老人性紫斑 — ぶつけていないのにできるあざ
前うでや手の甲に、紫色のあざがくり返しできる。
痛がらない。心当たりもない。誰も何もしていない。
これは、年齢による皮ふと血管の変化として知られているものかもしれません。 老人性紫斑と呼ばれます。
「原因不明のあざ」の多くは、これが背景にあります。 ただし、紫斑と決めつけないほうがよいときもあります。両方を整理しました。
もくじ
ぶつけていなくても、あざはできます
年齢を重ねると、皮ふと、皮ふの下で血管を支えている組織が弱くなります。 すると、軽くさわっただけ、そでを通しただけで、皮ふのすぐ下の細い血管が切れて出血することがあります。
これを老人性紫斑(老人性紫斑症、 単純性紫斑などと呼ばれることもあります)といいます。
まず、これだけ知っておいてください。
「原因不明のあざ」の多くは、これが背景にあります。
探しても「ぶつけた場所」が存在しないことがある、ということです。
あなたの見落としでも、力不足でもありません。
出る場所が、だいたい決まっています
老人性紫斑には、見分けの手がかりになる特徴があるとされています。ただし、これは目安です。 最終的な判断は、医師・看護師によります。
| よく言われる特徴(目安) | |
|---|---|
| 場所 | 前うでの外側・手の甲。日光が当たってきた面に出やすいとされています |
| かたち | 境目がはっきりした平らな紫色の斑。盛り上がりません |
| 痛み | ふつう痛みがありません。腫れも熱感も出にくいとされています |
| 色の変わり方 | ふつうのあざのように青→緑→黄とはっきり変わらず、 茶色っぽい跡がしばらく残ることがあります |
| くり返し | 同じあたりに、何度もできます |
いちばん危ないのは、「この方は紫斑があるから」で全部を片づけてしまうことです。
紫斑がある方にも、ぶつけたあざはできます。骨折もします。
場所が赤ゾーンなら、紫斑の方であっても報告してください。
薬を飲んでいる方は、さらに出やすくなります
あざの出やすさに関わる薬があります。薬を止める・減らす判断は、医師の領域です。 職員がすることは、その方が該当するかを把握して、チームで共有しておくことです。
| 種類 | 代表的な名前 | 知っておくこと |
|---|---|---|
| 血をさらさらにする薬 抗血小板薬 |
バイアスピリン、プラビックス、プレタール など | 軽い刺激でもあざになりやすくなります |
| 血を固まりにくくする薬 抗凝固薬 |
ワーファリン、イグザレルト、エリキュース、リクシアナ など | あざが大きく広がりやすいとされています。頭を打ったときは必ず受診 |
| ステロイド | プレドニン など | 長く使うと皮ふが薄くなることがあります |
| 睡眠薬・安定剤 | — | ふらつきが増え、ぶつかる回数が増えることがあります。夜間のあざと関係します |
入所のとき・入院から戻ったとき・処方が変わったときに、薬のリストを見直してください。
該当する方の記録に目印(シール・色)を付けておくと、
その方のあざを「起こりうるもの」として最初からチームで共有できます。
できることは、あります
防ぎきれない種類のあざですが、皮ふを守ることで、減ることがあります。 以下は一例です。その方に合うかどうかは、看護師・医師にご確認ください。
| やり方の一例 | |
|---|---|
| 保湿 | 1日2回(朝・入浴後5分以内が目安)。たっぷり、こすらず、押さえるように塗る |
| 洗い方 | 石けんは泡で。ナイロンタオルは使わない。お湯は41℃以下が目安 |
| まもる | 長そで・アームカバー・筒状包帯で前うでを保護。すねにはレッグウォーマー |
| 職員の身なり | つめは短く。指輪・腕時計・ブレスレット・名札のストラップを外す |
| 食事 | たんぱく質・ビタミンC・K・亜鉛。低栄養は血管をもろくするとされています。管理栄養士へ相談 |
| 医療的なケア | 血圧計のカフの下に薄い布を1枚。テープ類は剥離剤を使う。採血・点滴のあとは5分しっかり押さえる |
保湿は、いちばん手間の割に効くとされる方法です。 ただし「これをすれば防げます」とは言えません。減ることがある、という程度に受け取ってください。
紫斑と決めつけず、相談したほうがよいとき
老人性紫斑は、加齢による変化とされています。しかし、似た見た目で、別の原因があることもあります。 次のようなときは、看護師を通して相談してください。
- 短期間に、全身にあざが急に増えた
- あざに痛み・腫れ・熱感がある
- 押しても色が消えない点状の赤みが広がっている
- 鼻血・歯ぐきの出血・血尿など、ほかの出血もある
- 赤ゾーンの部位に出ている
- あざの形が物の形をしている
- 低栄養・低アルブミン
- 貧血・血小板の減少
- 肝臓・腎臓の病気
- まれに、血液の病気
- 薬の影響
採血で分かるものもあります
職員が病名を判断する必要はありません。
「老人性紫斑だと思います」と記録に書かないでください。それは診断です。
書くのは、見たことだけ。「前うで外側に3×2cmの紫色の斑。平坦。痛みの訴えなし」。これで十分です。
ご家族には、あざが出る前に説明しておく
あざが出てから説明すると、どんなに正しくても言い訳に聞こえます。 入所のときに、先に伝えておくのがいちばん確実です。
説明の一例
「ご高齢になりますと、皮ふと血管を支える組織が弱くなり、 強くぶつけていなくても内出血ができることがあります。とくに前うでや手の甲によく見られます。 お薬によっても、できやすくなることがあります。
私たちは、見つけたあざをすべて記録し、場所を図に残し、ご報告いたします。 原因が分かるものは対策をとり、分からないものは『分からない』とお伝えします。隠すことはいたしません。 記録のためにお写真を撮らせていただく同意も、あわせてお願いしております。」
写真の同意は、入所時の重要事項説明のときに一緒に取ってください。 あざを見つけたその場で初めてお願いすると、身がまえさせてしまいます。
あざが見つかったときの、ご家族への報告
| 目安 | |
|---|---|
| いつ | その日のうちに。翌日以降になるほど不信につながります |
| 誰が | 原則リーダー以上。発見者ひとりに背負わせない |
| 何を | 場所・大きさ・色・いつ見つけたか・行った対応・今後の観察予定 |
| 言い方 | 分からないことは「現時点では原因が分かっておりません」と正確に。賠償の話は管理者が行う |
| 記録 | 報告した時刻・相手・伝えた内容・相手の反応を残す |
集計では、この種類を分けて扱う
月に1回、部位べつに数えるとき、前うで・手の甲が多い場合の読み方は、ほかと違います。
前うで・手の甲が多い月を、「事故が増えた」として職員を追及しないでください。
防ぎきれない種類が含まれています。ここで追及すると、報告そのものが止まります。
| 多かった部位 | 次の1か月でやること(一例) |
|---|---|
| 前うで・手の甲 | 保湿の徹底、アームカバー、ご家族への説明に力を入れる。職員を追及しない |
| すね・ひざ | 設備の問題として扱う。車いすのどこが当たっているか |
| わき・上うでなど | 件数に関係なく1件ずつ検討。なぜ「赤ゾーン」なのか |
まとめ
- 年齢とともに皮ふと血管を支える組織が弱くなり、ぶつけていなくてもあざができることがあります
- 出やすいのは 前うでの外側・手の甲。平らで、痛みがなく、くり返すのが目安です
- 抗血小板薬・抗凝固薬・ステロイドで、さらに出やすくなることがあります
- できることは 保湿・やさしい洗い方・保護・栄養・職員の身なり
- ただし「これをすれば防げます」とは言えません
- 急に増えた/痛みがある/赤ゾーンに出た ときは、紫斑と決めつけず相談する
- 記録には見たことだけを書く。病名は書かない
- ご家族には入所のときに、先に説明しておく
- 集計で前うで・手の甲が多い月に、職員を追及しない
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省 e-ヘルスネット/高齢者の皮膚と健康に関する解説
- 日本皮膚科学会 一般向け皮膚疾患情報(紫斑・皮膚の加齢変化)
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」(出血傾向に関する項)
- 厚生労働省「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進について」
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。