教科書どおりにいかない方への移乗
距離を詰めて、斜めに置いて、高さを合わせても、その形どおりにいかない方がいます。
体が大きい。急に力が抜ける。足が絡まる。抱えられるのを嫌がる。拘縮が強い。
これは、職員の技術不足ではありません。 方法・用具・人数を変えるべきサインです。
もくじ
状態べつに、現実的にできること
| こういう方 | なぜ基本形でいかないか | 現実的にできること |
|---|---|---|
| 体が大きい・体重がある | 距離と角度を工夫しても、支える重さは変わりません | 最初から2人を前提にする(1人でやる前提を捨てる)/リフト・ボードの対象として上げる/「ひとりでできる職員がいる」を基準にしない |
| 急に力が抜ける・脱力する | 立位介助の前提そのものが成り立ちません | 立たせようとしない。ボード・リフトへ切り替える/抜けやすい時間帯を記録(朝/夕/食前/薬のあと)/崩れたら床へ下ろす |
| 足が絡まる・足が出ない | 回るときに足だけが取り残されます。ここですね・ひざの内出血が起きます | 回る量を減らす(斜めに置く)/足の位置を先に置いてから回る/2人なら1人が足を担当する/履物・ズボンの裾を確認 |
| 抱えられるのを嫌がる 触られるのを嫌がる |
密着する介助ができません。無理にやれば抵抗され、双方がけがをします | 触れる場所を、本人と決めておく/声かけと順番を変えてみる/時間を変える/同性の職員で/担当を替える/用具を使って、接触を減らす/無理に続けない。それは虐待になりえます |
| 拘縮が強い | 支えられる場所が限られ、持つところがありません | 無理に開かない・伸ばさない/リフトのスリングの形と種類をリハビリ職・相談員に相談/2人で、時間をかけて |
| 急に突っ張る・力が入る | タイミングが読めません。職員が構える前に動きます | 前ぶれを記録する(表情・声・体のこわばり)/急がない。待てるなら待つ/2人で |
| 認知症で理解が難しい | 声かけが通じず、本人が協力できません | 短い言葉で、1つずつ/言葉より動作を見せる/機嫌のよい時間に移す/急がない。急ぐと必ず抵抗されます |
| 痛みがある | かばって崩れます。本人も力を出せません | 痛みの評価を看護師へ/痛み止めのタイミングと移乗の時間を合わせられないか相談/痛い側を下にしない |
「この方は、この方法では無理です」と言ってください。
それは、できない職員の言葉ではなく、状況を正しく見ている職員の言葉です。
Đây không phải là thiếu kỹ năng. Đây là dấu hiệu cần đổi phương pháp, dụng cụ hoặc số người.
「2人でやる」の基準を、施設で決める
こんなときは2人以上
□ 立位が保てない □ 体重が重い □ 拘縮が強い □ 麻痺が強い
□ 痛みがある □ 意思疎通が難しく、急に動く □ 床から起こす
□ 職員が「ひとりでは不安」と感じたとき
| 決めておくこと | |
|---|---|
| 呼び方 | 「手伝ってください」と言えることを、施設のルールにする/呼ばれた側は手を止めて行く/断らない。あとで戻ればいい |
| 呼べないとき | 無理にやらない。待てるなら待つ/「呼べなかった」ことを記録に残す(人員配置の根拠になります) |
「ひとりでは不安」は、立派な理由です。
体格差、その日の体調、本人の機嫌。同じ方でも、日によって変わります。
「不安だから2人で」と言える職場が、事故の少ない職場です。
「いつもは大丈夫」がいちばん危ない
同じ方でも、朝と夕方、薬の前と後、体調の良い日と悪い日で、立てるかどうかは変わります。
移乗の前に、その日の様子を一度見てください。「今日は、いつもと違うな」と思ったら、それが正しい感覚です。 その日は2人でやってください。
立位が急に崩れる方への、記録のしかた
- いつ崩れるかを記録する(朝/夕方/食前/薬のあと)
- 薬の影響がないか看護師と確認
- 前ぶれ(返事が遅い・顔色・ふらつき)を見る
- 崩れることが分かっている方は、最初から2人かリフト
ベッドと車いすの間だけではありません
| 場面 | 今日できる対策 |
|---|---|
| 車いす ⇄ トイレ・便座 | 狭いところほど、事前に置き方を決めておく/手すりの位置(座ったまま手が届くか)/便座の高さ/ズボンは生地だけを持つ(皮ふを引っぱらない)/2人で入れる広さがあるか |
| 車いす ⇄ 浴室・シャワーチェア | 床の水をその場で拭く/職員の足元も滑ります/移乗ボードは濡れると滑りが変わります/素肌は滑りにくい。タオルを1枚はさむ/目を離さない |
| 車いす ⇄ 送迎車 | ドア枠に手を添える/車両の車輪止め・サイドブレーキ/リフトは手足の位置を確認してから動かす/天候(雨で滑る)/送迎担当と方法を共有する |
| ベッド ⇄ ストレッチャー | 必ず高さを合わせる/両方のキャスターを固定/スライディングシート・ボードを使う/2人以上で、合図をそろえて/移ったらすぐ柵を上げる |
| 床からの起こし | 骨折がないと確認できてから/2人以上で/横向き→四つばい→ひざ立ち→片ひざ→座ると段階を踏む/本人の力を使う/座ったら数分そのまま |
工夫でなんとかしない
工夫でなんとかしようとするほど、事故と腰痛が増えます。
方法・用具・人数を変えるのが、正しい対応です。
言い出しにくいときは、記録を根拠にしてください。 「この方の移乗で、今月3回崩れています。用具か人数を検討したいです」。 数字があると、話が個人の技術の話になりません。
まとめ
- 形どおりにいかないのは技術不足ではない
- 体が大きい方は最初から2人を前提にする
- 急に力が抜ける方は立たせようとしない
- 嫌がる方に無理に続けない。虐待になりえます
- 「ひとりでは不安」は立派な理由
- 「呼べなかった」ことも記録する
- 「いつもと違うな」と思ったら、その日は2人で
あわせて読む
根拠にした資料
個人の経験ではなく、公表されている資料をもとに整理しています。
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日 基発0618第1号)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 厚生労働省 労働者災害補償保険(労災保険)制度に関する一般向け案内
- 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 介護作業の腰痛予防に関する資料
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。
施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。
手順・寸法・時間は、すべて目安と一例です。
判断に迷うこと、いつもと違うと感じたことは、看護師・医師にご相談ください。
実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。