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転倒

慢性硬膜下血腫 — 1〜2か月後に出てくる症状

「最近、この方、急に弱られましたね」
「認知症が進んだのかもしれません」

——その2か月前に、転倒はありませんでしたか。

慢性硬膜下血腫まんせいこうまくかけっしゅは、 頭を打ってから1〜2か月後に症状が出ることがあるとされています。 そのころには、誰も転倒と結びつけません。結びつけるには、記録が要ります。

最終更新:2026年8月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. なぜ、結びつかないのか
  2. どんなサインが出るか
  3. 気づきやすい方の特徴
  4. 1〜2か月後に、たどれるようにしておく
  5. 気づいたときに、どう上げるか
  6. まとめ

なぜ、結びつかないのか

慢性硬膜下血腫まんせいこうまくかけっしゅは、 頭を打ってから1〜2か月ほどたって症状が出ることがあるとされています。

問題は、そのタイミングです。1〜2か月たつと、誰も転倒を覚えていません。

「最近、この方、急に弱られましたね」——ここで話が終わってしまいます。

転倒と結びつけるには、「いつ頭を打ったか」の記録が要ります。記憶では届きません。

いちばん多い受け取られ方が「認知症が進んだ」です。
ぼんやりする、失禁が増える、食べなくなる、歩けなくなる—— 認知症の進行として説明がついてしまうため、そこで止まります。

この病気は、手術で回復することがあると言われています。 だからこそ、気づけるかどうかで、その方のこれからが変わります。

どんなサインが出るか

下は一般に言われている症状の目安です。診断は医師が行います。 職員の役割は、気づいて、つなぐことです。

現場で見えるかたち周りの受け取られ方(ここで止まりやすい)
急に歩けなくなった
足が前に出ない、すり足になった
「足が弱った」「リハビリが足りない」
ぼんやりする
反応が鈍い、話がかみ合わない、眠りがち
「認知症が進んだ」
失禁が増えた 「おむつを替えよう」「排泄の失敗が増えた」
食べなくなった 「食欲が落ちた」「嚥下が落ちた」
片側の手足が動きにくい
握力の左右差、片方の足が上がらない
「疲れている」「痛みをかばっている」
頭痛・吐き気が続く 「体調がすぐれない」

特徴として、しばしば挙げられるのが「急に」という点です。 認知症の進行は、ふつうもっとゆっくりです。 数日〜数週間のうちに、はっきり変わったときは、 「年のせい」で片づける前に一度立ち止まってください。

気づきやすい方の特徴

次に当てはまる方は、頭を打ったことが分かった時点で、記録に印をつけておくと役に立ちます。

とくに注意して見る方
  • 抗凝固薬を飲んでいる方
    ワーファリン/イグザレルト/エリキュース/リクシアナ など
  • 抗血小板薬を飲んでいる方
    バイアスピリン/プラビックス など
  • お酒をよく飲んでこられた
  • くり返し転んでいる
忘れられやすい状況
  • 本人は「打っていない」と言った
  • たんこぶも出血もなかった
  • その日は元気だった
  • 見ていない転倒だった
  • 入院や外泊をはさんだ
  • 担当職員が替わった

「打ったか分からない」ときこそ、記録に残してください。
見ていない転倒では、頭を打ったかどうかは分かりません。 「本人は否定。目撃なし。頭部打撲は不明」——これが正確な記録です。 「打っていない」と断定して書くと、1〜2か月後にたどれなくなります。

1〜2か月後に、たどれるようにしておく

転倒記録の中に書いてあっても、1〜2か月後には探せません。 探せる場所に置くのが、この記事のいちばんの中身です。

やり方の一例ねらい
フェイスシートや個別の記録の見出しに日付を書く 「2026/8/25 頭部打撲の可能性(目撃なし)」と1行。毎日目に入る場所に置く
記録に再確認の予定日を書き出す 「9/1・9/25・10/25に様子を確認」。日付があると、実行されます
申し送りノートに継続項目として残す 勤務が替わっても引き継がれます
受診・往診のときの持参メモに入れる 医師に「いつ頭を打ったか」が伝わります。ここがいちばん効きます

医師に伝えるとき、日付が言えるかどうかで話が変わります。
「たしか、少し前に転んだと思います」ではなく、 「8月25日に転倒し、頭部打撲の可能性がありました。目撃はしていません」この一言が、検査につながることがあります。

気づいたときに、どう上げるか

職員が診断をする必要はありません。見たことを、そのまま伝えれば足ります。

✕ 伝わりにくい言い方

「最近、◯◯さん、なんだか元気がないです」
「認知症が進んだみたいです」

受け手が「年だから」で処理できてしまいます。

〇 動く言い方

「◯◯さん、先週から急に歩き方が変わって、失禁も増えています。
8月25日に転倒があって、頭部打撲は不明と記録に残っています。
抗凝固薬を飲んでおられます。受診を相談できますか。

「変化」と「転倒の日付」を、同じ文の中に入れてください。 このふたつが並んだ時点で、話は「年のせい」から離れます。

ご家族にも、先に伝えておく

面会のご家族のほうが、変化に気づくことがあります。何を見ればよいかを先にお伝えしておくと、目が増えます。

お伝えする言い方の一例 「先日、転倒があり、頭を打たれた可能性がございました。 まれに1〜2か月ほどたってから、急にぼんやりする、歩きにくくなる、といった変化が出ることがあります。 ご面会のときに『いつもとちがう』とお感じになりましたら、遠慮なくお知らせください。 こちらでも、しばらく注意して見てまいります。」

まとめ

この記事は、病気を見分けるためのものではありません。医学書でもありません。 書いてあることは一般に言われている目安で、診断は医師が行います。 実際の判断は、所属施設の規程と、医師・看護師の指示に従ってください。

この方は、どこに気をつける?

お薬や状態を選ぶと、注意する点が出ます。抗凝固薬を飲んでいる方の確認にも使えます。

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根拠にした資料

個人の経験ではなく、公表されている資料をもとに整理しています。
  • 日本脳神経外科学会 一般向け疾患解説(慢性硬膜下血腫)
  • 日本脳神経外科学会/日本脳神経外傷学会「頭部外傷治療・管理のガイドライン」の一般向け解説
  • 日本老年医学会「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」
  • 厚生労働省「認知症施策推進大綱」および認知症に関する一般向け資料
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 手順・寸法・時間は、すべて目安一例です。 皮ふの異常、押しても消えない赤み、急に広がるあざ、痛みを伴うものは、看護師・医師にご相談ください。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。