飲ませ忘れも誤薬です — 報告しないと何が起きるか
「飲ませ忘れ」は、誤薬の6つのパターンのひとつです。まちがえて飲ませたのと同じ重さで扱ってください。
飲ませなかったことを言わないでいると、次の人が「飲んだ」と思って記録します。 あとで血圧や血糖の数値がおかしくなったとき、誰にも原因が分かりません。
もくじ
誤薬には6つのパターンがあります
| パターン | よくある原因 | 危険度 |
|---|---|---|
| ① 他の人の薬を飲ませた | 似た名前/同姓/席が近い/トレイの並び | 最も危険。何を飲んだか分かりにくい |
| ② 時間をまちがえた | 食前・食後・食間の取りちがえ | 薬による。血糖の薬は危険 |
| ③ 量をまちがえた | 包を1つ余分に/半錠の指示を見落とし | 薬による |
| ④ 飲ませ忘れた | 寝ていた/拒否された/あとで、と思った | 薬による。忘れも誤薬です |
| ⑤ 中止の薬を飲ませた | 変更の伝達もれ/古い一包化が残っていた | 危険 |
| ⑥ 2回飲ませた(重複) | 記録を見ずに配った/申し送りもれ | 危険 |
言わないと、何が起きるか
次の人が「飲んだ」と思って記録します。
数値がおかしくなったとき、原因が誰にも分からなくなります。
血圧の薬を1回抜けば、血圧は上がります。糖尿病の薬を1回抜けば、血糖は上がります。 そこで医師が「効いていない」と判断すれば、薬が増えることさえあります。
飲ませ忘れを報告することは、その方の治療を守ることです。職員を守る話でもありますが、それ以前に、その方のための話です。
飲ませられなかったときの、場面べつの対応
| 場面 | やること |
|---|---|
| 寝ていた | 起こしてまで飲ませない(誤嚥の危険)。記録して看護師の指示を仰ぐ |
| 拒否された | 無理に入れない(誤嚥・虐待になります)。時間をおいて再度/飲まなかったことを必ず記録・報告/くり返すなら剤形の変更を医師に相談 |
| 「あとで」と思って忘れた | 気づいた時点ですぐ報告。自分で飲ませ直さない |
| 受診・入浴と重なった | 戻ってから飲ませてよいかは看護師の判断。時間の指示がある薬があります |
| 飲んだか分からない | 「分からない」と報告する。「たぶん飲んだ」と書かない |
飲まなかった分をどうするかの判断は、介護職はできません。 あとで足す、次にまとめて飲ませる、半分だけ飲ませる。どれも医療の判断です。 報告して、指示を受けてください。
残薬を数えると、記録のうそが分かります
記録では「飲んだ」ことになっているのに、薬が余っている。逆に、記録より薬が減っている。
これは責める材料ではなく、仕組みの問題を見つける材料です。月1回、必ず数えてください。
- 週に1回、残っている数を数える
- 数が合わなければすぐ報告(飲ませ忘れか、誤薬のサインです)
- 期限切れ・中止薬は施設のルールで処分(勝手に捨てない)
- 残薬の数は、いちばん正直な記録です
飲ませ忘れを減らす、仕組みのほう
| 起きやすい場面 | 仕組みで変えること(一例) |
|---|---|
| 寝ていて後回しにした | 後回しにした人を記録に残す欄を作る。次の勤務者が引き継げます |
| 拒否がくり返される | 剤形の変更を医師・薬剤師に相談(OD錠・散剤・液体・貼り薬など) |
| 薬の数が多い | 薬剤師に「減らせないか」を相談する。誤薬対策でいちばん効くのは、そもそも薬を減らすことです |
| 忙しい時間に重なる | 配薬の時間をずらせないか。朝の業務の順番を見直す |
| 引き継ぎで落ちる | ホワイトボードに「未投与」を書く運用にする(口頭だけにしない) |
薬剤師に相談できます。 一包化の印字を大きくする、時間帯を色分けする、飲みにくい薬を別の形に変える、飲む回数を減らせないか医師に提案する。 施設に来る薬剤師に、遠慮なく相談してください。
ヒヤリハットとしても出してください
「危うく飲ませ忘れるところだった」「配る直前に、未投与のままなのに気づいた」。 これは事故ではなくヒヤリハットです。3行でかまいません。
「8/25 20:10 〇〇様の夕食後薬が未投与のまま残っているのを、消灯前の確認で見つけた。夕食時に入浴が重なっていた。」
こうした報告が30件たまると、入浴と配薬の時間が重なっていることが分かります。1件では分かりません。 書き方は ヒヤリハットは3行でいい をご覧ください。
まとめ
- 飲ませ忘れも誤薬。結果に関係なく報告する
- 言わないと、次の人が「飲んだ」と記録する
- 寝ていたら起こさない。拒否は無理に入れない。どちらも報告する
- 飲まなかった分をどうするかは、介護職が決めない
- 残薬はいちばん正直な記録。月1回数える
- 薬の数そのものを減らせないか、薬剤師に相談できる
あわせて読む
根拠にした資料
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
- 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」(平成17年7月26日 医政発第0726005号)
- 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
- 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業(薬剤に関する報告書・再発防止に向けた提言)
- 日本病院薬剤師会・日本薬剤師会 の一般向け資材(一包化・簡易懸濁法・粉砕の可否に関するもの)
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。