「なぜ降りようとしたのか」から考える転落対策
柵を増やしても、ベッドを下げても、降りたい理由があるかぎり、降りようとします。
だったら、理由のほうを先に満たす。 トイレに行きたかった。のどが渇いた。人を探していた。痛かった。帰りたかった。暑かった。 ただ寝返りを打ちたかっただけかもしれません。
柵で止めるより、ずっとよく効きます。そして、その方の尊厳も守れます。
いちばん効くのは、これです
「なぜ、降りようとしたのか」
その理由を先に満たせば、危ない時間に降りる必要がなくなります。
転落の対策は、ふつう用具と設定から入ります。ベッドを下げる、マットを敷く。それは正しい順番です。 今日すぐできて、効果が確かだからです。
そのうえで、くり返す方には、この問いが効きます。 ベッドを下げてもマットを敷いても、月に何度も降りようとするなら、降りたい理由が満たされていないということです。
理由と、先にできること
| 降りようとする理由 | 先にできること(一例) |
|---|---|
| トイレ | 排泄のパターンを記録して、その前に誘導する/ポータブルトイレを降りやすい側に置く |
| のどが渇いた | 手の届く場所に水分を置く(とろみが必要な方は、とろみをつけた水分で) |
| 不安・人を探している | 訪室の回数を増やす/日中に会話の時間をつくる/照明を少し残す |
| 痛い・かゆい | 痛みの評価を看護師へ/体位を変える/保湿 |
| 暑い・寒い | 室温・寝具の枚数を見直す |
| 昼夜が逆転している | 日中の離床時間を増やす/朝に日光を浴びる/日中に寝かせすぎない |
| 退屈・寝られない | 日中の活動量を見直す/就寝時刻が早すぎないか |
就寝時刻が早すぎないかは、見落とされがちです。 夕食後すぐに臥床すると、夜中に目が覚めます。そこから何時間もベッドで過ごすことになれば、降りようとして当然です。
夜間に効く、具体的なこと
| 起きやすいこと | 今日できる対策(一例) |
|---|---|
| 暗くてベッドの端が見えない | 足元灯・センサーライト(消灯後も足元だけ明るく)/ベッド周りの物を減らす |
| トイレに行こうとして降りる | 就寝前にトイレを済ませる声かけ/利尿薬の内服時刻を看護師と確認(夕方だと夜間が増えます)/ポータブルトイレを降りやすい側に |
| ナースコールを押さない | 押せるかを確かめる(手が届く/押し方が分かる/押しても来ないと思っていないか)/柵に固定する/「押していいんですよ」と何度でも伝える |
| 気づくのが遅れる | 離床センサーの位置と反応を毎晩確認/訪室の時刻を記録に残す/ベッドを夜間だけ低くする |
| 睡眠薬でふらつく | 内服時刻とふらつきを看護師と確認/効いている時間帯にこそ、訪室を厚くする |
「ナースコールを押さない」には、3つの別々の理由があります。 手が届かない/押し方が分からない/押しても来ないと思っている。 3つめのときは、道具では解決しません。「押していいんですよ」と何度でも伝えるほうが効きます。
カンファレンスでの出しかた
同じ方に転落が集中したら、個別のケース会議へ。そこで「なぜ降りようとするのか」を全員で出します。
- 担当が誰だったかは話さない。理由の候補を出すことだけに使う
- 夜勤の職員に必ず聞く。「その時間、何人を見ていましたか」も聞く
- 候補が複数出るのがふつう。1つに決めない
- そのうえで、変えることは1つだけ決める。全部やろうとすると、何も変わりません
- 「誰が」「いつまでに」「何を」まで決める
夜勤の職員に「その時間、何人を見ていましたか」と聞くのは、責めるためではありません。 人数の問題を、個人の注意不足にしないためです。
Vào giờ đó, một mình bạn phải trông mấy người ạ?再発防止に書いてはいけない言葉
「見守りを強化する」「注意して訪室する」
→ 実行できません。確かめようがありません。
「柵を4本にする」「ベルトの使用を検討する」
→ けがを重くします。
「ベッドを最低位に固定する(担当〇〇、8/26)」
「床に衝撃吸収マットを敷く(8/26)」
「介助後にベッドを下げるを声出し確認にする」
「2時・4時の訪室を追加する」
「利尿薬を朝に変更できるか医師に相談する」
くわしくは 転倒対策に「見守りを強化する」と書いてはいけない理由 もあわせてどうぞ。
まとめ
- まず用具と設定(高さ・マット)。それでもくり返すなら、理由を見る
- トイレ/のどの渇き/不安/痛み/室温/昼夜逆転/就寝時刻
- ナースコールを押さない理由は3つ。「押しても来ないと思っている」を忘れない
- 利尿薬・睡眠薬の時刻は、看護師と確認できる
- 候補は複数あってよい。変えることは1つだけ決める
- 再発防止に「見守りを強化する」と書かない
薬の内容や時刻の変更は、医師・看護師の判断が必要です。現場で変えることはできません。 気づいたことを伝えるところまでが、介護職の役割になります。
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」および身体拘束にあたる具体的な行為(11項目)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 消費者庁・独立行政法人国民生活センター 高齢者のベッドまわりの事故に関する注意喚起
- 日本工業規格(JIS)在宅用電動介護用ベッドおよびサイドレールのすき間に関する安全基準
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。