 5分 | 先月決めた対策が実行できたか確認。できなかったなら、なぜかを話す |
- 「なんで気づかなかったの」
- 「誰が担当だった?」
- 「また増えてる。どうなってるの」
- 「これくらい常識でしょう」
- 「報告してくれて、ありがとう」
- 「見つけてくれたから対策できます」
- 「どこが危ないと思いますか」
- 「これは防げないほうのあざですね」
報告数が急に減ったときの、読み方
集計を続けていると、いつか「今月は少なかった」という月が来ます。 そのとき、喜ぶ前に一度だけ確かめてください。
あざが減ったのか、報告が減ったのか。
この2つは、集計表の上ではまったく同じ形に見えます。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 対策を打った部位だけが減っているか | その部位だけなら、効果の可能性があります |
| 全部位が一様に減っていないか | 一様に減るのは、報告が減ったサインのことがあります |
| 先月、報告した人を責めなかったか | 「なんで気づかなかったの」が一度でもあると、翌月に出ます |
| 新人・外国人職員から上がっているか | 言いにくい人ほど、先に止まります |
報告がたくさん上がるのは、報告できる職場だという証拠です。 そこを崩さないでください。 Cảm ơn bạn đã báo cáo. Nhờ bạn phát hiện mà chúng ta mới có thể phòng ngừa.
まとめ
- 1件では分かりません。1か月分を部位べつに数えると、かたよりが出ます
- 数えるのは部位。担当者ではありません
- 部位は8区分くらいに分ける。危険度のちがう部位を混ぜない
- 数え方のきまり(同じあざ・左右・紫斑・打撲)を先に決めておく
- 前うで・手の甲が多い月に、職員を追及しない
- すね・ひざが多いなら、設備の話にできます
- 赤ゾーンは件数に関係なく1件ずつ
- 足すなら時間帯と場面の2つだけ。勤務者の欄は作らない
- カンファレンスは30分。対策は1つだけ決める
- 報告数が急に減った月は、危険なサインとして読む
ここに書いた区分・きまり・進め方は、すべて一例です。 施設の記録システムや、これまでの様式に合わせて変えてください。 大事なのは、月ごとに同じ数え方で続けられることのほうです。
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「介護現場におけるリスクマネジメントに関する調査研究事業」報告書
- 厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。