なぜケアマネジャーは「プランにないからできない」と言うのか
「プランにないのでできません」。保険がきかない、と聞こえます。でも、そうではありません。
もともとの決まりは「いったん全額を払って、あとから9割を返してもらう」です。窓口で1割で済んでいるほうが例外の扱いで、その入口の条件が、ケアプランに位置づけられていることでした。
⚠ ただし「プランにない=全部10割」も正確ではありません。位置づけがなくても1割で使えるサービスがあり、自分で計画を作って市町村に届け出る道も、同じ決まりの中に書かれています。
もくじ
もともとは「いったん全額」の仕組みです
介護保険法(平成9年法律第123号)第41条第1項は、こう書かれています。
市町村は、居宅要介護被保険者が……指定居宅サービス事業者から……指定居宅サービスを受けたときは、当該居宅要介護被保険者に対し、居宅介護サービス費を支給する。
⚠ 「当該居宅要介護被保険者に対し」です。事業所に対して、ではありません。条文の原則は、利用者さんがいったん全額を払って、あとから市町村に請求する形(償還払い)になっています。
1割だけ払えばよいのは、原則ではなく例外です。
窓口で1割を払う形が当たり前になっているので忘れられがちですが、あれは条文の第6項が作っている状態です。
9割が事業所に入るのは、例外に乗っているからです
同じ第41条の第6項です。長いので、大事なところだけ太字にします。
居宅要介護被保険者が指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けたとき(当該居宅要介護被保険者が第46条第4項の規定により指定居宅介護支援を受けることにつきあらかじめ市町村に届け出ている場合であって、当該指定居宅サービスが当該指定居宅介護支援の対象となっている場合その他の厚生労働省令で定める場合に限る。)は、市町村は……当該居宅要介護被保険者に代わり、当該指定居宅サービス事業者に支払うことができる。
第7項 前項の支払があったときは、居宅要介護被保険者に対し居宅介護サービス費の支給があったものとみなす。
そして、その「厚生労働省令で定める場合」が介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第64条です。第1号イには、こう書かれています。
イ ……当該指定居宅サービスが当該指定居宅介護支援に係る居宅サービス計画の対象となっているとき。
⚠ ここが「プランにないから」の正体です。計画の対象になっていないと、この入口を通れません。通れないと第6項が使えず、第1項の原則=償還払いに戻ります。
⚠ ただし、例外はイだけではありません
ここを知らないと、逆に言いすぎになります。施行規則第64条は、第1号にイからニまでの4つのルートを用意しています。
| 中身 | |
|---|---|
| イ | 指定居宅介護支援に係る居宅サービス計画の対象になっているとき(=いちばん多い形) |
| ロ | 基準該当居宅介護支援の場合 |
| ハ | 小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護の計画の対象になっているとき |
| ニ | ⚠ 利用者が自分で作った計画を、あらかじめ市町村に届け出ているとき(いわゆるセルフプラン) |
さらに第2号があります。
二 居宅療養管理指導及び特定施設入居者生活介護を受けるとき。
⚠ この2つは、計画への位置づけがなくても代理受領になります。「プランにないものは全部10割」と言うと、この2つについては誤りです。
◎ ニ(セルフプラン)の存在も、覚えておく価値があります。「ケアマネジャーが付いていないと使えない」わけではありません。本人が計画を作って市町村に届け出れば、代理受領になります。——ただし、給付管理も本人がやることになるので、実務としてはかなり重い形です。
ケアマネジャーが毎月出している書類
指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第14条です。
指定居宅介護支援事業者は、毎月、市町村(審査支払事務を国民健康保険団体連合会に委託している場合にあっては、当該国民健康保険団体連合会)に対し、居宅サービス計画において位置付けられている指定居宅サービス等のうち法定代理受領サービスとして位置付けたものに関する情報を記載した文書を提出しなければならない。
これが、いわゆる給付管理票です。そして市町村の側は——
- 法第41条第9項 市町村は、請求を厚生労働大臣が定める基準および運営基準に照らして審査した上、支払う
- 法第41条第10項 市町村は、その審査・支払の事務を国民健康保険団体連合会に委託できる
事業所の請求と、ケアマネジャーの給付管理票は、突き合わせられます。
⚠ この突合そのものを定めた国の条文までは、今回確認できませんでした。省令38号第14条と法第41条第9項・第10項の帰結として、国保連の審査の中で照合される——というのが、条文から言える範囲です。合わなければ請求は返ってきます。
外れたとき、実際に何が起きるか
| 起きること | 誰にとって |
|---|---|
| 代理受領にならない | 利用者さん。いったん全額を払い、あとから市町村へ請求することになります |
| 事業所の請求が通らない | 事業所。返戻になり、利用者さんから10割を受け取るか、持ち出しになります |
| 運営基準減算 | ⚠ ケアマネジャーの事業所。手順を欠くと居宅介護支援費が100分の50、2月以上続くと算定しない(→なぜ毎月かならず来るのか) |
| 不正利得の徴収 | ⚠ 「偽りその他不正の行為」により支払を受けたときは、支払額の返還に加えて、その額に100分の40を乗じた額を徴収されることがあります(法第22条第3項) |
⚠ 「うっかり外れた」と「不正」はまったく別の話です。上の4つ目は「偽りその他不正の行為」にかかるものです。手順の抜けが直ちにこれになるわけではありません。ただし、ケアマネジャーの側には、この条文がいちばん重いものとして見えています。
だから、こう言えば通ります
ポイントは1つです。「やってほしい」ではなく「プランに載せるにはどうするか」を聞くことです。
「〇〇さん、お風呂をもう1回増やせませんか」
「〇〇さんの入浴を週2→週3にしたいです。プランの変更が要りますか。要るなら、何が必要ですか。こちらで用意するものはありますか」
| 場面 | 言い方の型(いずれも一例です) |
|---|---|
| サービスを足したい | 「プランに載せるには、何が要りますか。担当者会議ですか、主治医の意見ですか」 =手順を聞く形。ケアマネジャーがいちばん答えやすい質問です |
| 急いでいる | 「いつからなら載せられますか。それまでの間、こちらでできることはありますか」 =「今すぐ」ではなく、載る日を確定させる |
| 断られた理由が分からない | 「載せられないのは、給付の話ですか、それとも別の理由ですか。」 =代理受領の話なのか、必要性の判断なのか。まったく別の話です |
| 利用者さんに聞かれた | 「プランに入っていないものは、いったん全額のお支払いになります。ケアマネジャーに確認しますね」 =「使えません」ではありません。⚠ 使えないのではなく、払い方が変わります |
ここから先は、本当に無理です
| 線 | 中身 |
|---|---|
| 法令上の線 (言い方では動きません) | 計画に位置づけがないサービスを、代理受領(1割負担)で提供することはできません。⚠ ただし居宅療養管理指導と特定施設入居者生活介護は例外です(施行規則第64条第2号)。 また、あとから日付をさかのぼって計画に書き足すことはできません。それは§5の4つ目に触れます |
| 事業所で変わる線 (話し合いで動きます) | 計画の変更をどのくらいの早さで回すか/担当者会議の持ち方(テレビ電話の活用を含む)/事業所からケアマネジャーへ情報を渡す形と頻度/「軽微な変更」で済ませるかどうかの判断 ⚠ そもそも「必要かどうか」の判断は、給付の話とは別です。混ぜないでください |
記録にどう残すか
ケアマネジャーに相談したとき
10:15 〇〇さんの入浴回数について、居宅介護支援事業所〇〇 ケアマネジャー〇〇へ電話。「担当者会議を開いてからになる。来週〇日で調整する」との回答。それまでは現行の週2回で継続することを確認。
ご家族から直接頼まれたとき
14:30 ご家族より、次回から掃除も頼みたいとの申し出。「プランに入っていないため、その場ではお受けできない旨と、ケアマネジャーに相談する旨をお伝えした。」同日、ケアマネジャー〇〇へ連絡ずみ。
◎ 「その場では受けず、つないだ」と書けることが、あなたを守ります。断ったのではなく、決められる人につないだという記録になります。
まとめ
- ⚠ 「給付されない」のではなく「代理受領にならず、いったん全額のお支払いになる」
- 法第41条第1項の原則は利用者に支給=償還払い。1割で済むのは第6項の例外に乗っているから
- その入口が施行規則第64条第1号イ=居宅サービス計画の対象になっていること
- ⚠ ルートはイだけではない。ロ(基準該当)・ハ(小多機・看多機)・ニ(セルフプランを市町村に届出)もある
- ⚠ 第2号で、居宅療養管理指導と特定施設入居者生活介護は位置づけなしでも代理受領。「全部10割」は誤り
- ケアマネジャーは毎月、給付管理票を出している(省令38号第14条)。市町村・国保連が審査して支払う(法41条9項・10項)
- 外れると、利用者さん・事業所・ケアマネジャー事業所の3者にそれぞれ別のことが起きる
- 聞き方を「やってほしい」から「プランに載せるには何が要るか」に変える
- ⚠ 「必要かどうか」と「給付になるかどうか」は別の話。混ぜない
やさしい 日本語(にほんご)
1 なにが おきますか
あなたが ケアマネジャーに 言(い)います。
「〇〇さんに、これも して あげたいです」
ケアマネジャーは 言います。
「プランに ないので、できません」
2 なぜ そう 言(い)いますか
お金(かね)の しくみです。
◇ プランに ある → 利用者(りようしゃ)さんは 1わり はらいます。
◇ プランに ない → 利用者さんは ぜんぶ(10わり) はらいます。
「できない」のでは ありません。
「お金が 10ばいに なる」と いう 意味(いみ)です。
ケアマネジャーは、利用者さんの お金を まもって います。
3 あなたは どう 言(い)いますか
- 「プランに 入(い)れるには、なにが 必要(ひつよう)ですか」
——「やって ください」より、ずっと 早(はや)く すすみます。 - 「いつから なら できますか」
- 「それまで、わたしたちが できる ことは ありますか」
4 これは できません
◇ プランに ない ことを、その場(ば)で やること。
◇ あとから 日(ひ)にちを もどして、プランに 書(か)くこと。
家族(かぞく)に たのまれても、その場で 決(き)めません。
「ケアマネジャーに 聞(き)きます」と 言って ください。
そして ノートに 書いて ください。
※ この ページは 日本(にほん)の 法律(ほうりつ)に ついて 書いて います。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見(み)て ください。
あわせて読む
頼まれたときに、何を確かめて、誰につなぐか。いずれも一例です。項目は事業所に合わせて書き換えてお使いください。
困りごとから調べる → 様式をダウンロード根拠にした資料
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第22条第3項/第41条第1項・第6項・第7項・第9項・第10項/第46条第4項
- 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第64条
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第14条
- 指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準(平成12年2月10日 厚生省告示第20号)
- 厚生労働省「介護給付費請求書等の記載要領について」平成13年11月16日 老老発第31号
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。