入浴の中止基準を、施設で決める
入浴を止めるなら、脱ぐ前です。脱いでからでは、止めにくくなります。
そして、「たぶん大丈夫」で入れないこと。 介護職が最終判断をするものではありません。迷ったら、看護師に判断してもらってください。
止めるなら、廊下・居室で
脱ぐ前にバイタルを測る。
脱いでからでは、止めにくくなります。
- 脱ぐ前にバイタルを測る
- 中止基準と照らす
- 顔色・食欲・いつもと違うところを見る
- 本人に「今日はどうですか」と聞く
- 迷ったら看護師に判断してもらう
- 中止したら清拭に切り替え、理由を記録
中止基準の表(施設で数値を決めて記入します)
| 項目 | 中止する数値(施設で決める) |
|---|---|
| 体温 | ℃ 以上 |
| 収縮期血圧(上) | 以上 / 以下 |
| 拡張期血圧(下) | 以上 |
| 脈拍 | 以上 / 以下 |
| 酸素飽和度(SpO2) | % 以下 |
| そのほか | 意識がいつもと違う/食欲がない/吐いた/息が苦しそう/強い痛み/皮ふの異常 |
| 本人の訴え | 「気分が悪い」「今日はやめたい」→ 尊重する |
数値は施設で決めてください。ここに数字を書いていないのは、その方の状態によって違うからです。 ふだんの血圧が高い方に一律の基準を当てはめると、毎日中止になってしまいます。
個別の基準がある方は、記録の表紙に書いておいてください。
迷ったときの原則
- 介護職が最終判断をするものではありません
- 「たぶん大丈夫」で入れない
- 中止した理由を必ず記録
- 中止したら清拭に切り替え、そのことも記録
- 中止して何もなかったなら、それでよいのです
「中止して何もなかった」は、失敗ではありません。 基準が働いた、ということです。そこを責める職場だと、次から「たぶん大丈夫」が増えます。
時間帯も、基準のうちです
- 食後1時間はあける
- 降圧薬・睡眠薬の内服直後を避ける
- 冬はいちばん寒い時間帯を避ける(早朝・夜)
- 排泄を済ませてから
記録に、この5つを必ず入れる
□ 入浴前のバイタル □ 入浴後のバイタル □ 湯温 □ 浴槽に入っていた時間 □ 皮ふの所見
これがそろうと、「この方は入浴後に血圧が20下がる」といった、その人のパターンが見えます。 パターンが分かれば、個別の中止基準と個別の入り方が作れます。
「入浴介助。特変なし。全身清潔保持。」
→ バイタルも湯温も時間もありません。中止基準が妥当かどうか、永久に検証できません。
「特変なし」は、何も見ていないのと同じです。
「14:00 入浴前 BP142/80、脈76、体温36.4、SpO2 97%。湯温40.5℃。14:18〜14:26 浴槽(8分、みぞおちまで)。右下腿前面に3×2cmの青色内出血あり(新規)。14:40 入浴後 BP118/68、脈84。立位でふらつきあり、5分座位で休息し軽快。14:50 看護師〇〇へ報告。次回は浴槽5分・出浴後10分座位とする。」
中止したときも、必ず記録してください。
「体温37.8℃のため入浴中止、清拭に変更」。
中止の記録がないと、中止基準が機能しているか分かりません。
そして「なぜ入れなかったのか」をご家族に説明できません。
数えて、基準を見直す
月1回、中止した数と事故の数を、両方見てください。片方だけでは基準は決まりません。
| こうなっていたら | 考えること(一例) |
|---|---|
| 中止が多すぎる | 基準が一律すぎるかもしれません。個別基準を作る方を洗い出す |
| 中止がほとんどない | 測っていない/「たぶん大丈夫」で入れていないか |
| 入浴後のふらつきが多い | 湯温・浴槽の時間・出たあとの休息時間を見直す |
| 同じ方に集中 | その方の個別基準と、個別の入り方を作る |
| 冬に集中 | 脱衣所・浴室の温度。暖房を入れる時刻を決める |
集計表は 様式のダウンロード から印刷して使えます。
ご家族への報告
| いつ | 何を |
|---|---|
| すぐ報告 | 沈んだ/倒れた/やけど/受診した/救急搬送した |
| その日のうち | のぼせた/転倒した/入浴中に体調が悪くなった/入浴を中止した |
| 定期的に | 入浴を嫌がる日が続く/入浴後のふらつきが増えた/皮ふの状態 |
| 誰が | 管理者または看護師。介助していた職員ひとりに説明させない |
まとめ
- 脱ぐ前に測る。止めるなら廊下・居室で
- 数値は施設で決める。一律だと毎日中止になる方がいる
- 個別基準は記録の表紙に書く
- 「たぶん大丈夫」で入れない。迷ったら看護師へ
- 中止したことも必ず記録する
- 記録は前後のバイタル・湯温・時間・皮ふの5つ
- 中止の数と事故の数を、両方見て基準を見直す
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 消費者庁・独立行政法人国民生活センター 高齢者の入浴中の事故(溺水・熱中症様症状)に関する注意喚起
- 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」(平成17年7月26日 医政発第0726005号)
- 日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン 一次救命処置・AEDの使用
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。