傾眠だけれど口を開ける方への食事介助
目は開いていない。呼んでも返事がはっきりしない。
でも、スプーンを口元に持っていくと、口を開ける。
この方が、いちばん危ないタイプです。
口を開けるのは、反射です。食べる準備ができている、という意味ではありません。
もくじ
口が開く ≠ 飲み込める
「開口したから食べられる」は、いちばん危険な思い込みです。
開口は反射であって、飲み込める証拠ではありません。
- 口を開けるのは、反射です
- 覚醒していないと、飲み込む反射が起きないまま、のどに溜まります
- そしてむせません。静かに気管へ入ります(不顕性誤嚥)
- 食事の場では何も起きません。数日後、熱として出ます
傾眠のまま食べさせ続けると、誤嚥性肺炎をくり返し、そのたびに弱っていきます。 そして原因は「年だから」とされてしまいます。
Mở miệng chỉ là phản xạ — KHÔNG có nghĩa là nuốt được. Nếu chưa tỉnh táo, đừng cho ăn.原則は、ひとつです
目を開けて、はっきり返事があるまで、食べさせない。
「時間だから」で始めない。これがいちばん多い事故のきっかけです。 覚醒していない日は、食べさせない。それは手抜きではなく、正しい判断です。
起こす工夫
- 声かけ・氏名を呼ぶ
- 手を握る
- おしぼりで顔と手を拭く
- 座位に起こす/車いすに移る
- 音楽をかける/窓を開ける
起こしてから15分以上あけてください。起きた直後は、まだ反射が戻っていません。
それでも覚醒しないなら、食べさせない。時間をずらす/看護師に相談する。
それでも食べていただくときの、確認のしかた
覚醒が確認できて食事を始めたあとも、1回ごとに確かめます。
- 一口目はとろみ水から。反応(のどぼとけの動き)を必ず確認
- 1回ごとに、飲み込みを目で確認。確認できなければ次を入れない
- 途中で目がとろんとしてきたら、そこでやめる
- 食後に「あー」と声を出してもらう。出せないなら口の中を見る(→ 食後に「あー」と言ってもらう)
- その日の夜と翌朝、体温を必ず測る
記録に必ず書くこと
| 項目 | 書き方(一例) |
|---|---|
| 覚醒状態 | 「開眼あり・返事あり」/「開眼なし・開口のみ」 |
| 起こすために何をしたか | 「氏名を呼ぶ、おしぼりで顔を拭く、車いすへ移乗」 |
| 何分待ったか | 「20分待つも覚醒せず」 |
| 摂取量 | 「主食2割/副食0」 |
| 途中でやめた理由 | 「覚醒不良のため中止、看護師〇〇へ報告」 |
「覚醒不良のため中止」と書くことに、ためらいが要らない職場にしてください。 書けないと、次の人がまた同じ状況で食べさせてしまいます。
なぜ傾眠なのか、を看護師に伝える
傾眠には理由があります。介護職が判断することではありませんが、気づいたことを伝えることはできます。
| 見ておくとよいこと | なぜ |
|---|---|
| 睡眠薬・向精神薬の内服時刻 | 効いている時間に食事が重なっていないか |
| 夜間の睡眠 | 眠れていないぶん、日中に眠くなっていないか |
| 前日と比べてどうか | 急に傾眠が強くなったのは、体調変化のサインかもしれません |
| 熱・脱水 | ぼんやりする原因になります |
| 食事の時間帯 | いつも同じ時間だけ眠いなら、時間をずらせないか |
介護度と、誤嚥のリスクは比例しません
要介護5で全介助の方には、職員がついています。だから、何かあればすぐ気づけます。
危ないのは、要介護3〜4で「自分で食べられる」とされている方です。 職員は別の方の介助についていて、誰も見ていません。
そして、もうひとつ危ないのが、この記事の「傾眠だけれど、口に入れると開ける」方です。
自分で食べる方には、食事の後半に一度、そばに行って見てください。 前半は問題なくても、疲れてくる後半に事故が起きます。 食事時間が延びていないかを記録するのが、最初のサインになります。
まとめ
- 口が開くのは反射。飲み込める証拠ではない
- 覚醒していないと、のどに溜まる。そしてむせない
- 原則は「目を開けて、はっきり返事があるまで食べさせない」
- 起こしてから15分以上あける
- 覚醒しないなら食べさせない。「覚醒不良のため中止」と記録する
- その日の夜と翌朝、体温を測る
- 介護度とリスクは比例しない
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づく喀痰吸引等研修および認定特定行為業務従事者の制度
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 消費者庁 高齢者の窒息事故に関する注意喚起(もち等による窒息)
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類・とろみの段階に関する一般向け資料
- 日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン 気道異物除去・一次救命処置
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。