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頭を打ったあとの観察 — 6時間・24時間・1〜2か月

転んだ直後、意識ははっきりしていた。たんこぶもない。
ご本人も「大丈夫」と言う。

ここで終わりにしてしまうのが、いちばん多い形です。

頭の中の出血は、すぐには症状が出ないことがあります。 数時間後、翌日、1週間後、そして1〜2か月後。 それぞれに、見るべきサインがちがいます。

最終更新:2026年8月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 頭は、あとから症状が出ることがあります
  2. 4つの時期に、分けて見る
  3. 直後〜6時間 — ここがいちばん危険です
  4. 24時間・1週間 — 「いつもとちがう」を拾う
  5. 1〜2か月後 — いちばん見逃されるのが、ここです
  6. 記録と申し送りの、書き方
  7. まとめ

頭は、あとから症状が出ることがあります

転んだ直後、意識もはっきりしていて、たんこぶもない。ご本人も「大丈夫」と言う。 ここで終わりにしてしまうのが、いちばん多い形です。

けれど頭の中の出血は、すぐには症状が出ないことがあります。 数時間後、翌日、1週間後、そして1〜2か月後。 それぞれに、見るべきサインがちがいます。

「打ったか分からない」も、記録に残してください。
見ていない転倒では、頭を打ったかどうかは分かりません。 ご本人が「打っていない」と言っても、「本人は否定。目撃なし」と書きます。 この1行が、1〜2か月後に効いてきます。

4つの時期に、分けて見る

下は目安です。施設の規程と、看護師・医師の指示が優先されます。

頭を打ったあと、見る時期は4つ 直後〜6時間 いちばん危険な時間 意識・返事・吐き気・嘔吐・けいれん・頭痛・手足の力の左右差・瞳の大きさ → 1つでも出たら救急 24時間 いつもより眠い・話がかみ合わない・食べない・歩き方が変わった → 看護師へ 1週間 頭痛・吐き気・ふらつきが続く → 看護師へ報告 1〜2か月 いちばん見逃されやすい時期 急に歩けない・ぼんやりする・失禁が増えた・食べない・片側が動きにくい → 受診を相談
図:観察の時期と、そこで見るサインの一例です

直後〜6時間 — ここがいちばん危険です

この時間帯は、1つでも出たら救急と決めておいてください。迷う余地を作らないためです。

見るところ出たら救急を検討するサイン
意識・返事呼びかけへの反応が鈍い、話しかけても目を開けない、返事がかみ合わない
吐き気・嘔吐吐く。くり返し吐く場合はとくに
けいれん手足がガクガクする、体がつっぱる
頭痛強い頭痛、だんだんひどくなる頭痛
手足の力左右差。片方の握力が弱い、片方の足が上がらない
瞳の大きさ左右で大きさがちがう

抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)を飲んでいる方は、別枠で考えてください。
ワーファリン、イグザレルト、エリキュース、リクシアナなど。 出血が広がりやすいとされており、頭を打った時点で受診の対象とする施設もあります。 その方が該当するかを、転倒の前から把握しておくことが実務では効きます。

6時間の観察は、時刻を決めておくと続きます。
「6時間観察」とだけ書くと、実際には見られません。 「2:40発見 → 3:40/4:40/5:40/6:40/7:40/8:40に訪室」と、 記録に時刻を書き出しておくと、勤務が変わっても引き継がれます。

24時間・1週間 — 「いつもとちがう」を拾う

この時期に出るのは、はっきりした症状ではなく、ようすの変化であることが多いとされています。

時期見ること出たらどうする
24時間 いつもより眠い/話がかみ合わない/食べない/歩き方が変わった/立ち上がらなくなった 看護師へ。受診の判断を仰ぐ
1週間 頭痛・吐き気・ふらつきが続く 看護師へ報告

「なんとなく、いつもとちがう」は、報告してよい理由になります。

説明できなくてもかまいません。説明できないまま報告できる職場のほうが、見つかります。

1〜2か月後 — いちばん見逃されるのが、ここです

慢性硬膜下血腫まんせいこうまくかけっしゅは、 頭を打ってから1〜2か月あとに症状が出ることがあるとされています。

そのころには、誰も転倒と結びつけません。
「認知症が進んだ」「年だから」と受け取られて、見逃されるのが、いちばん多い形です。

この病気は、手術で回復することがあると言われています。 だからこそ、気づけるかどうかが大きく変わります。

1〜2か月後のサイン誤解されやすい受け取られ方
急に歩けなくなった「足が弱った」「リハビリ不足」
ぼんやりする・反応が鈍い「認知症が進んだ」
失禁が増えた「おむつを替えよう」
食べなくなった「食欲が落ちた」「嚥下が落ちた」
片側の手足が動きにくい「疲れている」

だから、頭を打った日を記録に残してください。 1〜2か月後にその方のようすが変わったとき、記録があれば、たどれます。
くわしくは → 慢性硬膜下血腫 — 1〜2か月後に出てくる症状

記録と申し送りの、書き方

観察を続けるには、記録に「いつ見るか」まで書くのがいちばん確実です。

✕ 続かない書き方

「頭部打撲の可能性あり。経過観察。」

いつまで、何を見るのかが決まっていません。 次の勤務者は「経過観察」としか分からず、1か月後には誰も覚えていません。

〇 引き継がれる書き方

頭部打撲:本人は否定、外表所見なし、目撃なし。
6時間は1時間ごとに訪室(3:40/4:40/5:40/6:40/7:40/8:40)。
8/26朝・9/1・9/25にも様子を確認する。
抗凝固薬(リクシアナ)内服中。」

「頭を打った日」を、その方の記録の目立つところに残しておいてください。 転倒記録の中に埋もれると、1〜2か月後には探せません。 フェイスシートや申し送りノートの見出しに日付だけでも書いておく方法があります。

ご家族にも、時期を伝えておく

面会のときにご家族が気づくこともあります。何を見ればよいかを先に伝えておくと、目が増えます。

お伝えする言い方の一例 「頭を打たれた可能性がありますので、 しばらく様子を見てまいります。まれに1〜2か月ほどたってから、 急にぼんやりする、歩きにくくなる、といった変化が出ることがあります。 ご面会のときに『いつもとちがう』とお感じになりましたら、遠慮なくお知らせください。」

まとめ

ここに書いた時期・サインは、すべて目安一例です。医学書ではありません。 実際の判断は、所属施設の規程と、医師・看護師の指示に従ってください。

この方は、どこに気をつける?

お薬や状態を選ぶと、注意する点が出ます。抗凝固薬を飲んでいる方の確認にも使えます。

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根拠にした資料

個人の経験ではなく、公表されている資料をもとに整理しています。
  • 日本脳神経外科学会/日本脳神経外傷学会「頭部外傷治療・管理のガイドライン」の一般向け解説
  • 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」(出血傾向に関する項)
  • 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
  • 日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 手順・寸法・時間は、すべて目安一例です。 皮ふの異常、押しても消えない赤み、急に広がるあざ、痛みを伴うものは、看護師・医師にご相談ください。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。