ベッド柵を増やすと、けがは重くなる
柵を1本足すと、少し安心します。
2本足すと、もっと安心します。
けれど、けがは重くなります。
柵を増やすと、端に座って降りることができなくなり、乗り越えるしかなくなります。 乗り越えれば、落ちる高さは「ベッドの高さ+柵の高さ」。手より先に、頭が落ちます。
もくじ
柵を増やすと、なぜ重くなるのか
転倒と転落は、別のものです。転倒は同じ高さで転ぶこと、転落は高いところから低いところへ落ちること。 落ちる高さがあるぶん、けがは重くなります。
そして、柵を増やすほど、落ちる高さは上がります。ここが、この記事のいちばん大事なところです。
柵は「降りられなくする物」ではなく、「つかまる物」です。
降りたい理由がある方は、柵があっても降りようとします。
「囲えば降りない」は、成り立ちません
降りたい理由がある方は、柵があっても降りようとします。 トイレに行きたい、のどが渇いた、人を探している、痛い、帰りたい。理由はさまざまです。
そこに柵を増やすと、「端に座って、足を下ろして降りる」という安全な降り方が、できなくなります。 残るのは、乗り越えるという降り方だけです。
端座位から降りられない → 乗り越える → 落ちる高さが上がる → 頭から落ちる。
さらに、囲うこと自体が身体拘束にあたる場合があります。
柵は1〜2本、つかまるために置く → 端に座って降りられる → 落ちる高さはベッドの高さのまま。
床にマットを敷けば、さらに軽くできます。
4本にして囲う・ベルトで固定する・つなぎ服を着せる・ベッドを壁につけて片側をふさぐ。
どれも身体拘束にあたる可能性があり、そのうえけがは重くなります。
くわしくは 4点柵は身体拘束にあたるのか をご覧ください。
では、柵は低いほうがいいのか
そうとも限りません。中途半端に低い柵は、寝返りのはずみで乗り越えてしまうことがあります。
また、厚いマットレスやエアマットに替えると、柵は相対的に低くなります。 マットレスを替えたときは、柵も見直してください。
本数を減らすことと、1本1本を適切な高さのものにすることは、別の話です。 高さの目安はメーカーが示しています。取扱説明書か販売店にご確認ください。
柵のかわりに、今日できること
| やること | ねらい |
|---|---|
| ベッドを低くする | 落ちる高さそのものを下げます。いちばん確実で、拘束になりません |
| 床に衝撃吸収マットを敷く | 落ちたときの衝撃を減らします(→ 低床ベッドと衝撃吸収マット) |
| 柵は1〜2本、つかまるために | 端に座って降りられる形を残します |
| 離床センサーで早く気づく | 防ぐ道具ではなく、見つける道具です |
| なぜ降りようとするのかを解決する | いちばんよく効きます(→ なぜ降りようとしたのか) |
落ちることを完全には防げなくても、けがを軽くすることはできます。 転落の対策は、他の事故より決めやすいものです。高さと床材という、数字と物で変えられるからです。
ご家族から「柵を増やしてほしい」と言われたら
お気持ちはもっともです。頭ごなしに断らず、理由を添えてお伝えください。
そのまま言える言い方(一例)
「柵を増やすと、乗り越えて落ちたときに、かえってけがが重くなります。
また、囲うことは身体拘束にあたる場合があり、原則として行えません。
そのかわりに、ベッドを低くして、床にマットを敷きます。
落ちることを完全には防げませんが、けがを軽くすることはできます。」
このやりとりは、必ず記録に残してください。 説明したこと、ご家族の反応、決めたこと。あとから「聞いていない」となるのを防ぎます。
夜勤で柵を増やしたくなるのは、当然です
ひとりで何十人も見ていれば、囲ってしまいたくなります。それは職員が悪いのではありません。
だからこそ、ベッドを低くして、床にマットを敷く。これなら拘束にならず、けがも軽くできます。 そのうえで、「夜勤の人数では見きれない」ということを、カンファレンスで言葉にしてください。 それは個人の努力の話ではなく、体制の話です。
まとめ
- 柵を増やすと、端座位から降りられなくなり、乗り越えるしかなくなる
- 乗り越えると、落ちる高さは「ベッドの高さ+柵の高さ」になる
- 柵は止める物ではなく、つかまる物
- ただし低すぎる柵も危険。マットレスを替えたら柵も見直す
- かわりに、ベッドを低く・床にマット・理由の解決
- ご家族への説明と、そのやりとりの記録を残す
ここに書いたのは考え方です。実際に何本にするか、どの柵を使うかは、その方の状態・ベッドの機種・施設の方針で変わります。 大事なのは、「なぜこの本数なのか」をチームで説明できることと、それを記録に残していることです。
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」および身体拘束にあたる具体的な行為(11項目)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 消費者庁・独立行政法人国民生活センター 高齢者のベッドまわりの事故に関する注意喚起
- 日本工業規格(JIS)在宅用電動介護用ベッドおよびサイドレールのすき間に関する安全基準
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。