移乗は力ではなく距離と角度 — 車いすの置き方
移乗が「うまい人」と「そうでない人」の差は、力ではありません。
準備にかける30秒の差です。 車いすを寄せる、角度をつける、高さを合わせる、ブレーキを確認する、フットサポートをどける。
これをやると、持ち上げる必要がなくなります。やらないと、力で何とかするしかなくなります。
移乗を4つに分けて見る
| 段階 | 起きること | やり直しがきくか |
|---|---|---|
| ① 準備 | 距離・角度・高さ・ブレーキ | やり直しがききます。ここで9割決まります |
| ② 立つ | 立ちくらみ・ひざ折れ/足が床についているか | まだ座り直せます |
| ③ 回る | いちばん崩れる場面。足が回らない・ねじれる | 途中でやめられません |
| ④ 座る | 浅く座ってずり落ちる/尻もち・すねを打つ | 途中でやめられません |
①をきちんとやれば、③④はほとんど起きません。事故は「準備の省略」から起きます。
距離と角度で、力はいらなくなります
「斜め」とは、車いすを かたむける(傾ける)ことではありません。 上から見たときに、ベッドに対して斜めの向きに置く、という意味です。車いすは水平のままです。
ねらいは「本人が回る量を減らすこと」だけです。回る量が減れば、足がついてきて、ねじれず、崩れません。
"Đặt chéo" nghĩa là đặt xe lăn chéo góc so với giường khi nhìn từ trên xuống — KHÔNG phải nghiêng xe lăn.「30度」も「20cm」も、目安です。大事なのは数字ではなく、回る量と距離を減らすこと。 ベッドの向き、部屋の広さ、麻痺の側によって、置ける位置は変わります。 その方にとって回りやすい向きを、チームで決めて共有してください。
高さも、そろえます
| 場面 | 合わせかた |
|---|---|
| ベッド → 車いす | ベッドを車いすの座面と同じか、わずかに高く。下り坂のほうが移りやすい |
| 車いす → ベッド | ベッドをわずかに低く。またはいったん端座位で止める |
| 本人の足 | 足の裏が床にしっかりつく高さ。宙に浮いていると立てません |
| 職員の腰 | 介助の前にベッドを上げる。そして終わったら必ず下げる |
ベッドの高さは、2回変えます。「介助のために上げる」→「終わったら下げる」。
下げ忘れが、転落事故になります(→ 介助のあと、ベッドを下げ忘れていませんか)。
準備の7つを、声に出す
| 確認すること | 今日できること |
|---|---|
| ① ブレーキ | かけたら、押して効きを確かめる/タイヤの空気が抜けているとブレーキは効きません(月1回、全台)/ベッドのキャスターも固定されているか/「かけたつもり」がいちばん危ない |
| ② 距離と角度 | 20cm以内まで寄せる/斜め(30度くらい)に置く/麻痺のある方は健側へ回る |
| ③ 高さ | 移る先とほぼ同じ高さ(わずかに下り坂だと楽)/足の裏が床につく高さか |
| ④ フットサポート | 足を必ず下ろす/どけられる型なら、どける/固定式なら角にカバー/座ったら必ず戻す(引きずり防止) |
| ⑤ アームサポート | 跳ね上げ式・着脱式なら上げる/外す/戻すときは手と腕の位置を見てから(挟み込み) |
| ⑥ 周りと足元 | 床の物をどける(スリッパ・コード・ゴミ箱・オーバーテーブル)/床が濡れていないか/履物(かかとを踏んでいないか)/点滴・カテーテル・酸素チューブが引っかかっていないか |
| ⑦ 本人の準備 | これから何をするか伝える/いったん座って30秒(立ちくらみ)/眠っている・ぼんやりしているなら待つ/痛みがないか聞く/本人にできることは、してもらう |
この7つを、順番に声に出してください。
「ブレーキ、よし」「フットサポート、上げます」「高さ、合わせます」。
声に出すと、飛ばさなくなります。そして、まわりの職員も気づけます。
はじめて日本の現場で働く職員にも、これがいちばん伝わる教え方です。
立ち上がりは「おじぎ」から
| やること | |
|---|---|
| 1 | 浅く座り直す(深く座ったままでは立てません) |
| 2 | 足を手前に引く。ひざより後ろに足首がくるように |
| 3 | おじぎをしてもらう。おでこが つま先の上に来るくらいまで前へ |
| 4 | その勢いでおしりが自然に浮きます。職員は支えるだけ |
| 5 | 足ごと向きを変える。腰をひねらない |
| 6 | 座るときはゆっくり。座面を手で確かめてもらう。深く座れたか確認 |
この形どおりにいかないほうが、ふつうです
ここに書いたのは基本の形です。実際には、体が大きい方、急に力が抜ける方、足が絡まる方、抱えられるのを嫌がる方。 「この形どおりにいかない方」のほうが多いかもしれません。
それは、あなたの技術の問題ではありません。 そういう場合にできることは 教科書どおりにいかない方への移乗 にまとめました。
まとめ
- 差がつくのは力ではなく、準備の30秒
- 向かい合わせ・遠いと、回る量が180度になる
- 20cm以内・斜め30度で、回る量は3分の1くらいに
- 「斜め」は車いすを傾けることではない。置く向きの話
- 高さは移る先とそろえる。上げたら下げる
- 準備の7つを声に出す
- 立ち上がりは「おじぎ」から。ひねらず足ごと回る
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日 基発0618第1号)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 厚生労働省 労働者災害補償保険(労災保険)制度に関する一般向け案内
- 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 介護作業の腰痛予防に関する資料
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。