頭を打ったあとの観察 — 6時間・24時間・1〜2か月
転んだ直後、意識ははっきりしていた。たんこぶもない。
ご本人も「大丈夫」と言う。
ここで終わりにしてしまうのが、いちばん多い形です。
頭の中の出血は、すぐには症状が出ないことがあります。 数時間後、翌日、1週間後、そして1〜2か月後。 それぞれに、見るべきサインがちがいます。
もくじ
頭は、あとから症状が出ることがあります
転んだ直後、意識もはっきりしていて、たんこぶもない。ご本人も「大丈夫」と言う。 ここで終わりにしてしまうのが、いちばん多い形です。
けれど頭の中の出血は、すぐには症状が出ないことがあります。 数時間後、翌日、1週間後、そして1〜2か月後。 それぞれに、見るべきサインがちがいます。
「打ったか分からない」も、記録に残してください。
見ていない転倒では、頭を打ったかどうかは分かりません。
ご本人が「打っていない」と言っても、「本人は否定。目撃なし」と書きます。
この1行が、1〜2か月後に効いてきます。
4つの時期に、分けて見る
下は目安です。施設の規程と、看護師・医師の指示が優先されます。
直後〜6時間 — ここがいちばん危険です
この時間帯は、1つでも出たら救急と決めておいてください。迷う余地を作らないためです。
| 見るところ | 出たら救急を検討するサイン |
|---|---|
| 意識・返事 | 呼びかけへの反応が鈍い、話しかけても目を開けない、返事がかみ合わない |
| 吐き気・嘔吐 | 吐く。くり返し吐く場合はとくに |
| けいれん | 手足がガクガクする、体がつっぱる |
| 頭痛 | 強い頭痛、だんだんひどくなる頭痛 |
| 手足の力 | 左右差。片方の握力が弱い、片方の足が上がらない |
| 瞳の大きさ | 左右で大きさがちがう |
抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)を飲んでいる方は、別枠で考えてください。
ワーファリン、イグザレルト、エリキュース、リクシアナなど。
出血が広がりやすいとされており、頭を打った時点で受診の対象とする施設もあります。
その方が該当するかを、転倒の前から把握しておくことが実務では効きます。
6時間の観察は、時刻を決めておくと続きます。
「6時間観察」とだけ書くと、実際には見られません。
「2:40発見 → 3:40/4:40/5:40/6:40/7:40/8:40に訪室」と、
記録に時刻を書き出しておくと、勤務が変わっても引き継がれます。
24時間・1週間 — 「いつもとちがう」を拾う
この時期に出るのは、はっきりした症状ではなく、ようすの変化であることが多いとされています。
| 時期 | 見ること | 出たらどうする |
|---|---|---|
| 24時間 | いつもより眠い/話がかみ合わない/食べない/歩き方が変わった/立ち上がらなくなった | 看護師へ。受診の判断を仰ぐ |
| 1週間 | 頭痛・吐き気・ふらつきが続く | 看護師へ報告 |
「なんとなく、いつもとちがう」は、報告してよい理由になります。
説明できなくてもかまいません。説明できないまま報告できる職場のほうが、見つかります。
1〜2か月後 — いちばん見逃されるのが、ここです
慢性硬膜下血腫は、 頭を打ってから1〜2か月あとに症状が出ることがあるとされています。
そのころには、誰も転倒と結びつけません。
「認知症が進んだ」「年だから」と受け取られて、見逃されるのが、いちばん多い形です。
この病気は、手術で回復することがあると言われています。 だからこそ、気づけるかどうかが大きく変わります。
| 1〜2か月後のサイン | 誤解されやすい受け取られ方 |
|---|---|
| 急に歩けなくなった | 「足が弱った」「リハビリ不足」 |
| ぼんやりする・反応が鈍い | 「認知症が進んだ」 |
| 失禁が増えた | 「おむつを替えよう」 |
| 食べなくなった | 「食欲が落ちた」「嚥下が落ちた」 |
| 片側の手足が動きにくい | 「疲れている」 |
だから、頭を打った日を記録に残してください。
1〜2か月後にその方のようすが変わったとき、記録があれば、たどれます。
くわしくは → 慢性硬膜下血腫 — 1〜2か月後に出てくる症状
記録と申し送りの、書き方
観察を続けるには、記録に「いつ見るか」まで書くのがいちばん確実です。
「頭部打撲の可能性あり。経過観察。」
いつまで、何を見るのかが決まっていません。
次の勤務者は「経過観察」としか分からず、1か月後には誰も覚えていません。
「頭部打撲:本人は否定、外表所見なし、目撃なし。
6時間は1時間ごとに訪室(3:40/4:40/5:40/6:40/7:40/8:40)。
8/26朝・9/1・9/25にも様子を確認する。
抗凝固薬(リクシアナ)内服中。」
「頭を打った日」を、その方の記録の目立つところに残しておいてください。 転倒記録の中に埋もれると、1〜2か月後には探せません。 フェイスシートや申し送りノートの見出しに日付だけでも書いておく方法があります。
ご家族にも、時期を伝えておく
面会のときにご家族が気づくこともあります。何を見ればよいかを先に伝えておくと、目が増えます。
お伝えする言い方の一例 「頭を打たれた可能性がありますので、 しばらく様子を見てまいります。まれに1〜2か月ほどたってから、 急にぼんやりする、歩きにくくなる、といった変化が出ることがあります。 ご面会のときに『いつもとちがう』とお感じになりましたら、遠慮なくお知らせください。」
まとめ
- 頭はあとから症状が出ることがあります。「そのときは大丈夫だった」で終わらせない
- 見る時期は 直後〜6時間/24時間/1週間/1〜2か月
- 直後〜6時間は、意識・嘔吐・けいれん・頭痛・手足の左右差・瞳の大きさ。1つでも出たら救急
- 抗凝固薬を飲んでいる方は、転倒の前から把握しておく
- 6時間の観察は、時刻を書き出すと引き継がれます
- 24時間〜1週間は「いつもとちがう」を拾う
- 1〜2か月後が、いちばん見逃されます。「認知症が進んだ」と受け取られがちです
- 頭を打った日を、探せる場所に残す
ここに書いた時期・サインは、すべて目安と一例です。医学書ではありません。 実際の判断は、所属施設の規程と、医師・看護師の指示に従ってください。
あわせて読む
根拠にした資料
- 日本脳神経外科学会/日本脳神経外傷学会「頭部外傷治療・管理のガイドライン」の一般向け解説
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル」(出血傾向に関する項)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。