転倒を見つけたとき、最初の30秒でやること
床に倒れている方を見つけた。
体は、反射的に抱き起こそうとします。
そこを、こらえてください。骨折していた場合、抱き起こした時点で悪化します。
転倒はゼロにはできません。けれど、起きたあとの数分で、結果は変わります。 見つけてから最初の30秒に、何を見るかをまとめました。
もくじ
最初の一言は「動かさない」です
床に倒れている方を見つけたとき、体は反射的に抱き起こそうとします。 けれど、いちばんやってはいけないのが、これです。
骨折していた場合、抱き起こした時点で悪化します。
とくに大腿骨のつけ根の骨折は、
寝たきりの入口と言われます。早く見つけて手術できれば、また歩ける方が多くいます。
その分かれ目が、最初の数十秒です。
まず、しゃがんで声をかけます。起こさない。動かさない。立たせない。 「立てますか」と聞かないでください。聞かれると、立とうとしてしまいます。
そのまま言える言い方
・「そのままでいてくださいね」
・「どこか痛いところはありますか」
・「頭は打ちましたか」
・「いま人を呼びますね」
30秒で見る、5つのこと
その場を離れずに、この5つだけを見ます。細かい観察は、応援が来てからで足ります。
「頭を打ったか」は、いちばん大事な1項目です。 ご本人が「打っていない」と言っても、見ていなければ分かりません。 記録には「本人は否定。目撃なし」と書いてください。 ここが1〜2か月後に効いてきます(慢性硬膜下血腫)。
骨折を、見のがさないために
高齢の方は、骨折していても「痛くない」と言うことがあります。 認知症のある方は、とくにそうです。ご本人の言葉だけで判断しないでください。
| こんなときは骨折を疑う | やること |
|---|---|
| 股のつけ根を痛がる/片方の足が短く見える・外を向いている | 動かさない。立たせない、歩かせない、引っぱらない そのままの姿勢で支え、毛布などで保温する 発見時刻と、発見時の姿勢を記録する 受診の準備(保険証・お薬手帳・ご家族への連絡) Đừng di chuyển. Gọi ngay y tá và tổ trưởng. |
| 立てない・体重をかけられない | |
| 1か所を押すと強く痛がる(圧痛) | |
| 手首・肩を痛がる(手をついた転倒) | |
| 背中・腰を痛がる(圧迫骨折) |
「歩けたから骨折していない」は、成り立ちません。 いつもと動きがちがう/かばっている/食事に来ない/立ち上がらなくなった—— それだけで、受診を相談する理由になります。
片づける前に、その場を残す
転倒対応でいちばん多く失われる情報が、現場の状況です。 片づけてしまうと、二度と分かりません。
- 倒れていた向きと、頭の方向
- 履物(脱げていないか、かかとを踏んでいないか)
- 床の状態(ぬれ、マットのめくれ)
- 周りの物(何につまずいたか)
- 照明(足元灯はついていたか)
- ベッドの高さ、柵の位置、ナースコールの位置
- 最後にその方を確認した時刻
これがないと、5分前に転んだのか3時間前なのか分かりません。 長く床にいた場合は脱水・低体温も疑うことになります。この1行が、その方の予後を変えます。
写真を撮る場合は、施設の機器で。個人のスマートフォンで撮らない、個人の端末に残さない。 ご本人の同意は、入所時に書面で取っておくのが確実です。
第一報は5分以内。口頭でかまいません
書類はあとです。まず、人に伝えてください。
第一報の言い方(一例)
「◯◯さんが、居室で床に座っているのを発見しました。 意識ははっきりしています。頭は打っていないと本人は言っています。 転んだ瞬間は見ていません。いま、動かさずにそばにいます。」
Ông/Bà 〇〇 đã bị ngã. Ý thức tỉnh táo. Không bị đập đầu.| いつ | 誰に、何を |
|---|---|
| 5分以内 | リーダーへ第一報(口頭でよい) |
| すぐ | 看護師へ。必要なら受診・救急 |
| その日のうち | ご家族へ連絡(管理者の判断で) |
| 24時間以内 | 事故報告書を作成 |
| 該当すれば | 市町村への事故報告(基準は施設のルールを確認) |
| 後日 | 再発防止のカンファレンス |
床から起こすときの順番
骨折がないと確認できた場合にかぎります。迷うときは、起こさないでください。
| やること | |
|---|---|
| 1 | 2人以上で行う。ひとりで持ち上げない |
| 2 | まず横向き → ひじをついて四つばい → いすやベッドにつかまってひざ立ち → 片ひざ立ち → 座る |
| 3 | 本人の力を使う。持ち上げるのではなく、体の向きを変えるのを手伝う |
| 4 | わき・上うでを指でつかまない(あざの原因になります → 赤ゾーンの記事) |
| 5 | 座ったら数分そのまま。すぐ立たせない(立ちくらみ) |
| 6 | 床に長時間いた可能性があるときは、脱水・低体温も疑って看護師へ |
やってはいけないこと
ひとりで抱き起こす
「立てますか」と言って立たせる
片づけてから報告する
「たいしたことない」と自分で判断する
本人が「大丈夫」と言ったから報告しない
「そのままでいてくださいね」と声をかける
その場を離れず、応援を呼ぶ
片づける前に、状況を見る・撮る
判断は看護師とリーダーに渡す
本人が「大丈夫」と言っても、報告する
報告した職員が責められる職場では、小さな転倒が上がってこなくなります。 そして、大きな事故の前ぶれを見つけられなくなります。 最初の一言は「すぐ報告してくれて、ありがとう」に。 Cảm ơn bạn đã báo cáo ngay.
まとめ
- 最初の一言は「動かさない」。「立てますか」と聞かない
- 30秒で見るのは 意識・出血・変形・痛み・頭を打ったか
- 1つでも当てはまれば動かさずに応援と看護師。迷ったら、迷ったほうを選ぶ
- 「歩けたから骨折していない」は成り立ちません
- 片づける前に、向き・履物・床・照明を残す
- 最後に確認した時刻を必ず書く
- 第一報は5分以内、口頭でよい
- 起こすのは骨折がないと確認できた場合だけ。2人以上で、本人の力を使って
ここに書いた手順・時間は、すべて目安と一例です。 実際の対応は、所属施設の規程と、医師・看護師の指示に従ってください。
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 日本整形外科学会 一般向け疾患情報(大腿骨近位部骨折・脊椎圧迫骨折)
- 消費者庁・独立行政法人国民生活センター 高齢者の転倒・転落に関する注意喚起
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。