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管理者・行政の側から

なぜ管理者は「記録がない」を、そこまで問題にするのか

まず、これだけ

ちゃんとやったのに、書いていないだけなのに——「記録がない」と言われると、そう思います。

決まりが名前を挙げて「2年とっておきなさい」と言っている記録は6つあります。⚠ そのうち4つは「何かが起きたとき」の記録です。身体拘束、市町村への連絡、苦情、事故。起きたのに書いていないと、そこだけ空きます。

管理者が見ているのは、記録がきれいかどうかではありません。市や県から求められたときに、出せるかどうかです。出せないという状態そのものが、指摘になります。

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最終更新:2026年9月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 名前を挙げて「2年とっておく」とされた6つ
  2. ⚠ 4つは「何かが起きたとき」の記録です
  3. 管理者の背中に乗っている3つの条文
  4. ◎ ただし「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」
  5. 2年か、5年か — 保存年限が地域で違う理由
  6. ◎ 求められる文書には、上限が決まっています
  7. だから、こう言えば通ります
  8. ここから先は、本当に無理です
  9. 記録にどう残すか
  10. まとめ

名前を挙げて「2年とっておく」とされた6つ

指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第37条です。訪問介護なら省令第37号第39条で、番号は違いますが中身はほぼ同じ形をしています。

第37条第2項 指定介護老人福祉施設は、入所者に対する指定介護福祉施設サービスの提供に関する次の各号に掲げる記録を整備し、その完結の日から二年間保存しなければならない。

記録
施設サービス計画(訪問介護なら訪問介護計画)
第8条第2項による「提供した具体的なサービスの内容等」の記録
身体的拘束等の態様及び時間、その際の入所者の心身の状況、緊急やむを得ない理由の記録
市町村への通知に係る記録(第20条)
苦情の内容等の記録(第33条第2項)
事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録(第35条第3項)

日々の記録は、このうち「二」の1つです。「提供した具体的なサービスの内容等」——これが、いわゆるケース記録・介護記録に当たります。

⚠ 4つは「何かが起きたとき」の記録です

三・四・五・六は、起きなければ書かなくてよい記録です。裏返すと、起きたのに書いていなければ、そこだけがぽっかり空きます。

運営指導で見るのは、まさにその空き方です。「事故報告は出ているのに、処置の記録が無い」「拘束の同意書はあるのに、態様と時間の記録が無い」。◎ 数の多さではなく、対(つい)になっているかを見ています。

とくに三(身体的拘束等)は、条文が4つの要素を並べています。

第11条第5項 指定介護老人福祉施設は、前項の身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。

4つそろって1つの記録です。「やむを得ない理由」だけ書いて「時間」が無い、は条文の求める形になりません。

管理者の背中に乗っている3つの条文

記録が無いときに、誰が何をできるのか。介護保険法にはっきり書かれています。

条文誰が、何をできるか
第23条
(文書の提出等)
市町村は、保険給付に関して必要があると認めるときは、サービスを担当する者等に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を求め、若しくは依頼し、又は当該職員に質問若しくは照会をさせることができる
第24条
(帳簿書類の提示等)
厚生労働大臣又は都道府県知事は、報告若しくは当該居宅サービス等の提供の記録、帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる
「命じ」です。第23条の「求め、依頼し」より強い言葉が使われています
第76条
(報告等)
都道府県知事又は市町村長は、出頭を求め、質問させ、若しくは事業所に立ち入り、その設備若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる

だから、こう考えると分かりやすくなります。
管理者は「記録がきれいかどうか」を見ているのではありません。この3つの条文で外から求められたときに、出せるかどうかを見ています。⚠ 出せないという状態そのものが、指摘の対象になります。 Người quản lý không kiểm tra xem ghi chép có đẹp hay không. Họ kiểm tra xem KHI CHÍNH QUYỀN YÊU CẦU thì có xuất trình được hay không. Không xuất trình được — chính điều đó bị chỉ ra.

◎ ただし「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」

ここは、知っておいてよい一文です。法第24条第4項——そして第76条第2項がこれを準用しています。

第24条第3項 前二項の規定による質問を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があるときは、これを提示しなければならない。

第24条第4項 第一項及び第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

2つとも、事業所の側に立っている条文です。身分証の提示は「関係人の請求があるとき」に義務になります。求めてよいものです。

2年か、5年か — 保存年限が地域で違う理由

省令の条文は「完結の日から二年間」です。⚠ ところが、5年としている自治体があります。間違いではありません。条文の作りがそうなっています。

法第74条第1項・第2項(指定居宅サービス) ……都道府県の条例で定める基準に従い……/運営に関する基準は、都道府県の条例で定める。

法第74条第3項 都道府県が条例を定めるに当たっては、第一号から第三号までに掲げる事項については厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとし、第四号については標準として定めるものとし、その他の事項については厚生労働省令で定める基準を参酌するものとする。

3段階意味
従うべき基準
(1号〜3号)
従業者の基準と員数/居室等の床面積/運営に関する事項のうち「適切な利用、適切な処遇及び安全の確保並びに秘密の保持等に密接に関連するもの」として厚生労働省令が定めるもの
標準
(4号)
利用定員
参酌すべき基準
(その他)
ここは、条例で違う数字にできます。保存年限が2年ではない自治体があるのは、この枠の話です

指定居宅介護支援は、都道府県ではなく市町村の条例です法第81条第1項・第2項)。同じサービスでも、条例を作る主体が違います。

「2年でいいはずです」と言い切らないでください。お住まいの・働いている市町村や都道府県の条例を、一度だけ確認しておくと、以後ずっと迷いません。管理者は、たいていそれを見たうえで言っています。

◎ 求められる文書には、上限が決まっています

令和4年3月31日 老発0331第6号「介護保険施設等の指導監督について」の別添1「介護保険施設等指導指針」に、自治体の側への制約が書かれています。

運営指導(介護サービスの実施状況指導及び最低基準等運営体制指導に限る。)においては、確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わないものとし、確認文書以外の文書は原則求めないものとする。

介護保険施設等において作成、保存等が行われている各種書面について、当該書面に代えて電磁的記録により管理されている場合は、ディスプレイ上で内容を確認することとし、別途、印刷した書類等の準備や提出は求めない。

利用者等へのサービスの質を確認するためにその記録等を確認する場合は、特に必要と判断する場合を除き、対象は原則として3名以内とする。

3つとも、事業所の負担を減らすために書かれた文です。「全員ぶん印刷して」と言われて途方に暮れる前に、この指針があることを思い出してください。

だから、こう言えば通ります

場面言い方の型(いずれも一例です)
「記録がない」と言われた6つのうちの、どれに当たる記録でしょうか。
=日々の記録の話か、事故・苦情・拘束・通知の話かで、直し方がまったく違います
事故のあとに書き足すよう言われた⚠ 「いま書くとしたら、追記の形でよいでしょうか。
=日付をさかのぼって書かない。「〇月〇日追記」と明示して足すのが、確かめられる形です
保存年限を聞かれた省令は2年ですが、うちの保険者の条例は何年でしょうか。
=法第74条第3項・第81条第3項の参酌すべき基準の枠です
運営指導で大量の印刷を求められた◎ 「電磁的記録で管理しているので、画面でご確認いただけますか。
=老発0331第6号の指針にそう書かれています
拘束の記録を求められた態様・時間・心身の状況・やむを得ない理由の4つで書いています。
=第11条第5項が並べている4要素です。そろえて出せば話が早い

ここから先は、本当に無理です

中身
法令上の線
(言い方では動きません)
6種類の記録そのものを、無くすことはできません。省令が名指ししています。
⚠ そして日付をさかのぼって書き直すことは、絶対にしないでください。記録の改ざんは、記録が無いことよりはるかに重い問題になります。書き足すときは追記と分かる形
相談できる線書式/どこまで詳しく書くか/誰が書くか/電子で管理するか
◎ そして運営指導で求められる文書の範囲(確認文書以外は原則求めない、印刷は求めない、記録の確認は原則3名以内)

記録にどう残すか

あとから書き足すとき
〇月〇日 16:40 【〇月〇日 追記】〇月〇日 14:10 の転倒について、看護師〇〇による観察内容を追記する。当日の記録に処置の記載が無かったため。当日行った処置は、患部の冷却と〇分後の再確認。記入者〇〇。

身体的拘束等の記録(4要素をそろえる)
態様:車いすのベルト固定/時間:14:00〜15:30(1時間30分)/心身の状況:立ち上がりを繰り返し、前方へ2回傾く。声かけでは着座を保てず/緊急やむを得ない理由:転倒により頭部を打つ危険が切迫しており、他の方法では回避できないと判断。〇時〇分のカンファレンスで確認。

「対(つい)になっているか」を、自分で見てください。事故報告を出したなら処置の記録がある。苦情を受けたなら内容の記録がある。片方だけの状態が、いちばん指摘されます。

まとめ

やさしい 日本語(にほんご)

1 なにが おきますか

管理者(かんりしゃ)が 言(い)います。
記録(きろく)が ない
あなたは 思(おも)います。
「ちゃんと やった のに。書(か)いて ないだけ なのに」

2 なぜ そう 言(い)いますか

法律(ほうりつ)に 6つの 記録が 書(か)いて あります。
2年(ねん) とって おかなければ なりません。

そのうち 4つは、「なにか あった とき」の 記録です。
① 身体拘束(しんたいこうそく) ② 市(し)への 連絡(れんらく)
③ 苦情(くじょう) ④ 事故(じこ)

あった のに 書いて ないと、そこだけ 空(あ)きます。
市(し)や 県(けん)が 見(み)に 来(き)た とき、
出(だ)せない——それが 問題(もんだい)に なります。

管理者は 「きれいに 書け」と 言って いるのでは ありません。
「出せる ように して おいて」と 言って います。

3 あなたは どう 言(い)いますか

4 これは ぜったいに して は いけません

日(ひ)にちを もどして 書きなおす
 ——これは 改ざん(かいざん)です。
 書いて ない ことより、ずっと 重(おも)い 問題に なります。

◎ あとから 足(た)す ときは、「〇月〇日 追記」と 書いて ください。

※ この ページは 日本(にほん)の 法律に ついて 書いて います。市(し)や 県(けん)で きまりが ちがう ことが あります。あなたの 事業所(じぎょうしょ)の きまりも、かならず 見て ください。

記録の様式を配っています

身体的拘束の4要素、事故の状況と処置。条文が求める項目を落とさない形にしています。いずれも一例です。事業所に合わせて書き換えてお使いください。登録は要りません。

様式をダウンロード → 困りごとから調べる

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公開されている資料をもとに整理しています。
  • 介護保険法(平成9年法律第123号)第23条・第24条・第74条・第76条・第81条
  • 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第8条第2項・第11条第4項〜第6項・第33条・第35条・第37条
  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第37条・第39条
  • 厚生労働省「介護保険施設等の指導監督について(通知)」令和4年3月31日 老発0331第6号(別添1 介護保険施設等指導指針)
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。法令や通知の解釈を最終的に行うのは、所管の行政庁と裁判所です。 運営に関する基準は都道府県または市町村の条例で定められており、記録の保存年限を含め、お住まいの地域で取り扱いが異なります。必ず保険者にご確認ください。 ここで書いているのは、事業者に課されている法令上の枠組みです。特定の誰かの考えや意図を書いたものではありません。 実際の対応は、所属事業所の規程および、保険者の定めに従ってください。制度・通知・法令は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。