介助での腰痛は、あなたのやり方が悪いからではない
腰が痛くならない介護職員は、いません。
距離と角度に気をつけても、用具を使っても、負担をゼロにはできません。 書かれているのは「負担を減らす」方法であって、「痛くならない方法」ではありません。
だから、腰が痛いことは、あなたのやり方が悪い証拠ではありません。
もくじ
職員の腰痛も、事故です
移乗は、利用者さんと職員の両方がけがをする、めずらしい事故です。
腰を痛めた職員は、次から力に頼れなくなり、介助がもっと危なくなります。
あなたの体を守ることは、利用者さんを守ることと同じことです。
「もっとうまくやれば」と、自分を責めない
「もっとうまくやれば痛くならないはずだ」と、自分を責めないでください。
痛みが出たら申告する。用具を入れる。人数を増やす。——それが正しい対応です。
こんなときは、こうする
| こんなとき | やること |
|---|---|
| その場でピキッときた | その場で作業をやめる。無理に続けない。すぐリーダーに言う |
| その日の夜から痛い | 翌日、必ず申告する。「昨日の移乗のとき」と、いつ・何をしていたかを言う |
| 前から痛いが我慢している | 言ってください。痛みをかばうと、介助が不安定になり、利用者さんが危なくなります |
| しびれ・力が入らない | すぐ受診。放置すると長引きます |
労災になる場合があります
□ その場で申告する(あとからだと認められにくくなります)
□ いつ・どの介助で・どうなったかを記録に残す
□ 費用は原則、労災保険で扱われます
□ 申告したことで不利益な扱いを受けることはありません
「これくらいで言うのは恥ずかしい」と思わないでください。 腰を壊した職員が辞めていくことが、施設にとっていちばんの損失です。
実際の手続き・給付の範囲は、状況によって異なります。 まず管理者に申告し、施設の窓口や、お住まいの地域の労働基準監督署にご相談ください。
負担を減らす5つの基本
| やること | ねらい | |
|---|---|---|
| 1 | ベッドの高さを上げる | 中腰でやらない。調整の手間を惜しまない(終わったら下げる) |
| 2 | 近づく | 体を離して腕を伸ばさない。自分の体に引き寄せる |
| 3 | 足を開く・ひざを使う | 腰を曲げるのではなく、ひざを曲げる |
| 4 | ねじらない | 腰をひねる動きが、いちばん腰を壊します。足ごと向きを変える |
| 5 | 持ち上げない | すべらせる・向きを変える。用具を使う |
用具の選び方は わきをつかまない — 手を置く場所 の表にまとめてあります。 リフトは、職員の腰を守るいちばん確実な方法です。
用具が「あるのに使われない」理由
①置き場所が遠い ②使い方を習っていない ③時間がかかると思っている。
どれも職員のやる気の問題ではありません。
置き場所を近くする、研修をする、実際は速いことを見せる。これは施設が用意する側の仕事です。
数えると、用具を入れる根拠になります
月1回、人数と用具で数えてください。
| 数えること | 読み方(一例) |
|---|---|
| 1人介助での事故・ヒヤリの件数 | 多ければ、2人でやる基準を作る根拠になります |
| 用具を使わなかった件数 | 用具の置き場所・研修を見直す |
| 職員の腰痛の申告件数 | 件数が出ていれば、リフト導入の根拠になります |
| 「呼べなかった」件数 | 人員配置の根拠になります |
| 同じ方に集中 | その方の方法・用具・人数を、個別に決め直す |
集計表は 様式のダウンロード から印刷して使えます。
まとめ
- 職員の腰痛も、この分野の事故のうち
- 腰が痛くならない介護職員はいない。やり方の問題ではない
- ピキッときたらその場でやめて、その場で申告
- 労災になる場合がある。あとからだと認められにくい
- 高さ・近づく・ひざ・ねじらない・持ち上げない
- 用具が使われないのは、置き場所と研修の問題
- 腰痛の申告件数が、リフト導入の根拠になる
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日 基発0618第1号)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 厚生労働省 労働者災害補償保険(労災保険)制度に関する一般向け案内
- 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 介護作業の腰痛予防に関する資料
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。