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内出血・あざ

ご家族へのあざの説明 — 何を、いつ、誰が伝えるか

あざを見つけた。記録もした。
残っているのは、ご家族への電話です。

ここでいちばん多いのは、沈黙を埋めようとして推測を口にしてしまうことです。 「たぶんぶつけたのだと思います」——これが、あとで食いちがいます。

先に説明しておいて、あとで報告する。この順番と、そのまま読める言い方をまとめました。

最終更新:2026年8月 / 高齢者支援実務研究所

もくじ

  1. 説明が遅れるほど、話は難しくなります
  2. 入所のときに、先に伝えておく
  3. 見つけたその日に、何を伝えるか
  4. 「分かりません」を、どう伝えるか
  5. 面会・外泊の前後に、全身を見ておく
  6. 報告したことを、記録に残す
  7. まとめ

説明が遅れるほど、話は難しくなります

あざそのものより、「なぜ今まで言わなかったのか」のほうが、大きな問題になることがあります。

ご家族から見ると、面会で初めてあざに気づいたとき、 「知らされていなかった」という事実が先に立ちます。 そのあとで「実は記録していました」と言っても、隠していたように聞こえてしまいます。

あざが出てから説明すると、どんなに正しくても言い訳に聞こえます。

だから、順番を変えます。先に説明しておいて、あとで報告する。これだけで、受け取られ方が変わります。

この記事は、次の3つの場面に分けて整理しています。

入所のとき(あざが出る前に、先に) ② 見つけたその日(何を、誰が、どう言うか) ③ そのあと(記録に残す)

入所のときに、先に伝えておく

重要事項説明のときに、あざの話を1項目として入れておくのが、いちばん確実です。 以下は説明の一例です。施設の言い回しに合わせてお使いください。

説明の例(そのまま読めます)

「ご高齢になりますと、皮ふと血管を支える組織が弱くなり、 強くぶつけていなくても内出血ができることがあります。とくに前うでや手の甲によく見られます。 血液をさらさらにするお薬などによっても、できやすくなることがあります。

私たちは、見つけたあざをすべて記録し、場所を図に残し、ご報告いたします。 原因が分かるものは対策をとります。原因が分からないものは、『分かりません』とそのままお伝えします。 隠すことはいたしません。

記録のためにお写真を撮らせていただく同意も、あわせてお願いしております。」

入所時に取っておくもの理由
あざが出うることの説明あとで報告したときに、「聞いていた話」になります
写真撮影の同意(書面)その場で初めて頼むと、身がまえさせてしまいます
連絡先と、連絡してよい時間帯その日のうちに連絡するために必要です
連絡する相手の順番キーパーソンが不在のときに迷わないように

写真は、施設の機器だけで撮ってください。 個人のスマートフォンで撮らない、個人の端末に残さない、SNSには絶対に載せない。 撮るときは定規かメジャーを一緒に、全体が分かる1枚と近くの1枚を、日付が入る設定で。

見つけたその日に、何を伝えるか

「いつ・誰が・何を・どう言うか」を、あらかじめ決めておいてください。 その場で考えると、必ず抜けます。

目安
いつ その日のうちに。翌日以降になるほど不信につながります。 連絡がつかない場合も、連絡を試みた時刻を記録します
誰が 原則リーダー以上発見者ひとりに背負わせないのが原則です
何を 場所・大きさ・色・いつ見つけたか・行った対応・今後の観察予定。この6つ
言い方 「ご心配をおかけします」は言ってかまいません。 賠償・責任の話は、管理者が行います
記録 報告した時刻・相手・伝えた内容・相手の反応を残します

電話で伝えるときの、型

順番を決めておくと、落ち着いて話せます。①名乗る → ②結論 → ③事実 → ④対応 → ⑤これから → ⑥受診の意向

そのまま読める例(一例です)

「◯◯様、いつもお世話になっております。△△の□□でございます。
本日、お母さまの右のすねに内出血があるのを見つけましたので、ご報告のお電話です。
本日14時20分、入浴の介助中に見つけました。右のすねの前側に、およそ3センチ×2センチ、青むらさき色です。 触れると『痛い』とおっしゃいましたが、腫れや熱はなく、動きにくそうな様子もございません。 ご本人にお尋ねしましたが、『わからない』とのことでした。
できた場面を職員が見ておりませんので、現時点では原因が分かっておりません。 看護師にも確認してもらい、当たりそうな箇所として車いすの足乗せにカバーを付けました。
明日と3日後に、もう一度確認いたします。広がるようでしたら、あらためてご連絡いたします。
受診をご希望でしたら、こちらで手配いたしますが、いかがいたしましょうか。」

「たぶん車いすにぶつけたのだと思います」とは言わないでください。
見ていないことを断定すると、あとで別の原因が分かったときに、説明が食いちがいます。 「原因は分かっておりません」と、「当たりそうな箇所に対策をしました」は、両立します。

「分かりません」を、どう伝えるか

ここでいちばん多い失敗が、沈黙を埋めようとして推測を口にすることです。

✕ 言わないほうがよい言い方

「たぶん、ご自分でぶつけられたのだと思います」
「よくあることですので、ご心配なさらず」
「認知症の方はよくあるんです」

いずれも推測か、心配を軽く扱う言い方に聞こえます。

〇 そのまま言ってよい言い方

現時点では、原因が分かっておりません。
「職員がその場面を見ておりませんので、断定はいたしかねます。」
分かりましたら、すぐにご連絡いたします。

分からないと言うことは、いい加減ではなく、正確です。

あわせて伝えると、伝わり方が変わる一言があります。
これから、同じ場所にできていないかを、続けて確認いたします。
ご家族が知りたいのは、原因そのものより「このあと、どうしてくれるのか」であることが多いためです。

ここから先は、管理者に渡す

こう聞かれたら対応
「誰がやったんですか」職員名を出さない。「経緯を確認しております」と伝え、管理者へ
「治療費はどうなりますか」賠償の話は管理者。その場で答えない
「虐待じゃないんですか」否定も肯定もせず、管理者と、必要に応じて市町村の窓口へ関連記事
「もう連れて帰ります」引き止めず、管理者へ。その場のやりとりを記録する

発見者が背負わないでください。 見つけて報告した職員は、いちばん正しいことをした人です。 その人がご家族の矢面に立つ形にしてしまうと、次から報告が上がらなくなります。

面会・外泊の前後に、全身を見ておく

これは、ご家族を疑うためではありません。どちらで起きたことかを、あとで切り分けられるようにするためです。

いつやること
外泊・面会の全身を確認して記録(ボディマップに●)
外泊・面会のあと同じように確認して記録。差分だけを見る
入所のときこの確認を行うことと、その理由を、あらかじめ説明しておく

説明の一例 「外出・外泊の前後に、皮ふの状態を確認して記録しております。 これは、どこで起きたことかを正確に残すためのもので、ご家族を確認するものではございません。 施設でお預かりしている間のことは、施設が責任をもってご説明するための記録です。」

報告したことを、記録に残す

あざの記録と、ご家族への報告の記録は別物です。両方が必要です。

項目書き方の例
日時8/25 16:10
誰が、誰にユニットリーダー◯◯より、長女△△様(携帯)へ
伝えた内容部位・大きさ・色・発見時刻・対応(フットサポートにカバー設置)・再確認の予定(8/26、8/28)
原因について「発生場面は目撃しておらず、原因は特定できていない」旨を伝達
相手の反応「わかりました。また様子を教えてください」との返答
受診の意向「今回は様子を見てほしい」とのこと

この記録が、あとで施設を守ります。 「いつ、誰が、何を伝え、ご家族が何とおっしゃったか」。 ここまで残っていれば、後日どんな経過になっても、説明のしかたが一貫します。

まとめ

ここに書いた言い回しは一例です。施設の方針、ご家族との関係、これまでの経緯によって、 ふさわしい伝え方は変わります。実際の対応は、所属施設の規程と、管理者の判断に従ってください。

この方は、どこに気をつける?

利用者さんの状態を選ぶと、注意する部位が体の図で出ます。印刷して、ご家族への説明資料にも使えます。

あざのリスクを調べる → 様式をダウンロード

根拠にした資料

個人の経験ではなく、公表されている資料をもとに整理しています。
  • 厚生労働省「介護保険施設等における事故の発生又はその再発を防止するための指針」に関する基準・通知
  • 厚生労働省「介護保険施設等における事故報告様式の統一化について」(令和3年3月19日 老高発0319第1号ほか)
  • 「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(高齢者虐待防止法)
  • 個人情報の保護に関する法律/厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」
この記事について 一般的な情報提供を目的としています。医療・介護の判断を代替するものではありません。 施設によって、利用者さんによって、正しいやり方は変わります。ここに書いたことが、そのまま当てはまるとは限りません。 手順・寸法・時間は、すべて目安一例です。 皮ふの異常、押しても消えない赤み、急に広がるあざ、痛みを伴うものは、看護師・医師にご相談ください。 実際の対応は、所属施設の規程および、医師・看護師の指示に従ってください。制度・基準は改正されることがあります。
ベトナム語 参考訳です。母語話者による確認は受けていません。誤りにお気づきの方はご連絡ください。